第1155話 村人ですがなにか?
空飛ぶ箒(仮)創りに集中してたら、なにかフリフリと視界を遮るものが現れた。なによ?
集中力が途切れ、意識を遮るものに向けた。
「ドレミ?」
の手が振られていた。なにしてんの?
「マイロード。ミタレッティー様が呼んでます」
ミタさん? なんやねん?
「ナバリー様と皇帝の弟様から連絡が来たそうです」
ナバリーって誰や? そして、皇帝の弟がなんだって言うんだよ?
「船の改装と大図書館の魔女たちをフュワール・レワロに招く相談かと思われます」
ん? なんの──あ! そうだった!! すっかり忘れったわ!
いかんいかん。空飛ぶ箒(仮)を創るのに夢中で大事なことを忘れてた。そのまま集中してたらとんでもないことになってたわ。
「ドレミ。ミタさんに入ってもらって」
今のオレは材料に囲まれて、すぐに動けないんでさ。
猫になったドレミが材料の隙間を器用に移動してドアを開けた。
「べー様。お客様がいらっしゃってます。客間までお願いします」
「ワリー。もうちょっとかかるから客をもてなしておいてくれや」
今立つと材料がどこにあるかわからなくなるんでよ。
「畏まりました」
時間稼ぎ、頼んます。
あれはこれ。これはあれ。こいつはそっちに移してそいつは無限鞄に仕舞う。えーとあーとうーと、うん、こんなもんか。
「う~ん。これなら携帯工房を創ったほうがイイな」
いちいち片付けるのもメンドクセー。持ち歩いたほうが楽でイイわ。
まあ、それはあとだ。客を待たすのもワリーしな。
ってか、客間ってどこよ? と思う必要もなくドアの横で待機してたメイドさんが案内してくれた。あんがとさん。
客間に入ると、見た目三十歳くらいの魔女さんがケーキを美味しそうに食していた。
……魔女ルックは正式採用されてんのかな……?
「待たせてワリーな」
「──あ、いえ、お忙しい中、時間を割いていただきありがとうごさいます!」
なんか魔女っぽくない魔女さんだこと。
「オレは、ヴィベルファクフィニー・ゼルフィングだ」
「初めまして。わたしは、魔法庁所属調査部補佐長をしておりますイガリ・ロンガルと申します」
へー。帝国には魔法庁なんてもんがあるんだ。初めて知ったわ。なにするところなんだ?
「補佐長さんか。よろしくな」
役職があるって覚えやすくてイイよな。うん。
「そんで、用はなんだい?」
「はい。場所を用意しましたので確認とフュワール・レワロへの出発の段取りを話し合いと思いまして」
あ、ああ。そんなこともありましたね。ほんと、忘れててすんません。
「んじゃ、その場所にいくか。フュワール・レワロも設置しておいたほうがイイだろうからな。大丈夫かい?」
また忘れたら大変だしな。今のうちに用意しておこう。
「あ、はい。ではご案内いたします」
と言うので案内してもらう。って、歩いていける場所なんかい?
「あ、すみません。すぐに馬車を用意します」
あなたはなにで来たのよ? 徒歩か?
「いえ、魔女は空が飛べますので」
「へー。魔法で空を飛べたんだ。魔女スゲーな」
バリラのような翼を持つ種族なら魔法による飛行もできるらしいが、人の身でその魔法は使えねーと聞いてたんだがな。
あと、飛行魔術はあるらしいが、それは熟練の技であり、そう大した時間飛行はできないらしいぜ。
「ええ、まあ、魔女による特殊魔法ですので……」
あまり言いたくなさそうな感じだな。秘技とかか?
「そうか。なら、空飛んで案内してくれや。オレも空を飛ぶからよ」
せっかくだ。空飛ぶ箒(試作)の飛行テストをやっておこう。
最初に創った空飛ぶ箒を無限鞄から出して跨がる。
結界サドルが創り出されているので座り心地はまあまあ。仕込んだ浮遊結晶石に魔力を送ると空飛ぶ箒(試作)が浮かび上がる。
「おーおー浮かんだ浮かんだ」
いや、できるように創ったんだから浮くんだが、箒に乗ってるってのが新鮮だ。ヌハハ。アニメの中の魔女になったみてー!
「うおっ!?」
二メートルくらい上がったところでバランスを崩してしまい、クルンとひっくり返ってしまった。
「いけねーいけねー。バランスのこと考えてなかったわ」
なんかジャイロ的なもの作らんとまともに飛べねーな、これは。
まあ、今回は結界でバランスを取るか。よっ、とっ、はぁー! でできあがり。さあ、いこうか補佐長さんよ。
「……何者なんですか……?」
村人ですが、なにか?
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