第1514話 冷やしんすい

「べー様!」


 広場に降りると、地竜に駐在しているカイナーズのヤツらが集まってきた。君ら、よくこの揺れるところにいられるね?


「ご苦労さん。不自由してねーかい?」


 丸投げした身としては駐在している方々には申し訳ねーと言う思いがある。まあ、だからと言って立ち去れとも言えねーがな。


「はい。補給は万全ですので」


 まあ、補給無限のカイナだからな。その辺は万全か。


「シューさんは?」


「こちらです」


 蒼魔族と思われるヤツの先導でシューさんのところへと向かった。


 この数ヶ月ですっかり補修され、どこかの寺院みたくなっている。観光地にしたら客が来そうだな。


 奇形岩があるドームに来ると、黄金色に輝く竜人がいた。


「リューさん、久しぶり。元気にしてた?」


 黄金色で顔色とかわかんねーけど。


「元気だ。ヴィベルファクフィニー」


「そんで、地竜はどこに向かっているんだ?」


「わからない。アリュアーナはなにかを欲して動いている」


「シューさん、地竜の意思を司るとか言ってなかったっけ?」


 思い出が濃すぎて細かいことまで思い出せんけどよ。


「それ以上にアリュアーナの思いが強いのだ」


 ハァー。シューさんもわからんのならお手上げじゃねーか。それでオレにどうしろってんだよ。


「地竜を止めることもできんのかい?」


「止めようとはしているがまったく聞き入れられない。強い思いにかき消されなだ」


「どんな思いかはわかるかい?」


「湖が見える」


「湖?」


 って、ミタさんの村の近くにある湖のことか?


「喉が渇いたから水でも飲みにいこうとしてんのか? てか、地竜って水飲むのか?」


 生き物なら水を飲んでも不思議じゃねーが、木から水分を摂ってんじゃねーのか?


「わからない」


 知らんのかい! あなたなんのためにいんのよ!?


「レイコさん、どうなんだ?」


「わたしも聞いたことありません。そもそも魔大陸は湖が少ないですから。あの湖も人工的に造られたものだと思いますよ」


「そうなの?」


 と、ミタさんを見る。


「あ、いえ、わかりません。昔からそこにありましたから」


「どいつもこいつもわからんのかい! ちゃんと歴史を残して来い!」


 生きるのに必死だったのはわかるが、そのわからないことをこちらに向けられる身にもなれってんだ。


「因果応報、ってヤツじゃないですか」


 異世界の幽霊が因果応報とか言うなや!


「ハァー。まったく、どないせいっちゅーねん」


 シューさんの前から去り、空飛ぶ結界を創り出して地竜の頭のほうへ向かった。


 地竜の頭は家が一軒どころか館が建てられそうなくらい広く、なかなか眺めがよかった。


「……べー様……」


 そんな情けない声出すなや。


「なあ、お前。どこにいこうとしてんだよ?」


「体が熱いみたい」


 はん? 誰が言った?


 ミタさんを見たらあたしじゃないと首を振り、レイコさんを見た──らオレの動きに合わせてズレやがった。自由に動けんだから動くなや!


「リンベルクよ」


 と、みっちょん。


「リンベルク? 誰よそれ?」


「べーが首根っこつかんでる見習い魔女よ」


 あ、そういや、まだつかんだままだったわ。


 ホレっと開放してやる。落ちるなよ。


「……あ、あなたは……」


「ハイハイ。怒るのはあと。体が熱いってどう言うことだ? 風邪でも引いたか?」


 委員長さんのおでこに手を当てるが平熱だぞ。


「わたしじゃないわよ! この大きな竜よ!」


「委員長さん、わかるのか?」


「あ、そう言えば、魔人族って竜に守護されし種族でした。もしかするとそれが関係しているかも知れませんよ」


 なんか後付け設定っぽいが、レイコさんの言葉を信じるなら委員長さんの言葉を蔑ろにはできんな。


「なんで体が熱いかはわかるのか?」


「わからないわ。ただ、熱い、体が熱いって念みたいなものが頭の中に入ってくるのよ」


「まあ、熱いと言うなら冷やしてみるか」


 ちょうどよくカムラ王国で大量の雪を集めた。スノボーするのはまた今度にしとこう。


 無限鞄から集めた雪を大放出。これで体を冷やしすい。


 地竜の前に雪山を築いてやった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る