第1004話 イイ感じぃ~
ミタさんを盾にしながらやっとココノ屋へと到着した。
「おー! なんか雰囲気のある場所だな!」
猫くんが町にありそうなゲームセンターを見て懐かしそうに声を上げた。
「クフフ。カイナーズホームにこんな場所があったのですね」
不気味ガールは……不気味に笑ってます。
「……ベー様。歩き難いのですが……」
盾にするミタさんが抗議の声を上げるが、あなたはオレのイージス。そんなこと言っちゃイヤン。
「クフフ。怯えるベー様も可愛いですね」
「アヤネ。ちょっと近づいてビビらせてやれよ」
なに言ってんじゃクソ猫がっ! ふざけたこと言ってっと長靴履かすぞ! いや、いつかやるけどよ!
「クフ。そうしたいですが、嫌われているので止めおきます」
そんな呪うような笑みを浮かばないでください。
「なに、お前、こいつ嫌ってんの? いい子じゃねーか。最悪だな!」
なんだろう。人と猫の視点が違うからか? 猫には不気味ガールがどう見えてんだ? 知らぬファンタジー理論が働いたからか?
「クフフ。マーローさんは優しいですね」
「ちょっと会話すればわかんだろう。なぜわからないあのアホがアホなだけだ」
枯れ井戸で見たらおっしっこちびりそうなガールと猫の和気藹々。もっとファンシーなもので心を満たしたいです……。
「ベー様。どうぞ」
と、ミレイさんがなぜか促して来た。
「ココノ様は気に入った方しか自分の領域に入れませんので」
そうなの? 白いコンシェルジュさんも入っていたじゃん。
「それはベー様が特別だからです」
オレ、特別なことした……記憶はあるな。駄菓子屋で五億円使ったの前世を含めてオレだけだろうよ。
まあ、よくわからんが、入れるなら入るし、ダメだって言うなら諦めるだけだ。
ココノ屋、と言うか、ゲームセンターに入った。なんの抵抗もなくな。
「お、中も渋いチョイスしてんな。テーブルテニスなんて初めて見たぜ」
「クフ。おもしろそうなのがいっぱいありますね」
振り返れば猫を抱えた不気味ガールとミタさん、ミレイさんが入って来た。
……ちなみに、ドレミといろははどこかにいますよ。ただ、オレの意識から外れてるだけですから……。
「あ、わたしもお忘れなく」
つーか、思い出させないでください。必要なときに呼びますから。
「ミレイさん。バケツある?」
「はい、こちらに」
五段重ねのバケツを差し出して来るミレイさん。わかってるぅ~。
一万円札を十円玉にしてもらい、両替機へと放り込んでコインへと両替する。
「なに気に手間だよな」
安いのはありがたいが、いちいち両替しなくちゃならんのがメンドクセーわ。ってか、入れるほうも手間じゃねーのかな?
いっぱいになったバケツを持ち、あとはミタさんに任せる。ちゃんとあなたの分も買うからそんな顔しないの。
ゲームセンターから駄菓子屋へと向かう。
「いらっしゃい」
座布団に座るばーさんタヌキ。暇してる?
「おう。買いに来た」
「好きなの買いな」
バケツをばーさんタヌキの前に置き、棚の駄菓子を無限鞄へと放り込む。
前と同じくまったく減らない駄菓子たち。ここは、手間がかかる場所だぜ。
飽きたので、レジの横にある箱椅子に座り、ラムネをいただく。ラムネうめ~。
「儲かってるかい?」
「今、儲けさせてもらってるよ」
うん、ですね。
ベビーカステラをツマミにラムネをゴクゴク。かー! 五臓六腑に染み渡るぜっ! って昔は照れもなくできたけど、今は風情を楽しむことができる今最高~!
「ベー様。両替しました」
「じゃあ、オレの代わりに買ってくれや。ミタさんの基準でイイからよ。あと、保存は任せるし、自分用も買いな」
「はい! お任せください!」
ハイ、メンドクセーことは君に任せます!
「ラムネ飲むとスイカ食いたくなるな」
「ああ。酒はいいね。特に甘い酒がいい」
「そう言えば今年、ルコの実食ってねーな」
「ここのは度の低いのが少ないからね」
無限鞄を漁り、瓶に入れたルコ酒を出し、一升瓶サイズまでデカくする。
「ほれ、甘い酒だ」
「すまないね」
器用に湯飲み茶碗に注ぎ、これまた器用に飲むばーさんタヌキ。この世界の猫と言いタヌキと言い器用なことできるよな。
「……あの会話でなぜ成立するんだ? この世界はバカばっかりなのか?」
「クフフ。さすがベー様です」
不気味ガールと猫がなんか言ってます。こっち来んな!
「あ、おれも駄菓子買っていいか? あいつらに土産にしたいからよ」
「わたしもお姉様にお土産買います」
好きにしてください。オレはのんびりするからよ。
「なんかここ、落ち着くよな」
「好きなだけいたらいいさ」
では、遠慮なく。はぁ~。イイ感じぃ~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます