第1137話 イリュージョン
慰労会だかなんだかの会は夜になっても終わる気配はなかった。
ってか、帝国のヤツらは暇なの? 家族団欒とか、家族ですごすとかの目的でレヴィウブに来たんじゃねーのか?
「だって、あなたたちが用意するものが楽しいんだもの」
ヨーヨー釣りをする幽霊とはこれ如何に。ってか、もう完全に縁日となってるのはなんでや?
「カイナーズから的屋を呼びました」
うん。カイナーズだもんね。なんでもありだよね。了解了解。と、突っ込むのもメンドクセーので素直に受け入れました。
「まあ、楽しんでくれや」
オレは型抜きをせねばならんのだ。
「見せてやろう。型抜きの申し子と言われたオレの力をな」
よっ! はっ! とぉう! とりゃあー!
「ウム。完璧でござる」
なんと言うできよ。我ながら惚れ惚れするぜ。おにーさん、もういっちょーだ!
「……べー様って、無駄に器用ですよね……」
無駄とか言うな。あと、器用貧乏と言わないこと。オールマイティーとお呼びなさい。オレはやればできる男なのだ。
「うし! 完璧だ!」
型抜き、ちょー楽しいぃ~!
「──あ、いた~! もぉ~! なに主催者がお祭りに混ざってるのよ! そろそろ花火を出してよ!」
ドン! と型抜きの上に現れるメルヘン。なにやっとんじゃーボケー!
「あと六点だったのにー!」
ほんと、なにしちゃってくれてんのよ、このメルヘンは! 嫌がらせか! 嫌がらせなのか? さすがのオレでもブチ切れちゃうからな!
「なんなの?」
「え、えーと、これを上手く抜いて点数を集めるゲームのようで、べー様はそこの景品を狙っていたみたいです」
ミタさん、説明ありがとう!
「景品って、あの変なベルトのこと?」
「そうらしいです。なんでも変身ベルトらしいです」
そうだよ! 前世で親が買ってくれた仮面なライダーがトゥッな感じでジャンプしてアレになるヤツだよ! いや、なんの仮面なライダーだったか忘れたけどね!
「変身? この村人はさらになにに変身しようって言うのよ? ただでさえ変なのに」
「うっさいよ! 変とか言うな!」
摩訶不思議な生命体から言われたくねーよ!
「オレは忙しいの! 花火ならカイナーズに依頼しろよ。喜んで来てくれんだろ」
打ち上げ師も仕事ができて喜ばれんだろうよ。
「それが別なところにいっていて来れないって言うのよ。べーの力でなんとかしてよ!」
「なんとかって、なんともできねーよ!」
オールマイティーどこいった? なんて突っ込みはノーサンキューよ。やればできる男もやるまでには準備期間ってのが必要なんだからさ~。
「そこをなんとかするのがべーの仕事でしょう!」
そんな仕事についた覚えはねーよ! つーか、なんの仕事だよ、それ?
「おにーさん、もういっちょう!」
とにかくあと六点なのだ。変身ベルトはオレがいただく!
「ウルトラスーパープリキィークッ!」
おにーさんから受け取ろうとした型抜きを華麗に蹴り上げるメルヘン。なにしてくれてんじゃワレー!
「ちょっとあなた、そこの変なベルトをべーに渡してよ!」
なにこの暴君? 君はそんなキャラだったか?
「的屋はぼったくりで生きてんだから無茶言うなや」
いや、偏見だけど、オレはあえて戦い勝つ男だ。
「わ、わかりました」
とか言うこと聞いちゃう的屋のおにーさん。イイんかい!
「プリッシュ様には逆らえませんから」
なにその上下関係!? なにがあったの?! メッチャ気になるんですけど!!
「ほら、ベルトが手に入ったんだから花火してよ! 皆待ってるんだから!」
皆って誰だよ? 君の交遊関係が謎でしょうがねーよ。
「あのな、花火はそう簡単に用意できるもんでもねーし、素人が簡単に扱えるもんでもねーんだよ。ましてやこんな人の多いところでやるもんでもねー。危険なものなの、花火ってのは」
やれと言うなら導火線に火をつけて、五トンのものを持っても平気な体で放り投げれるが、プロのように鮮やかに咲かせることはできねーよ。プロナメんな、だ。
「じゃあ、どうするのよ? 皆楽しみに待ってるんだからね」
いや、君が勝手に約束したんでしょうが。無茶言わんとって。
と言って放り投げることはできねーか。なんたってオレが主催者。まあ、こんな状況になったのはオレのせいではねーけどよ。
「なら、結界パレードを見せてやるよ」
「結界パレード? なにそれ?」
所謂、千葉なのに東京とのたまう夢と魔法のランドで行われている夜のパレードを結界で再現したものだ。
時間があれば結界花(花火ね)も打ち上げられるのだが、綺麗に咲かせようとしたら結構な時間をかけて仕込まなくちゃならんし、結界花は去年のサマーキャンプで使い切ってしまった。
なので、サプルの誕生日にやった結界パレードを披露してやろう。
まあ、夢と魔法のランドほど鮮やかではねーが、この時代のヤツらを驚愕させられるだけのものだとは請け負ってやろうではねーか。
まずは、光の妖精的なものを創り出し、クルクルと舞い踊らせる。
人目が集まって来たら、光の妖精的なものを一体、また一体と増やしていき、夜の空へと上昇させていく。
「……綺麗……」
誰かの呟きにそうだろうとニヤつく。
次に可愛い動物たちの行進や様々な花を創り出し、小さな花火も辺りに咲かせる。
徐々に賑わいが小さくなり、やがて人々は結界パレードに釘付けとなっていく。
ヘイ、楽器隊。音楽をプリーズだぜ!
魅了されている楽器隊を覚まし、音楽を奏でてもらう。
「さあ、イリュージョンに酔いしれるがよい!」
なんてつい調子こくオレであった。
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