第1053話 健闘を祈ります

 クルーザーに戻り、島一周を再開させた。


 世界樹の亜種──海典の樹とやらのあとは、これと言ったデンジャラスイベントはなく、島を一周できた。


「ベー様、到着しました」


 元の湾に戻ると、ミタさんがわかり切ったことを言ってきた。


 まあ、クルーザーの先に立ち、考え込んでいるふうにしていれば、そう言いたくもなるだろう。


 ただ、上でブンブン飛んでいるメルヘンさんのせいで集中して考えられなかったけどなっ! ほんと、鬱陶しいわ!!


「プリッつあん、プリッシュ号改を出してくれ」


 このままじゃ考えが纏まらんわ。


「アイアイサー!」


 なんかノリノリな感じで返事された。


 まあ、嫌じゃないのならこちらに否はなし。五分くらいしてプリッつあんサイズのプリッシュ号がやってきた。


 どこに停泊させていたんだろう? とか頭を過ったが、別にどうしても知りたいわけじゃないので、サラリと流しておく。


 プリッシュ号改がクルーザーの横につき、結界で創り出した渡り橋を繋げた。


 ついてくる人、挙手!


 って言うボケを噛ましてやろうとしたが、もう集まってました。ってか、メイドさんが増えてね?


 ま、まあ、うちのメイドは無限増殖するもの。気にしたら負けだ。


 ついてくる方々を小さくしてプリッシュ号改へと乗り込んだ。


「ようこそ、プリッシュ号へ!」


 なんか敬礼して迎えてくれる我らのキャプテンプリッシュ。ノリノリなメルヘンの気概を削ぐのもなんなので、オレも敬礼で答えた。


 突っ込みに向いてると思う方々よ、今からサブ突っ込み役を絶賛大募集します。我こそと思う方々は奮ってご応募してください。連絡先はオレまで。よろしこ☆


「キャプテンプリッシュ。海典の樹があった上空までよろしく頼む」


「アイアイサー!」


 メルヘンをそこまでノリノリにさせるものがなんなのか超気になんねーので、サラリと出発進行。安全航行でよろしこです。


「プリッシュ号、発進!」


 銅鑼でも打ってやろうかと思ったが、乗ってては風情がない。下にいるカイナーズのヤツらに手を振りながら乗客の雰囲気を楽しんだ。


 そこでフリの一つでももらえると場が引き締まるのだが、ミタさんたちにそれを求めるのも酷。誰かプリッつあんの代役をプリーズです。


 席に座り、ミタさんにコーヒーをお願いする。


「今度はなにを倒しにいくの?」


 巨大メルヘンがヌッと登場。だが、顔がデカくて視界に入らない。邪魔くさいので小さくしてやった。


「もー! 勝手に小さくしないでよ!」


 プリッシュ号改へと乗り込んできたメルヘンに文句を言われたが、そんなものは無視です。ってか、タケルのところに戻れや。君はあっちのチームなんだからさぁ~。


 ミタさんが淹れてくれたコーヒーを受け取り、メルヘンの文句を右から左にさようなら~とコーヒーをいただいた。あーうめ~!


 ヒュンヒュンとゆっくり航行なので、景色が美しい。ただ、戦闘機がたまに映るのは止めてください。


「あ、竜だよ竜! カイナーズが竜の群れとドッグファイトしてるよ!」


 あはは。そんなのよくある光景に驚くなんて、タケルのところのメルヘンもまだまだだな。うちのメルヘンは見向きもしないぜ。


 竜と戦闘機の戦いに興味なしと、眺める方向を変える。あー海は偉大だな~。


「ベー。目的の上空よ」


 おや、もう到着ですか。どれどれ。


 席から立ち上がり、縁に立って下を見る。


 木々が生い茂ってはいるが、やはり人の手が加わっているのがわかった。


「以前、建物があった感じだな」


 朽ち果てて土台しかないが、草木の感じからして館か小城ってサイズかな? 自然による風化で倒壊したように見える。


「キャプテンプリッシュ。オレが発着場を造るからそれまで待機な」


「アイアイサー! 健闘を祈ります」


 なにに健闘するかは知らんが、キャプテンプリッシュの敬礼に応え、縁に手をかけて飛び降りた。

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