第1138話 買えるときに買い占めろ

 慰労会と言う名のなんだかわからない催しは無事、終了し、新しい朝がやって来た。


「いや、昨日は疲れたぜ」


 つい、結界パレードに夢中になってしまい、限界を突破してハチャメチャやってしまった。お陰で朝寝坊しちまったぜ。


 あ、プリッつあんが寝室に使っているプリッスル(だったかな?)の一室を借りました。


 柔らかベッドから起きて、洗面所へ向かい顔を洗い、すっきりさっぱりしたら貴族風の服に着替える。


 ちなみにだが、作業以外は貴族風の服ですごしてますよ。さすがにレヴィウブで村人ルックは目立つと言うか、浮いてしまうからな。


 部屋を出ると、ミタさんがいた。


「おはようございます、ベー様」


「あい。おはよーさん。朝食できるかい?」


 今は九時前。朝食はとっくに終わってる時間だ。


「はい。皆様も少し前に起きましたので」


 そりゃそうか。昨日は遅くまで起きてたしな。


 ミタさんの先導で食堂へと向かうと、皆さん、ちょっと眠そうな感じで食事をしていた。


「おはよーさん。眠そうだな」


 市長代理殿と同じ席に座らせてもらう。他には入り難そうなので。


「はい。楽しくてなかなか眠れませんでした」


 眠そうな感じではあるが、気持ちはさっばりしたような市長代理殿。よくわからんが、イイ休暇にはなったようだな。


「ってか、隣のは誰?」


 三十手前の細身の男で、なにやら仲のよい感じですが? あれ? この男、昨日も市長代理殿の横にいなかったっけか?


「わたしの婚約者ですよ。来たときに紹介したじゃありませんか」


 あれ、そうだっけ? まったく記憶にねーわ。


「そりゃ失礼。婚約者さんはよく眠れたかい?」


 こちらはすっきりした顔してるな。どこでも寝れるタイプか?


「はい。あんな柔らかい長椅子で寝れて幸せです」


 長椅子? なんで長椅子?


「ナタリオはベッドで寝るより長椅子で寝るほうが好きなんです。変わった趣味ですよね」


 確かに変わった趣味ではあるが、市長代理殿はそれを許容してる、と言うか、愛おしそうに言うな。顔もいつもの仕事用ではなく女の顔になってるし。


「まあ、オレも長椅子で寝ることがあるからわからんではないよ」


 部屋には置いてねーが、秘密基地や隠れ家には置いてあり、よくそこで寝ている。まあ、結界を張らずに寝ると体が痛くなるけどよ。


「同志がいるとは嬉しいです」


「はは。長椅子が気に入ったなら結婚祝いに贈らしてもらうよ。あとベッドもな」


 長椅子で寝るのもイイが、ちゃんとベッドでも寝てやれよ。じゃないと捨てられるぞ。


「ミタさん。手配しておいて」


 オレが選ぶよりミタさん(か配下)が選ぶほうが確かだろう。オレだと自分の好みに合わせて固めのを選んじゃいそうだからな。


「畏まりました」


「あ、あの、よろしいんですか!? かなり高価なもののようですが?」


 そうなの? ミタさん知ってる?


「確か、百円均一商品だったような気がします」


 百円均一って、まあ、カイナーズホームに価格設定を言ってもしょうがねーか。


「安いから気にすんな。市長代理殿には気持ちよく働いてもらいてーし、そっちの婚約者殿と幸せになって欲しいしな」


 もう家族のようなもの。なら、健やかに過ごしてもらいてーからな。遠慮すんなだ。


「ありがとうございます。では、ありがたくいただきます」


「おう。もらっとけ。他に必要なものが出たらメイドに言いな。代金はこっちで払っておくからよ」


 丸投げ賃としたら安いもの。遠慮せず欲しいものはジャンジャン買えだ。


「ありがとうございます」


「おう。ところで、まだゆっくりできんのかい?」


 ごめん。君たちがいつ来たか忘れました。


「はい。あと二日くらいはゆっくりできます」


 そりゃよかった。ちゃんと任せられる人材は確保しているようだ。


「そうか。なら、残り二日、レヴィウブを楽しむとイイ。それと土産を買って帰るのを忘れるなよ。今も働いてくださる方々がさらに働いてくれるために、な」


 お土産一つで気持ちよく働いてくれるなら手前でもなければ高くもない。喜んで贈らせてもらうぜ。


「金はオレが払うから心配すんな。ケチらずイイもんをたくさん買って帰るがイイさ」


 土産だろうとなんだろうと買えるときに買い占めるもの。前に来たとき買い占められなかったから今回は買えるだけ買い占めるぜ。


「はい。遠慮なく買わせていただきます」


 うん。イイ感じに遠慮がなくなってよろしい。もっと貪欲になって悪辣な市長となるがイイさ。

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