第581話 第三皇女様

 ハイ、捕縛終了デース!


「はい、ご苦労さま」


 プリッつあんが労いの言葉をくれたが、そこに感情はナシんぐ。


 あ、いや、まあ、村人に熱い戦闘を求められても困るが、そうあっさりと流されるのもなにか寂しいものがあります……。


「それで、どうするの?」


 さて、どうしましょう。なんとはなしにハルヤール将軍の関係者だろうものを助けてみたものの、まったくもってノープラン。


「まあ、いき先は港だろうし、まず港にいってからだな」


 ゼロワンを操り、巨大烏賊(っぽい生物)の前に出て、ついてこいとばかりに加速した。


 巨大烏賊(っぽい生物)は、地上で言うところの馬車であり、操って乗るものだ。


 一度、中は見せてもらったが、謎生物過ぎてよーわからんかった。まあ、人魚が操る。それだけ知っていれば問題ナシんぐ、だ。


 こちらの意味がわかったか、目的地が港だったのかは知らんが、巨大烏賊(っぽい生物)がゼロワンのあとをついて来た。


 人魚の生息地からは外れたところなので、一度、主要海道に出てから港に向かった。


「なにか、人通り? が多いね」


 海道とは言っているが、別に地上のような道がある訳じゃなく、人魚の魔法によって海流を創ってる……とかなんとかだった感じ? まあ、不思議ロードだよ、うん。


「人魚の町も発展してるようだな」


 オレの店だけじゃなく、あんちゃんも店を出したから商品が倍増。そのお陰で各地から人魚の商人が来ているらしい。


 商人だけじゃなく冒険者らしいのものまでいるな。もう辺境の町じゃなく交易路にある町並みだぜ。


 ゼロワンに驚く人魚たちに構わず海道を進み、町へと入る。


「あ、そー言や、この町の名前、聞いてねーや」


 気がついてビックリ。しただけで、どーでもイイわ。そのうち耳にすんだろう。


 なかなかに発展した町を見下ろしながら港へ進む。巨大烏賊(っぽい生物)も後をついてくる。


 領主館の前に横付けすると、馴染みの老兵士さんがやって来た。


「なんだ、ベーさまでしたか。なにかと思いましたよ」


「ワリ―な。ちょっと海の上を走ってたらアレと遭遇してな。アレ、ハルヤール将軍の関係者かい?」


「ん? あ、あれは!?」


 やって来る巨大烏賊(っぽい生物)を見て驚く老兵士さん。そして、領主館へと突入して行った。なんじゃらほい?


 巨大烏賊(っぽい生物)用の桟橋につけた。そこにあるのを知っているかのように。


 それが気になって見ていたら、巨大烏賊(っぽい生物)から、なんとも懐かしいヤツが出て来た。


「ヤルブ!」


 ハルヤール将軍の部下で右翼隊長のイケメン人魚だ。


「ベー!」


 一隊を仕切るだけはあり、なかなか力強い泳ぎで向かって来た。


 結界を纏っているから水の勢いに流されたりしねーが、結界に伝わる感じからして、また強くなったみてーだな。


「元気そうでなによりだ」


「ああ。お前もな」


 人魚の世界ではねー握手を交わし合った。


「そんで、今回はどーしたい? あんなので来るなんて」


 あの巨大烏賊(っぽい生物)の違いはよーわからんが、なんかアレ、高級感があるって言うか品があるって言うか、戦烏賊(?)とはなんか違う感じがする。


「ちょっとベーに頼みと言うか、お願いがあってな」


「ハルヤール将軍からのかい?」


 ヤルブの表情がちょっと曇った。


「なんかメンドクセー事情かい?」


 ヤルブは軍人だが、国に仕えた者。いろいろ柵があんだろう。


「ああ、貧乏クジを引いてな。はぁ~。あのとき出遅れてなければこんなことにならなかったのに……」


 そいつはご苦労さん。ガンバ!


「まあ、話だけなら聞くよ。なんだい?」


「……相変わらずしっかりしてるな。まあ、聞いてくれるだけマシか。好きに判断してくれ」


 さすが付き合いが長いだけにオレをわかっている。


「実は、お前に紹介したい方がいる」


 ヤルブの視線の先を追うと、巨大烏賊(っぽい生物)からキラキラなものが出て来た。


「帝国の第三皇女様だ」


「……あ、あれが……」


 ………………。


 …………。


 ……。


 うん。魚だネ。

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