第1473話 トップシークレット

「べー様、お待たせしました。館の保存庫は一つ、地下の倉庫は十八ヶ所空いてるそうです」


 地下にまであるんだ。もうオレの知らないところになっちゃったな。


「そうか。手が空いてるメイドがいるなら集めてくれ。バリッサナで大量に食材を手に入れたから倉庫に運んでくれ」


 無限鞄から食材をテーブルに出した。


「あれ? なんて野菜だっけ?」


 回収してからいろいろあったから名前忘れたわ。


「そばかすさん。これらの名前教えてくれや」


 物知りなそばかすさんでもわからないものがいくつがあったが、大体は知っていた。目録作りにご協力お願いしやーす!


「ライラ。お呼びよ」


「コ、コリアント様、わたし、まだ書いている途中で……」


「あなたが関わったんだから最後まで面倒見なさい」


 オレ、面倒見られてたの? いや、いろいろ手伝ってはもらったけどさ。


「……は、はい……」


「上下関係が厳しいところだな、魔女の世界は」


 いや、それはどこでも同じか。自由気ままな村人でよかったぜ。


「……わたしが一番報告しなくちゃいけないんだから……」


 そう恨みがましい目で見られても。ついてきたのそばかすさんの自由意思──とまではいかなくとも強制はしてないじゃん。他にも学ぶことはあるんだからさ。


「ガンバレ」


 としか言ってやれないオレを許してくれ。そして、目録作りよろしくお願いしやーす。


「べー様。メイドを集めました」


 ぞろぞろて何十人とメイドが食堂に入ってくる。ほんと、これだけのメイドを雇えるだけの仕事ってなんなんだろうな?


「べー様があちらこちらに拠点を作るからでは?」


 ハイ。わたしめが原因でした~。ゴメンナサ~イ。


 仕事があってイイよね、ってことで食材を運んでくださいませ。無限鞄に入れるだけで数日かかったのだから運ぶのだって数日かかるぜい!


 と思ったけど、数とは偉大である。何十人ものメイドが出したものを次々と運んでいき、昼食を挟んで三時前には終わってしまった。


 ……あのときの苦労はなんだったのだろうな……?


 なんて考えてもしょうがない。過ぎ去った時間を惜しむ前にこれからやってくる未来を楽しもうではないか。


「あーコーヒーが旨い」


 一仕事終えたあとのコーヒーの旨いことよ。すべてが報われるようだ。


「安上がりなのかなんなのかわからない人生ですね」


 安上がり? これほどの贅沢かどこにある。周りが忙しくしている中で流れゆく時を感じながらコーヒーを飲む。こんなことができるヤツがこの世に何人いる? その中に自分が入っている。これほど幸せなことがどこにある? スローなライフでワンダフルなライフではないか。


「てか、双子に会いにきたんだった」


 目的を忘れることなど日常茶飯事。まだ三時にもなってないのだから会いにいっても問題ナッシングよ。


 コーヒーを飲み干し、オカンたちの寝室へと向かった。


 寝室前には武装はしてない赤と青の鬼メイドが扉の前に立っていた。どったの?


「授乳中です」


 扉の前に立っているってことは別のヤツが授乳してるってことか。まあ、誰が授乳してようがオレは気にしねーが、相手は気にするかもしれん。無理に入る必要もねーのであとにすることにした。


「べー様。少しよろしいでしょうか?」


 玄関までやって来たら執事さんに声をかけられた。なんだい?


「実は、人件費が増えて資金が足りなくなっております。旦那様やフィアラ様にご相談させていただいたのですが、べー様に相談しろとおっしゃられまして……」


 うん。確実に丸投げされましたね、これ。


「メイドが増えたの、ほとんどべー様が原因ですからね」


 いや、最初の原因はカイナに押しつけられたことだよ。押しつけられて、仕事を与えたのに酷くない?


「まだ払えているのか?」


「はい。夏まではつつがなく支払えます」


「どこの金で払ってんだっけ?」


「去年の秋から円で払っております。使える場所が限られておりますから」


 まあ、確かに。周囲に数万人を支える市場経済があるわけでもねーしな。


「わかった。用意するわ」


 そろそろ金山にいかなきゃとは思っていた。イイ機会だから掘りにいって来るか。


「しばらく留守にする。魔女さんたちには上手く言っててくれや。秘密の場所にいくからよ」


 金山の場所はトップシークレット。オレだけ──ではないが、極力秘密にすることが周りを守ることに繋がる。だからいくのはいつものメンバーだけだ。


「畏まりました。上手く伝えておきます」


「よろしこ」


 そう言って隠蔽結界発動。秘密転移結界門を発動して金山へと向かった。 

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