第1202話 予言

 味覚、あるんだ。


 そして、意外とグルメでやんの。見た目からは生肉囓ってそうだけど。


 なんて種族差別と罵られそうだが、二足歩行のトカゲが筑前煮(誰だよ、考えたヤツは?)を旨そうに食ってればそう思いたくもなる。世界にケンカ売ってるようなものだわ。


 いやまあ、お前が言うなってこと重々承知の助。だから心の中で止めておいてくださいね。


「人はこんなに旨いものを食っているのだな。驚きだ」


 オレは旨いと感じる味覚を持ってるあんたらに驚いてるがな。


「ただ、塩辛いのは受けつけん」


 塩辛いと言うことは塩は伝わってるんだ。刺激物が苦手なのかな?


「この甘さがよい!」


 とくにご機嫌なのは厚焼き玉子、と言うか、甘さがイイみたいだ。シュークリームを八個も食いやがったよ。


「我らにも食わせろ!」


「食わせてくれ!」


 勇者さんが嬉しそうに食っている姿に我慢できなくなったのか、他の連中も料理に手を伸ばしてしまった。それなら自己責任で頼むよ。


 料理メイドさんには申し訳ないが、たくさん料理を作ってくださいまし。さあ、トカゲさん達の胃を侵略するのだ!


「すまぬな。バンボラウトのせいで食料が不足して皆が飢えてるのだ」


「被害は大きいのかい?」


 狩猟が主なのか、畑とかは見て取れないし、トカゲさんの標準体型も知らん。なので被害の大きさが想像もつかんかった。


「ああ。バンボラウトの群れが現れて我らの主食たるボンゴが採れんのだ」


 ボンゴ? なんや? と思ったら勇者さんが見せてくれた。


「……レンコン……?」


 見た感じはソレ。割ってみるとレンコンと同じく穴が空いていた。


 ……肉食な見た目なクセに雑食な種族だよな……。


「どう食うんだい?」


「こうだ」


 レンコンをそのままパクリ。バリバリと咀嚼? した。今さらだが、トカゲさんたちの口の構造どうなっんだ?


 まあ、それほど知りたいわけじゃないんで流すが、料理するとかしないんだな。まあ、レンコンをどう料理しろって話だがよ。


「そう言や、イモも交換してたがイモも採れるのかい?」


 イモが採れる土地だとは思わねーんだかな? ファンタジーイモか?


「いや、人と交換する。我らには貴重なものだ」


 よくここまで持って来るもんだ。そんなに道事情がイイのかな?


「ミタさん。筑前煮、いっぱい作って収納鞄に入れてくれや」


 収納鞄を出してミタさんに渡した。


「あ、あのワニの肉使ってよ」


「ワニ? ボフガットですね。畏まりました」


 理解力のあるメイドで助かります。


 その日はそれで終わり、次の日も来ると約束してブルー島に戻った。


 離れに戻るとサプルやプリッつあんが帰っており、夕食が用意されていた。


「あんちゃん、お帰りなさい」


「遅くなって悪かったな」


 オレを待っててくれだろうから謝罪する。


「大丈夫だよ」


 妹の笑顔が眩しいです。直視できません。


「悪いことしてるからでしょう」


 悪態をつくメルヘンにはめんちを切ります。つーか、してないし!


「なにかおもしろいことはあった?」


 席に座ると、レニスが興味深そうに尋ねて来た。


「八つの頭を持つヘビやデッカいワニがいて、ギンコやウパ子が暴れ食いしたよ」


「へ~。それはおもしろいね」


「なにかしら、この似た者同士は? どこにおもしろいことがあったのよ」


 似てるか? まあ、なんかシンパシーは感じるけど。


「あんちゃん、あたしもいきたい!」


 どこに興味を持ったかわからんが、ダメだと言っても聞きやしないのだから了承する。駄々っ子神と戦う気はありません。


「わたしもいきたい」


 レニスもかい。つーか、動いて大丈夫なのか?


「無茶はしないよ。したくてもじーがさせてくれないし」


 あ、離れの外にいた武装集団はソレか。なにかと思ったよ。いや、全力でスルーしましたけど!


「好きにしな」


 レニスのことはカイナがなんとかすんだろうし、オレは妹の監視で精一杯だろうからな。


「きっと碌なことにならないわね」


 そんな予言などノーサンキュー。

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