第1190話 優先すべきこと
ガツン!
と、なにか体全体に衝撃が生まれ、椅子から転げ落ちてしまった。
「──ベー様!?」
「プリッシュ!?」
なにかミタさんとサプルが悲鳴のようにオレとプリッつあんの名を叫んだ。
……な、なんだ……?
体がまったく動かない。力がまったく入らない。が、思考は辛うじてできる。無限鞄からエルクセプルが入った箱を出す。ミタさん、飲ませて!
なんとか目で訴えると、理解してくれたようでエルクセプルを口に含ませてくれた。
「……ベー様……」
「……だ、大丈夫。プリッつあんにも飲ませろ……」
全快するのに気持ち程度にしか回復してない。ってことは、体じゃなく、別次元のなにかが負傷したのだ。
「……なにか、箱庭に入って来ようとして弾かれたみたいよ……」
とはみっちょんだ。どーゆーことよ?
「箱庭は外敵から命を守るために創られたもの。並みの攻撃では破れないけど、無限に守れるわけじゃないわ」
「……つまり、失われた力を補うためにオレやプリッつあんから吸い取ったわけだ……」
いや、吸い取ったってレベルじゃねーが、みっちょんの言ってることには納得できた。
「……覚悟せよ、とはこのことか……」
石文に書かれていた意味がよくわかったよ。ってか、もっとわかるように書いてて欲しかったわ……。
結界と箱庭を創る能力──と言うか、出所のエネルギーは同じ神エネルギーとは思ってたが、身体にまで影響を及ぼすまでなにがあったんだよ? 魔大陸でガンガン使ったときでも一日中歩いたくらいの疲労しかなかったのによ。
ミタさんに椅子に座らせてもらい、水を飲ましてもらった。
「ベー様。カイナーズから医者を呼びますか?」
「いや、イイ。医者じゃ無理だからな」
これは医者に診せたところでどうしようもねー。今は休むしかねーだろう。
「プリッつあんはどうした?」
「気絶してるわ。まあ、ベーよりはマシな感じね」
答えてくれたのはみっちょんだ。
プリッつあんの能力も神エネルギーだと思うが、容量的にオレのほうが上で、フュワール・レワロを継いだことにより神エネルギーを持っていかれ、共存関係にあるプリッつあんも巻き込まれた、って感じなんだろうよ。
……オレですら手に終えないものを封じ込めておくフュワール・レワロに衝撃を与えるなんて隕石でも当たったのか……?
「ブルーヴィは無事か?」
「驚いたみたいで暴れてるみたいね」
フュワール・レワロ内は外の影響を受けないようになっている。創造者、グッジョブ。
「わたし、様子を見て来るわ」
「ああ。頼むわ」
ブルーヴィはみっちょんたちに任せれば大丈夫だろう。共存関係だったみたいだしな。
「ミタさん。転移結界門の様子を見て来てくれ。出入りできるかをな」
「畏まりました」
オレが創り出した結界は一応繋がってる感じで、神エネルギーが流れているような気がする。今ので消えてなければ単独で稼働してると仮定できる。
……オレが死んだら結界が消えるかどうかが、わからないんだよな……。
「ベー様。門は通じるとのことです」
誰かに確かめにいかせたかのような口振りだが、また、通じるならそれでよしだ。
「それと、カイナーズからの連絡でカイナ様がこちらに向かったようです。かなり怒った様子で……」
これで謎は解けた。
「……あのバカのせいか……」
そりゃこうもなるわ。いや、よく死ななかったもんだ。あのバカにはオレの結界は効かないんだからよ。
「そんで、そのバカは来たのかい?」
「いえ。来てません」
「ってことは弾かれたな」
さすが神のエネルギーで創られたもの。魔神をも弾き返すか。
「まあ、あのバカなら死ぬことはねーだろう。気にするなとカイナーズに伝えておけ」
あいつもかなり方向音痴なようだが、転移できるんだからすぐに帰って来れんだろうよ。
「とにかく、サラニラが来たらレニスを診てもらってくれ」
優先するのはレニスだ。他はどうでもイイわ。
「畏まりました。レニス様を優先させます」
ああ。あとは頼むと、意識を手放した。
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