第1033話 家族だから当然

 下ると、プリッシュ号改がこちらに降下して来るのが見えた。


「プリッつあんも大活躍だな」


 いろいろ突っ込みどころ満載のメルヘンではあるが、今回ばかりはいてくれて本当に助かった。


 アネムに仕掛けた結界から自分だけでは無理と悟り、カイナの力を借りることを選んだ。


 カイナの性格と転移結界門を渡したことから戦闘機で来ることは予測してたが、まさか戦艦や空母まで連れて来るとは予想だにしなかった。


 どちらの考えかは知らんが、まさにナイス! と叫びたかった。とてもじゃないがオレだけでは追い払うこともできなかっただろう。それどころか殺されてたかもしれない。


 今回はその機転に助けられた。


「ありがとよ」


 と、プリッシュ号改から降りて来たキャプテンプリッシュに礼を言った。


 ……ってか、あの緊急時に着替える余裕があったことにびっくりだよ……。


「なによ、らしくない。タケルやアネムは家族なんだから助けるのは当然でしょう」


 ちょっと照れたようにそっぽを向き、オレの頭にパ○ルダーオンした。


 まあ、らしくないことを言ったのは事実なので、それ以上のことは言わなかった。


「それよりタケルたちはどうなったの?」


「わからん。中から反応がない。まあ、ドレミが入ったから死んではいないだろう」


 仕掛けた結界の数は揃っている。


「ってか、射ち落とされたのはアネムだけなのか」


 他のメルヘンに仕掛けた結界は中から感じるんだから、外にいたのはアネムだけなんだろうけどよ。なにしに出てたんだ?


「哨戒に出てたんじゃない? 飛行機を大きくすると格納庫がいっぱいになるから哨戒の順番が決まってるって言ってたから」


 そんな話をいつしてるか謎だが、そう言う理由からなのはわかったよ。


 ちなみに、メルヘン機が使えるようにとせがまれて、造船所のようなものを創りました。


「ベー様。フミたちが来ました」


 どこから? と見ればプリッシュ号改から完全武装ってな感じのデフォルトなお姉様方々が降りて来た。


「ベーを真似て転移結界門を創ったの」


 そんなに器用なら自分の伸縮能力も活かしてよ。使い道を考えるって大変なんだからさ。


「ベー様。遅くなって申し訳ございません!」


 なぜかスパナを持って胸に当てるフミさん。そんなコアな謝罪いらんよ。


「構わんよ。万が一のときのために呼んだんだからな」


 さすがのカイナもアニメ的潜水艦の知識なんぞないだろうし、力業になるはず。なら、ファンタジーな技術も呼んでいたほうが対処しやすいだろう。


「一時間してもタケルが出て来ない場合は扉を焼き切る。用意しててくれ」


「畏まりました。では、タケル様の船を少し調べてもよいでしょうか? 金属が特殊なように見えますので」


 確かになんのアニメ的金属。知らないではどうしようもないか。


「わかった。落ちてる金属を使って焼き切れるか確かめてくれ。ダメなときようにオレも用意しておくからよ」


「はっ!」


 短く答えて作業に取りかかった。機敏だこと。


「ミタさん。タケルたちがいつ出て来てもイイように食事を頼む」


 これだけ壊されたら無限に食いそうだな。


「畏まりました。上で作らせます。ベー様も少し召し上がりますか? 顔色が余りよろしくないように見えますが?」


 そう? これと言って調子は悪くねーんだがな。でも、ミタさんがそう言うならなんか腹に入れておくか。


「なら、簡単なものを頼むわ」


「はい。おにぎりとけんちん汁を用意しますね」


「よろしく」


 その辺の、座るにちょうどイイところに腰を下ろした。


「タケルたち、無事だよね?」


「生きてはいる。が、心にはダメージを受けているかもな」


 死人は出なかったが、手も足も出ずに負けた。これは相当なショックだろう。


「でもまあ、考え方を変えたら望外の状況かもな」


「どう言うこと?」


 プリッつあんの疑問には答えず、万が一のときの道具を作り始めた。

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