第1508話 プリン
「シャアァァァッ!」
第一声がそれだった。
ホッ。よかった。タダのゴブリンだったよ。
これまでのパターンだと転生者でした~ってオチが多かったから不安だったんだよな。
シャーシャー騒ぐメスゴブリン。口の中は意外と綺麗だな。歯は獣よりだが。
手を結界で包み込み、口の中を調べた。フムフム。
「容赦ないわね」
「ねーちゃんたちはゴブリンに容赦してきたか?」
オレはねーな。ゴブリンは害獣だったからな。慈悲はなし、だ。
「お前の口の中も見せてくれ」
イケメンなゴブリンの口の中も見せてもらうが、こちらは人と同じ歯並び。口の写真だけ見せられたら人の口と言われても信じるだろうよ。
「うん。見た目は人っぽいがゴブリンはゴブリンだな」
また結界を纏わせて黙らせた。
「うん。こんなもんか」
外から調べられることはこれ以上ねーだろう。
拘束結界を変えてウェットスーツ化させる。さすがにすっぽんぽんのままにしておくのもアレだからな。
「メイドさんたちはもうイイぞ。あとはこちらでやるからよ。ねーちゃんたちは風呂でも入ってきな。お前も服着て帰ってイイぞ」
エリナが改造したゴブリンじゃなんとも比べられん。野生のゴブリンと比べたほうがイイかもな。
「そのゴブリンはどうするの? 放すの?」
「いや、ブルー島で飼うよ。あそこなら他に迷惑かからんからな」
メイドやらメイドの家族が多く住んでいるが、あそこはオレのテリトリー。なにを飼おうが文句は言わせねー。ってか、もう珍獣島になってんだから文句もねーだろう。
あ、そういや、ピータやビーダ、南大陸に放置してきたままだったな。野生に還ったか?
それならそれで構わねーけどな。あそこはヤオヨロズ国の一部にするんだし。
「見た目は人でもゴブリンを飼って大丈夫なの? 人を襲うんじゃない?」
「襲わねーよう首輪をさせておくから問題ねーさ」
つーか、うちのメイドならゴブリンくらい一捻りだろうよ。もっと酷い弱肉強食な世界で生きてきたヤツらなんだからな。
「とりあえず、今日は終わりだ。サダコも金髪さんも休んでイイぞ」
オレはメスゴブリンの記録を残したり日記つけたりしなくちゃならない。
メスゴブリンはとりあえず結界檻に入れて、部屋の隅に置いておく。ブルー島に持っていくのは明日でもイイだろう。
メイドが下がり、ねーちゃんたちが風呂にいったので、ベッドをテーブルにして書きものを始めた。
「わ、わたしも、記録、書きます」
館に戻ったと思ったらサダコがノートやら筆記具を持って戻ってきた。
「そうか。ドレミ。紅茶でも淹れてくれ」
オレの場合、コーヒーで眠気は飛んでくれねー。紅茶のほうが目が覚めるのだ。
淹れてくれた紅茶とクッキーをパクつきながら書きものしてると、キャルキュルと可愛い音がした。なんだ?
「べー様。プリンがお腹空いたみたいですよ」
「プリン?」
なんのこっちゃ?
「この子の名前です。プリンみたいな髪色じゃないですか」
なにを言ってんだこの幽霊は? いやまあ、確かに黄色みの髪に毛先が茶色いからプリンみたいだけどよ。
「プリン、可愛い名前だと思うんですが」
「まあ、可愛いは可愛いいが、ゴブリンにつける名前か?」
じゃあ、なにがちょうどイイんだと言われたら困るけどよ。
「いいじゃないですか。飼うなら名前がないと不便ですし」
「そりゃそうだが……まあ、好きにつけたらイイさ。反対する理由ものーしな」
なんかメスゴブリンの髪の毛みてたらプリンが食いたくなった。
「ドレミ。プリンあるか?」
「はい。どうぞ」
幼女型メイドになったドレミがサッとプリンを出してくれた。オレの分とサダコの分を。
「久しぶりに食うと旨いな、プリン」
オレはゼリー派だが、たまに食うプリンもイイもんだ。
「べー様。プリンにも食べ物あげてくださいよ」
「ハイハイ、わかったよ」
ゴブリンは雑食なので、テキトーに野菜を檻の中に入れてやると、飢えた獣のようにがっついた。
「ほら、プリン。そんなに急いで食べたらお腹壊すよ」
なにやら犬にエサをやってるような感じのハートフルゴースト。なんのツボに嵌まったんだよ?
なんでもイイと、書きものを続けた。
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