第872話 合コンへゴー

 時間の流れとは無情なもので、楽しい時間ほど速く進んでしまう。


 ゆったりまったりしていても同じ。時間はあっと言う間に過ぎ、野郎どもが大量の蜂蜜を持って帰って来た。


「ご苦労さん」


 もっとゆくりして来いよ、と出て来る感情を押し殺し、女のために努力した野郎どもに労いの言葉を贈った。


「んじゃ、体をキレイにして一張羅を着てこい。汚い男は嫌われるからな」


 まあ、エルフは根っからのキレイ好きだから、こんなこと言わなくてもイイんだが、生きている以上、汗もかけば臭くもなる。ちょっと汚いからサッパリして来なさい。


 コーヒーを飲みながら待つこてしばし。身綺麗になった野郎どもが集まった。


「衣食住はオレが持つが、なにか持っていきたいものがあるなら取りに帰ってイイぞ」


 ドレミにカイナーズホームからバンガローをいくつか買いに行かせたので、なにも持って行かなくても不便はないだろうが、なじみのものがないと困るってこともあるだろうしな。


「武器は持っていっても構わんのか?」


「そうだな。これから行くところは大森林なところだ。狩りとかして男を見せるのもイイかもな」


 まあ、食料も大量にあるだろうが、狩人としての腕を見せるのもイイだろう。狩ったものはオレが美味しくいただければイイんだからよ。


「……狩りの腕か……よし!」


 と、一人の野郎が自分の中でなにかを導き出すと、部屋を飛び出していってしまった。なんだい、いったい?


「おれも!」


 と、次々と野郎どもが飛び出していった。リュケルトさん。説明プリーズだよ。


「弓を取りに行ったんだろう。お前が言ったように狩りの腕が男としての格を表すからな、ここは」


 そう言やそうだったな。


「エルフの男も大変だな。狩りの腕や家を作る腕とか必要なんだからよ」


 まあ、それはどの種族の男でも同じだけど、オレには無理だな。自分のためにしかガンバレねーし。


「そうだな」


 なにやら自嘲気味に笑うリュケルト。こいつは、そのどちらも持ってねーから笑うしかねーか。


「お前は、店をデカくすることで格を示せ。それが商人だ」


 種族としての能力は授からなかったが、種族にない能力は授かった。それはエルフに取っての希望であり、お前の武器。大いに活かしてデカくなれや。


「……その見透かしたような笑いは止めろ……」


 それは失礼と、コーヒーを飲んで笑いを引っ込めた。


 しばらくして弓矢一式を揃えた野郎どもが戻って来た。


「そう言や、この里のエルフが使う弓矢って独特だよな」


 まるで鳥を狩るような短弓を背負っている。カーチェが持つ弓は長弓なのに?


「うちの里は、矢のほうに力を入れてるからな」


 矢?


 不思議に思い、一人の野郎から矢を見せてもらう。


 一般的に見る矢とそれほどの違いはない……が、なんか不思議な力を感じるな。精霊術か?


「ああ。獲物に寄って術を変える。ものに寄っては竜の皮にも突き刺さるぜ」


 ほぉ~。竜にも、ね。そりゃまたスゲーこと。


「それも売り出せば売れると思うぜ」


 一般の冒険者なら喉から手が出るくらい欲しいものだろうよ。


「そうか? お前が作る矢のほうが凄いだろう。岩トカゲを貫くんだからよ」


 それは、A級冒険者だったカーチェ用。特別仕様だ。


「まあ、売る売らないリュケルトが決めたらイイさ。オレは冒険者相手の商売は止めたんでな」


 作るのは博士ドクター任せ。売るのはあんちゃん任せにしました。作るのも売るのも飽きたんでな。


「そんなことより、用意は整ったか?」


 その問いに野郎どもが「ああ」と頷いた。


「ドレミ。ミタさんに今からいくと伝えてくれ」


「はい。ミタレッティー様より畏まりましたとのことです」


 スマッグより便利なやっちゃ。もちろん、ミタさんもな。


 転移バッチでは人数オーバーなのでシュンパネを使用する。


「別荘へ」


 さて。合コンへゴーだ!

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