第1389話 コンテナハウス
カイナーズホームから帰って来たら、館の食堂に叡知の魔女さんと、色っぽい魔女さんがいた。
「あ、あんときの」
あのテントに入ったら摩訶不思議な空間にいた薬在庫の責任者さんだ。
「お久しぶりです」
色っぽいわりに堅物な魔女さんだよな。見た目と中身がちぐはぐだぜ。
「こいつを連れてってくれ」
「あいよ。ってか、明日いくから今日はうちに泊まんな」
へい、メイド長。お部屋用意してチョンマゲ~。
「宿屋に連絡して用意していただきます」
あ、そのための宿屋でしたね。なにもかも忘れてるオレ、全世界に向けて謝罪します。メンゴ。
「じゃあ、明日な」
「夕方はよろしいのですか?」
「ああ、やることがあるからイイや。ブルー島に戻るよ。魔女さんたち、明日な」
そう言って食堂を出たら魔女さんたちがついて来た。なんでよ?
「なにかするんですよね?」
「まあ、薬の仕分けだな」
この世界のも売っているから薬の材料もあるんじゃないかとカイナーズホームにいったんだが、そう都合はよくなかった。だが、花屋があった。
本当に誰を相手に商売しているか謎だが、薬の元になる花が数種類あった。ってか、数年に一度しか咲かないミホリが売ってやがった。
目の病気──白内障に効果があるもので、回復水に少量混ぜ、少しずつ目にさすと視力を取り戻すのだ。もう目薬の容器も大量に買っちゃったぜ。
「では、手伝わせてください」
「そんな手伝ってもらう量ではねーんだが」
「なら、見学させてください」
グイグイ来るな、そばかすさんは。
「まあ、好きにしな」
別に見られて困ることもねーし、色っぽい魔女さんならなんか指摘してくれそうだ。そんときは勉強させてもらうまでだ。
「またフュワール・レワロか」
ブルー島に入ると、叡知の魔女さんが呆れたように呟いた。
そんな呟きを無視し、離れに入る。
「あ、お帰りなさいませ」
クルフ族のメイドさんじゃなく、下半身ヘビのメイドさんが迎えてくれた。あ、交代制みたいよ。
「軽く摘まめるものを頼むわ。魔女さんたちのもな」
そう言ってまた外に出て、カイナーズホームで買ってきたコンテナハウスを無限鞄から出した。
ハウスと言うだけに窓がついて換気扇まで設置してあった。タンクをつければ流し台やシャワーまで設置できると言う、なんとも男心をくすぐるものであった。
まあ、今回は時間がないので工房に使えそうなものを買ってきたのだ。
中は畳を敷き、囲炉裏と棚を一つ設置してもらった。ってか、細い長いから伸縮能力で四角くした。うん、やはり四角はイイ。
無限鞄から箱や器材を出して棚に並べ、花屋で買った花を出していく。
「ミホリにサイレラ、ハボ、ムロイトなんて、よく集められましたの」
さすが色っぽい魔女さん。すべてを知っているよ。
「そうだな。よく集めたと思うよ」
需要もねーのにな。いや、オレが買ってるから需要はあったわ。
「欲しいならやるぞ。また買ってくればイイんだし」
たくさんあってもそんなに使用する機会は少ねー。貴重なだけに使用頻度は多くねーしな。
「館長、よろしいでしょうか?」
「遠慮なくもらっておけ」
「もらっておけもらっておけ。オレも材料がねーときはもらいにいくからよ」
あのとき一通り分けてもらったが、メインに使うのは回復薬だ。他はオババやジャックのおっちゃんに渡して煎じてもらって分けてもらったほうが早いぜ。
……暇ができたらオレもちゃんと煎じたり調合したりしますからね……。
「この鞄をやるよ。その口に入れられるものなら荷車二台分は入るから」
また叡知の魔女さんに確認を求める色っぽい魔女さん。上司がいると大変だな。
「もう遠慮せずもらっておけ。借りはこちらで返しておく」
理解ある上司でなによりだな。
「ああ。留学生に返しておいてくれ」
人族が多いところで魔族を学ばせるのは大変だろうが、その分の見返りは渡してある。ガンバって学ばせてくださいませ。
「ハボ、少し多目にもらっていいでしょうか? 帝国で手に入れるのが困難なので」
「結石か。帝国では多いのかい?」
「貴族に多いですね。原因を知っているので?」
「うーん。いろいろな要因があるからなにがとは言えんが、貴族なら肉料理が多いんじゃないか?」
「そう、ですね。多いと思います」
「動物性たんぱく質、まあ、肉ばかり食っていると結石ができやすくなる、と言われてるな」
オレも詳しくないんだが、前世で肉食いすぎてなったと言ってたヤツがいたよ。
「なるほど。確かに肉を食べている人が多くなっていました」
ちゃんとカルテを取ってるんだ。
「じゃあ、全部やるよ。ここら辺じゃ結石になるヤツはいねーからな」
ボブラ村じゃ肉より魚が食われている。バリアルの街では何人かなっているみたいだが。
「他は?」
「ミホリですかね。魔女は目が悪い者が多いので」
そう言えば、メガネ率が多かったな。メガネフェチじゃないから気にもしなかったけどよ。
「目薬は作れるのかい?」
「材料と器材があれば」
と言うので、材料と器材を用意して目薬を作ってもらうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます