第1392話 キャンピングトレーラー

 準備ができたのでクレインの町へと転移した。


「発展してきたもんだ」


 建物も増え、クレイン湖にも飛空船が増えている。ってか、そんなに造ってどーすんのよ?


「べー様」


 桟橋で待っていると、プロキオンの船長がやってきた。あ、久しぶり。元気にしてた?


「よろしく頼むわ」


「はい。久しぶりの出番、しっかり勤めさせていただきます」


 いや、そんなに張り切らなくてもイイんやで。いや、出番を作ってやれないオレが悪いのかもしれないけど!


 プロキオンに乗り込み、客室に通された。


「べーくん、外を見てきていいですか?」


「船長。よろしく頼むわ」


 船に乗ったら船長の指示に従うもの。なんでよろしこです。


 オレはもう飛空船に感動もないので、客室でマ○ダムタイム。あーコーヒーうめ~。


 浮遊感が生まれ、プロキオンが発進。軽いGがかかり空へと飛び上がった。


「そう言えば、プリッシュ様がいませんね? こう言うことにはついて来そうなのに?」


 まあ、プリッつあんにはプリッつあんの用があんだろう。グローバルメルヘンだからな。


 のんびりしていると、色っぽい魔女さんが一人だけ戻って来た。若干、青い顔をして。


「高所恐怖症だったかい?」


「……だったみたい……」


 そう言って椅子に沈んでしまった。


 薬工房、結構高さがあったし、空飛ぶ箒(シュードゥ族製ね)で飛んでもいた。高所恐怖症ならそれでわかるもんじゃねーの?


「落ち着かねーなら酒でも飲むかい?」


 客室には酒が置いてあるので、度数の強いウォッカを出してやった。


「どうせ着く頃は夕方だ。酔い潰れても構わんよ」


 外はもう夕方。行動するのは明日になるんだから潰れたって問題ねーさ。


「では、いただくわ」


 ウォッカの瓶とコップを出してやる。キッツいから注意しろよ。


 なんて心配する必要もなく、ウォッカを飲む色っぽい魔女さん。酒豪か?


「もう山を越えたか」


 バリアルの街まで馬車だと何日もかかるが、飛空船だと三十分もかからねー。上昇したと思ったらすぐに降下し始めた。


「失礼します。あと五分で着陸します」


 船員が入って来て、そんなことを告げた。はい、了解です。


 浮遊石から魔力が抜ける感じがして、ガタンとプロキオンが飛空船場に着陸した振動が伝わってきた。


 ……やはり飛空船は水に着水しないとダメだな……。


 しばらくして船長がやって来て、降りる許可を告げた。


 プロキオンから降りると、陽が暮れており、あと三十分もしないで暗くなりそうだった。


「初めまして、べー様。支店長のロゴルです」


 バリアルの街に支店なんてあったんだ。いや、飛空船場を造ったのだからあって当然か。婦人の働きに最大の敬意を!


 心の中で婦人に敬礼して謝意を表した。


「おう。ご苦労さんな。問題なくやれてるかい?」


「はい。今のところ順調に商売をしております」


 それはなにより。バリアル伯爵から妨害は受けてないようだ。


「支店は街の中にあるのかい?」


 まったく知らない会長で申し訳ございません。


「事務所は街の中に置いてありますが、支店としては飛空船場の横に建てております。まずは支店へ案内します」


 と言うので皆で支店に移動した。


 支店は平屋だが、しっかりとした造りで、離れたところに従業員の住居らしきものも建てられていた。


 中もしっかり造ってあり、調度品も立派なものが揃えられている。


「身分のあるヤツが来るのかい?」


 立派にするのは立派なヤツが来るから。そうでなければ婦人の性格からして質素にするはずだ。


「はい。役人や街の商人が来ます。カイナーズホームで仕入れたものや海産物を売っておりますので」


 そんなことまでやってたんだ。婦人、商売上手だよ。


 他にも話を聞くが、ゼルフィング商会は受け入れられているようだ。


「ジャックのおっちゃんとは会ったかい?」


 婦人に話してなかったが、オレがバリアルの街に来ている理由を調べはするはずだからな。


「はい。ご挨拶に参りました。たまに器材を買いに来ますよ」


「そうか。なら、誰か走らせてくれるか? 明日、オレがいくってよ」


 外は暗くなったが、冒険者とかが仕事終わりにやって来るので、夜の八時くらいまでは開いてたりするのだ。


「わかりました。すぐに走らせます」


 部屋にいた者に視線を向け、頷き一つして出ていった。


「今日はもうお休みになさいますか?」


「いや、まだ起きてるよ。外の空いているところに勝手に泊まるよ。こちらに構わず仕事をしてくれや」


 突然来て仕事を邪魔する気はねー。放置してくれて構わんよ。


「わかりました。なにかあればお呼びください。警備員を巡回させておりますから」


 ここは街の外。魔物が出たりするか。


「あ、婦人の娘には部屋を用意してやってくれや」


 オレたちと違って、アーベリアン王国時間で生活してたんだからな。


「メイドさんたち、頼むわ」


「畏まりました」


 メイドさんに任せ、支店から出て新しく買ってきたキャンピングカー──いや、キャンピングトレーラーを無限鞄から出した。


「薬作りをやるが、どうする?」


「やります」


 ウォッカを飲んだのに、しらふかのように返事する色っぽい魔女さん。やはりこの人は酒豪のようだ。


 キャンピングトレーラーへとは入り、皆で薬作りを開始した。

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