第1024話 天高く馬肥ゆる
どうも、オレです。ヴィベルファクフィニーです。
誰や? とかマジで言われたらオレの物語、ここに終了させてもらいます。
だが、ああ、あのバカね。とか言われちゃったら俄然、はりきってオレの物語がネバーなエンディングにしちゃうよ。もうイイわと言わせちゃうんだから!
「ん~マン○ム」
今日もコーヒーが旨い。
「……なぜかしら? 今のベーを一言で表現したら停滞って言葉がよく似合うわ……」
炬燵の上で炬燵に当たるメルヘンさんが意味のわからないことを呟いてます。なんでしょうね?
まあ、よくわからんが、日に日に冬へと変わるバイブラストの山々、そして、色づいていく木々を眺めて詩人な心が目覚めちゃったんでしょう。ほっときましょう。
「ベー様。そろそろお昼ですが、なにか食べたいものはありますか?」
同じ炬燵に当たるミタさんが、パソコンを閉じて訊いて来た。
パソコンでなにをしているか、メッチャ気にはなるが、世の中には知らないほうがイイこともある。きっとネットゲームとかしてるんだと自分を偽っておこう、うん。
「鍋焼きうどん、甘辛で」
甘辛なんてあったか知らんが、今はそんな気分。ミタさんならなんとかしてくれんだろう。昨日は鱒鮨って言ったら出してくれたし。
「はい。甘辛ですね。畏まりました」
どうやら問題ないらしい。なら、よろしくお願いします。
炬燵から出ると、パソコンを脇に抱えてクルーザーのキッチンへと向かった。
ちなみに、ここはクルーザーの前甲板。四畳半の空間に畳を敷いて電気炬燵を置いてるのです。
炬燵のテーブルにアゴを乗せ、読書するプリッつあんをぼんやりと眺める。
メルヘンが読書とかチョーウケるんですけど! とか言ったら鼻で笑われたのも三日前。もうなんとも思わなくなったけど、なにをそんなに真剣に読んでるのよ? そんな眼鏡までしてさ。
「○ラスの仮面よ」
なにそれ? ガ○スの仮面って? なんかの古典劇か?
「アヤネがおもしろいからって貸してくれたのよ」
アヤネ? 誰や? メイドの誰かか?
まあ、なんでもイイわと座椅子の角度を変えて、天高く馬肥ゆるバイブラストの空を眺める。
「イイ天気だなぁ~」
こんなのんびりしたときを過ごすのは久しぶり……だよね? まあ、自分のペースで生きてるから忙せわしい日々……だわ! これってないくらい波乱万丈な日々だったよ!
あれを忙しくないと言ったらオレの人生どんだけ慌ただしいんだよ! いや、慌ただしいか? 慌ただしいよな? ん? あれ? え? どうなの?!
……なんか自分の人生がよくわかんなくなって来たわ……。
「まあ、今がよければイイか」
刹那的な生き方をしている頭のおかしいヤツっぽいセリフだが、弱肉強食なファンタジーな世界でスローライフをしようと思ったらまともな神経ではやってられない。
その日その時を楽しめ。今がよければすべてよし、だ。
「平和だね~」
「ベーの頭の中はね」
うっさいよ! 黙って読書してやがれ!
冷たい湖に投げ飛ばしてやろうかと手を伸ばすが、ひょいと炬燵から逃げ出しやがった。
ふふんと小馬鹿にしたような顔でクルーザーの後ろへと飛んでいってしまった。トイレか?
なんでもイイわと、また天高く馬肥ゆるバイブラストの空を眺める。
「こんなことならうちでのんびりしてればよかったぜ」
オレがなぜこんなにのんびりしてるかと言うと、婦人からこれ以上仕事を増やすなと怒られ、領都から閉め出されたんです。
なら、帰ろうとしたらブルー島の工事が始まるから落ち着けませんとミタさんに言われ、水輝館でのんびりすることにしたんです。
あと、帝都にも来るなと言われました。今、帝都は社交シーズンとかで、お前が来るとなにが起こるかわからんから、だとさ。
オレはトラブルメーカーかっての! 問題なんて起こした……こともあるけど、大体は巻き込まれだわ!
……まあ、おもしろければかかわるけどさ……。
「お待たせしました~」
と、お盆に鍋焼きうどんを乗せたミタさんがやって来た。
炬燵のテーブルに置かれた鍋焼きうどんは、オレの分だけ。プリッつあんのは?
「プリッシュ様は水輝館で食べるそうです」
まあ、好きにしたらイイさ。あのメルヘンもその日の気分で生きてるからな。
「んじゃ、いただきます」
ミタさん特製……かは知らんけど、甘辛鍋焼きうどんをいただいた。
うん。冬を感じながら食う鍋焼きうどんは旨いぜ!
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