第1204話 ジュラってる

 丸投げが怖くて村人なんてやってられるか!


 なんて言ったら全方位から石を投げられるので、プリッつあんがいないときに心の中で叫んでおく。ハァースッキリ。


「……今、ゲスいこと考えてましたね……」


 幽霊に心の中を覗く能力がないので怖くはありませーん。知らんぷり~。


「ベー様。周囲五キロの地図ができました」


 サプルやレニスがトカゲさんたちの集落見学に出てる間、オレはのんびりマ〇ダムタイムしてると、青鬼っ娘さんが地図を持って来てくれた。


「地図ってか航空写真だな」


 写真をコピーして繋ぎ合わせた感じだ。


「はい。ドローンで製作しました」


 そんなものまで使いこなしてるんだ。ファンタジー感台無しだな。


「ってかあんた、休みじゃなかったっけ?」


 赤鬼っ娘さんとおしゃべりしてたような記憶があるんですけど。


「休みでしたが、カイナ様からベー様警護を任されました!」


 昨日はなんか嘆いてた記憶もあるんだが、今日はやけに晴れやかやね。なんかあったの?


「ベー様護衛は臨時ボーナスが出て昇進できるんです! カイナーズでは競争が激しくてわたしみたいな下っ端にはなかなか回って来ないからラッキーです!」


 突っ込みどころ満載でどこから突っ込んでイイかわからない。誰かヘルプミー!


「あ、うん、そうなんだ……」


 とりあえず、誰も助けてくれなさそうなので地図に集中です。


 カラーなのでなにがあるかははっきり見えるのだが、沼地や湿地帯ばかりだな。


 ウパ子の暴れ食いやカイナーズの八岐大蛇狩りはスルーするとして、なんもねーところだよな。


 ……ウパ子やカイナーズには天国だろうがよ……。


 地図を結界で広げ、チーズケーキをいただきながら眺める。


 南北に伸びるのは道か。蓮っぽいものがあちらこちらにあるな。これは木じゃなくてはシダかな?


「今の気温ってわかる? 湿度も教えてくれ」


「気温は三十度。湿度は七十八パーセントです」


 武装メイドさんの一人が答えてくれた。


 オレは結界を纏ってるから快適だが、武装メイドさんやカイナーズの連中も平気な顔してんな。


「魔大陸より湿度あるけど、大丈夫なの?」


「メイド服は温度調整できますから平気です」


「わたしたちは訓練で克服してます」


 あ、そうなんだ~。と納得しておきます。


 これと言って面白味のない地図を眺めていたら、北西側になにか尻尾? みたいなのが写っていた。


 ワニ、ではない。八岐大蛇、でもない。尻尾? のサイズからしてワニくらい。うん? 巨大生物、か?


「北西ってどっち?」


「あちらです」


 カイナーズの一人が北西を指差してくれた。


「ちょっと出て来る」


 気になったら即行動がオレ。空飛ぶ結界を創り出し、北西へと飛んだ。


「あたしたちがいきます!」


 背後でミタさんが叫ぶが、止める気もないので構わず向かいます。空飛ぶ箒出してたし、文句は言われないだろう。たぶん。きっと。オレは信じてるからね!


 空飛ぶ結界で進むこと五分。前方に湖? が見えて来た。


 少し上昇させると、地図に写っていたものが視界に入った。


「モンゲベベレですね」


 気の抜ける名前だが、そのサイズは三十メートルくらいあった。


 ……恐竜に詳しくないが、最大の恐竜と言われてる……なんとかサウルスに似てんな。背中に毛は生えてるけど……。


「有名なの?」


「わたしはご主人様の見聞録でしか知らないのですが、亜竜のようです。水棲の生き物で、ほっとけばどこまでも大きくなるとのことですよ」


 まあ、五百メートル級の地竜がいる世界。三十メートルなんてお笑いレベルだろうよ。知らんけど。


「食えるの?」


「ベー様の中では食えることが優先されるんですか?」


 生きとし生けるもの食わなきゃ死ぬ。オレはもう空腹で苦しむなんてしたくないんでな。


「どの種族かはわかりませんが、祭りのとき一番大きいものを狩ると書いてあったから食べられるとは思いますよ。どの種族にも、とは言えませんからね」


 まあ、食料に困ってないんだから試しに狩って食ったりはしないさ。


「……ジュラ紀だな……」


「ジュラ紀? なんですか、それ?」


「なんでもない。気にすんな」


 それを説明できるほど詳しくないし、ファンタジーワールドになにがいても不思議ではねー。軽く流してくださいな。


「楽しいな、世界は」


 そうだ。あるがままの光景を楽しもうじゃねーか。

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