第1607話 愛しきマドゥラン
「……ライニエス……?」
階段を下りると、鐘楼門(と言ったっけか?)の前にコスプレ感のある巫女服を着た老婆がいた。
巫女にロマンを感じる性癖はねーが、世界観を大事にしろや! つーか、ぜってー転生者が関わっているよな! 趣味全開で変な文化広めんなや!
「マシャル、久しぶりですね。なにも告げずに来てしまってごめんなさいね」
「べー様が悪いんですよ」
小声で責めないで。外に村があり、先生のねーちゃんを崇めるヤツらがいるって知らなかったんだからさ。
「いったいどうなされなのですか?」
「説明しますので、主だった者を集めてください」
じゃあ、説明はおばちゃんに任せてオレは村でも見て──。
「──もちろん、べー様もですよ!」
村を見にいこうとしたらレイコさんに首根っこをつかまれた。そんな~!
巫女ばーさんに案内されたところは、敷地内にある集会所的なところで、主だった者が集まるまでお茶をいただいた。
「変わったお茶だな?」
なんとなく土臭い感じがする。木の根を煎じたものかな?
「芋の茎を炒めて煎じたものです」
オレの呟きに巫女ばーさんが聞きつけて教えてくれた。耳がよろしいことで。
「この村は貧しいのかい?」
「他の村に比べたらマシでございます。ゼルフィング伯爵よりお布施をいただいてますので」
「随分と入れ込んでんだな?」
万が一の脱出路であり、その先のカモフラージュ的な村だろう? ここまでする必要──。
「マドゥってのがこの村に住んでいたのか」
それが誰かはわからんが、先生のねーちゃんが思い続ける理由があるとすれば、そのマドゥってのがこの村に絡んでんだろうよ。
「この村は、マドゥラン村よ」
「……そうか。なるほどね……」
すべては想像でしかねーが、先生のねーちゃんとマドゥランってのは恋仲だったんだろう。そして、今はいないというなら死んだということであり、短命な人であったってことだ。
オレの妄想を巫女ばーさんに伝える気はねーので、芋の茎を煎じたお茶を飲んで誤魔化した。
やがて主だった者が集まり出した。
集まった者は十数人。大体は老人だが、若いのも三人混ざっていた。
「おばちゃん。説明は任せる」
これは丸投げではなく、この村の事情を知らねーオレが言ったんじゃ納得できねーだろうし、不都合なことも言ってしまうかもしんねー。なら、任せたほうがいいはずだ。
「わかった」
空飛ぶ結界椅子を移動させて、皆の前に立たせた。いや、座ってるけど。
「まず、先に言っておきます。ゼルフィング伯爵家は十二女の妹、マルセラの長子、ザンバリットが継ぐことになりました。この子は、ザンバリットの子です」
義理とは言わないんだ。
「マドゥラン村にはこれからもお社を守る村として存続していってもらいます」
まずは重要で、村が残ることを確約させた。さすがゼルフィング伯爵家を守ってきたおばちゃんだ。
主だった者が飲み込んでから、今回のことの説明に入った。以下省略です。
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