第574話 帝国編か?

 その後、ヴィベルファクフィニーは幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。


 なんて人生(オレ物語)を終わらしたら非難轟々――じゃなかったらマジショック。もうちょっとお付き合いくださいませ。


 まあ、付き合う付き合わねーは、そっちの判断。オレはオレの人生(物語)を続けるまでだ。


「ベー。いる?」


 秘密の……でもねーが、部屋に作ったミニ造船所で飛空船を作っていると、プリッつあんが天窓に現れた。


 わたし、そう言うの興味ないんでと、別行動してるんですよ。まあ、近くにはいるみたいだから、こうして用があれば来るし、食事の時間には呼びにも来るのだ。


「いるよ。なんだい?」


 騒音防止のためにミニ造船所は壁で囲んでいるが、結界で会話できるようにはしてあるんですよ。


「お隣さんが話があるんだってさ」


「お隣さん? あんちゃんか?」


「うん。ここに通す?」


 ちょっと考え、本店で聞くことにした。


 本店完成から一週間、一度もいってない。たまには顔を出さねーと思ったからだ。


「リアム、ノノ。ちょっと出かけてくるな」


 ミニ造船所の端でなんか作っている二人に声をかけた。


 どちらも天才とは言え、まだ幼女。字も読めず計算もできねー二人には積み木を組んでるようなものだが、何事も小さなことからコツコツとだ。どうせこの二人はやればすぐにできちゃう子。やりたいと思うまでほっとけばイイさ。


 空飛ぶ結界を使い、ミニ造船所から出る。


 そのままデカくなろうとして止めた。そー言や、フライングカーの試乗もしてなかったっけ。


 二日前に完成させま空飛ぶ車だが、これは試作。形は車――スーパーカー型にして動力や操作は結界で動かすものだ。


 一応、ハンドルやアクセルで動かすようにして、ボタンで各種機能を動作させるようにしてある。


 今のサイズで作ったものなので、そのまま乗り込んだ。


「あ、わたしも」


 と、プリッつあんも体を小さくさせて乗り込んで来た。ちなみにドレミは分離体――ミニミニスライムを乗せて来ました。


「ほんじゃいくぞ」


 キーを差し、結界を起動させる。まあ、特に必要はないんだが、気分です。気分。


 ハンドルにつけたボタンを押して車体を浮かし、アクセルを踏む。


 クラッチレバーで浮遊石の強弱を操作し、開け放たれた窓から外へと出た。


 やってることは空飛ぶ結界と同じだが、形が違えば気分も違う。もう、前世で観た空飛ぶ車型タイムマシーンである。


「うん。デ――はアウトだから、無難にゼロワンにするか」


 試作車だし、形近いのを三台作った。そんなもんでイイだろう。


 ゼロワンを運転……操作になるのか、これは? いやまあ、形から入る男なら運転がイイ。ハイ、フライングカーは運転に決定です。


 脳内ジュークボックスからロックなナンバーを選び、本店へと向かった。


 ゼルフィング商会本店は、いつでもオープンなのでそのまま入り、三階にある統括会頭室へと向かった。


 まだ商会の形作りをしている段階なので、従業員の出入りも少なく、三階にあがるまで誰にも会わなかった。


 プップー! と、カイナーズホームで買ったクラクションを鳴らした。


 しばらくして統括会頭室のドアが開き、婦人の秘書……なんってたっけ、この元侍女さん? まあ、秘書さんでイイや。


 ビックリする秘書さんに構わず部屋へと入り、テーブルの上に駐車した。


 ゼロワンから降りて体をデカくする。


「で、なんだい、あんちゃん?」


「どんでもねー現れ方して、さも当然とばかりに話し始めんなや」


「オレのやることだ、気にすんな」


 どうせオレだからと流すんだから、どーでもイイだろうが。


「ひ、開き直りやがって。まあ、いい。事実、お前はなんでもありなんだからよ」


 それでこそあんちゃん。オレが認めただけはあるぜ。


「で、なによ。あ、お茶はいらねーよ」


 婦人が立ち上がろうてするのを止め、収納鞄からスペシャルブレンドコーヒーが入ったポットを取り出し、あんちゃんの前にあったカップに注いでやり、オレは愛用のカップを出して注いだ。


 婦人は紅茶派なので、同じ紅茶派のプリッつあんにお任せします。


「……前とは違うコーヒーだな?」


 あんちゃんも違いがわかる男。薫りだけですぐにわかったようだ。


「ああ。オレの新たなお気に入りだ。特別飲ましてやるよ」


 前世では一杯七百円もしたもの。違いがわかるヤツにしか飲ませねーぜ。


「……旨い……」


 ふふ。そうだろうそうだろう。まあ、もう一杯飲めや。


「いや、コーヒーを飲みに来たんじゃねーよ。ベー。クレインの町まで道を造ってくれ」


 なんで? 定期的にいけるように飛空船を用意したじゃねーかよ。


「一回の乗船で一人銅貨三枚が破格なのはわかるが、一日三往復じゃ輸送が追いつかねーし、手間がかかり過ぎる。なによりお前の独占じゃ他の商売が成り立たねーよ」


「じゃあ、他の商会で金を出し合って道を造れよ」


「簡単に言うなよ。クレインの町から近場の街道に通すまで山や川があるんだぞ」


「だからオレに造れか? それじゃ飛空船と同じだろうが。通行料とるぞ」


 独占がダメって言うなら、ギルド主導でやれよ。ゼルフィング商会もギルドが決めたなら従うし、金も出すからよ。


「そこら辺はギルドに任せる。婦人。頼むよ」


「はい。お任せください」


 できる婦人がいてくれて助かるよ。


「まあ、道ができるまでは時間もかかるだろうし、それまでは飛空船で我慢しろ。それか、ギルドで飛空船を共同購入して便を増やせ。相談にはのるが自分たちでも考えろ。もうしばらくしたらオレは帝国にいく。なんで、港やクレインの町のことはギルドや町で決めろ。防衛は王ではねー王にやらせるからよ」


 どちらかと言えば、オレは防衛の方担当だし、ゼルフィング商会はそのために設立したもの。いや、六割くらいは、だけど。


「わかったよ。こっちでなんとかするよ」


「おう。なんとかガンバれ」


 オレはオレの仕事をガンバるんでよ。んじゃな。

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