第1194話 アウェイ
自由気ままなカイナも孫と一緒にいるのは嬉しいようだ。
なら一緒に住めよ、と言う言葉が出かかるが、それはカイナの問題で、義兄弟だろうと口出すことじゃねー。
……カイナが選んだのなら尊重してやるのが義兄弟ってもんだしな……。
体は人以上になりながら心は人って言うのも残酷だよな。オレには受け入れられんわ。
「そう言えばプリちゃんは?」
「どっか出かけた」
なんか言ってたかも知れないが、どうでもよかったので記憶に残ってません。
「プリッシュ様でしたら館にいきましたよ。奥様の様子を見に」
あ、そうなんだ。つーか、あのメルヘンもマメだよね~。コミュニケーションだけで世界とか盗れんじゃね?
「あの好奇心が自分たちを滅ぼしてるってわかってないのよね、白羽妖精族は」
とは黒羽妖精族のみっちょんです。
いたんだ!? とかはなしよ。このダークメルヘンはレニスの頭に住み着いたと理解してくだされば幸いです。
「まあ、それでもタケルに拾われるんだから運がいいんじゃない」
「そうね。白羽妖精族が羨ましいわ」
「君らだってべーに拾われたじゃない」
「拾われたと言うよりわたしが外に出たかったからお願いしたのよ。他の子たちは無理矢理連れて来たの」
「みっちょんは黒羽妖精の女王的存在なんだよ」
まあ、黒羽妖精族社会のこと、よく聞いてはいないが、みっちょんの命令には従っていたし、こうしてフューワル・レワロから出て来たから女王的存在で間違いねーだろう。
「ヘー。そうなんだ。プリちゃんのところとは違うんだね」
「わたしたちは社会性を大事にする種族だからね」
ヤダ。メルヘンが社会性とか夢ぶっ壊しすぎる。
「……なんか酷く裏切られた気分……」
わからないではないが、自分の価値観を口にするんじゃありません。みっちょんたちに失礼でしょ。
昼食をいただき、暖炉の前に移って食後のコーヒー。女子トークに加わる気はありません。
ゆっくりのんびり……しようとしたが、どうにも女子の中にいるのが落ち着かねーな。カイナの野郎、よく笑顔でいられるよな。スゲーよ。
「ちょっと散歩にいって来るわ」
「ブルー島内ですか?」
「ああ。姉御のところまでいってみるわ」
帝国のお土産……は買ってませんね。つーか、せっかく帝国にいったのにレヴィウブしか見てねーな。帝都とかゆっくり見て回りたかったのによ。
お土産はレヴィウブで買ったもんをテキトーに渡せばイイか。布とかいっぱい買ったし。
離れから出ると、ウパ子のデカい顔があった。
……なんか見慣れたせいか、ちょっと愛嬌ある顔に見えてくるから不思議だな……。
「べー。魚食べたいでち」
「魚なら毎日食ってるだろう」
たまに謎の海洋生物も食べてるけど。
「生きてるのにかぶりつきたいでし」
つまり、踊り食いがしたいってことか?
初めて会った頃はクラーケンにも怯えてたのに、すっかり捕食者になったもんだ。いや、別に感慨深いことはなにもないけどな!
「なら、外に出てみるか」
もう南の大陸についてるはずだし、なんかいんだろう。
まあ、ブルーヴィが海の上か陸の上かどこを飛んでるかここからはわからないが、南の大陸は生き物が豊富とラーシュの手紙に書いてあった。ウパ子の食えるものくらいいんだろう。
「いくでし!」
「その前に姉御のところにいってからな」
せめてブルー島にオレありを示しておかんと居場所やら存在意義やらがなくなりそうだからよ。
今さらじゃない。とか言っちゃいやだからね!
オレを先頭に百鬼夜行ばりに姉御のところへと向かった。
「ベー様、こんにちは~」
「ごきげんよう~」
と、すれ違う住人に挨拶をかけられるのだが、誰もこの百鬼夜行に突っ込む者はなし。いや、突っ込めよ! こっちがおかしいのかと思うやろが!
なんて叫びたいが、オレがおかしく見えるのでグッと我慢する。
自分の島なのに、アウェイ感がハンパねーな、こん畜生が!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます