第442話 梅酒
まずは、ここに来た目的を果たすとするか。
と、思ったが、カイナーズホーム、メチャメチャ広くてなにがどこにあるかわかんねーよと、入り口まで戻って案内板を見る。
「つーか、二階もあんのかよ、ここ。どんだけ客を呼ぼうとしてんだよ!」
いや、それ以前に客こねーだろうが。なに考えてんだ、カイナのヤツは?
なんてことはカイナに任すとして、目的を果たさんとな。
んーと。スケール(メジャー)は工具売り場で定規は文房具売り場だし、ここから近いのは……工具売り場か。つっても結構離れてんな。八十メートルくらいあんじゃねーか?
なんか相当歩きそうな予感がしたので、カートを引っ張り出して工具売り場へと向かった。
「……世界一の品揃えはイイがよ、なにも売れないもの置かなくてもイイだろうに……」
洗顔だけで何百種類あんだよ。あ、サプルのために買ってくか。オシャレじゃねーが、綺麗好きだから風呂は長いのだ。
「って、なにがイイかわかんねーな」
体質とかあるし、変なのは選べんし、好みもある。わからんから日本製の高いやつでイイや。あ、そー言や、ベビー用のシャンプーとか肌に優しいって聞いたことある。無難にベビー用を買ってくか。合わなきゃ他に回せばイイんだしな。
「って言うか、サプルに買いに来させればイイのか」
スーパー幼女は見る目もある。オレより買い物上手だろう。
シャンプーを戻して工具売り場へと直行。洗顔コーナーと同じくスケール(メジャー)が何百種類とあった。
「
いったいなにを計測するんだかわからんが、まあ、あるってことは使われているってこと。念のため、各種買っていくか。
他にもレーザー系の測定器をカゴに入れ、使うかどうかわからんが、革手袋やマスクなども入れていったらカゴがいっぱいになってしまった。
「しゃーねー。まずはこれだけにしておくか」
いっぱいになったカートをレジ前にまで押して行き、また新たなカートを持って文房具売り場へと向かった。
「あの二人、筆記用具とか持ってる様子がねーし、ノートやエンピツとか買っていくか」
適当に選んでカゴに入れて行き、いっぱいになったらレジ前へと持っていった。
「お、リテンちゃん。イイのあったかい?」
レジ前にリテンちゃんがいたので声をかけた。迷子か?
「はい。いろいろあり過ぎて迷います」
と、カゴの中身を見せてくれた。
「……水?」
五百ミリリットルのペットボトルがいっぱい入っていた。
「はい。水は貴重ですから!」
多分、水が貴重なところで育ったんだろうと自分を納得させる。
これからここを利用するんだし、初買い物にケチをつけるのもヤボ。この笑顔を守りましょうだ。
「そうかい。なら、いっぱい買ってけ。オレの力……じゃねーけど、小さくできるから何百本と持っていけるからよ。遠慮せず、もっと持ってこい」
リテンちゃんの顔がぱーと輝き、ハイ! と返事して水が売ってるだろう場所へと駆けていった。
「ふふ。オレも買い物の続きをするか」
あとはペンキやビニールシートが欲しいが、農作業売り場は、レジから百メートルも先だし、時間もある。まずは食料品売り場から見ていくとするかね。
「食料品もいっぱいあんな~」
前世じゃ仕事柄ホームセンターにはよく行ってたから食料品が置いてても驚きはねー。だが、生鮮食料とかもはやホームセンターの域を飛び抜けちゃってるよ!
「ん? バリア?」
この近辺で栽培される葉野菜で、よく鍋に入れられるものである。が、なんでと周りをよく見たら、野菜や魚はこの世界のものだった。
「……カイナの経営方針、よーわからんな……」
野菜や魚は売るほどあるので、それ以上気にせず他に移動した。
「うん? 米じゃんか。それも前世のコシヒカリが」
適当に見て回っていたら米の売り場に出た。
「……米か……」
いずれ東の大陸に買いに行こうと思ってたし、オレはそんなに米に思い入れはなかったのに、あるとなると食いたくなるから不思議だ。
「幾つか買ってくか」
久しぶりに卵かけご飯が食いたくなった。それに、タケルも喜ぶだろう。米が食いたいと何度も言ってたしな。
十キロを二つ、カートに載せた。まあ、足りなくなったらまた買いに来ればイイさ。
また適当にブラブラしてると、酒売り場に出た。
「酒はいらねーな」
収納鞄にはカイナが出した酒が入ってる。これ以上はいらねーよと通り過ぎようとして、体が勝手にストップ。いや、あるものを捉えた目が体を停止させたのだ。
「……梅酒、か……」
まあ、年齢的に飲めねーし、前世がゲコだったから酒なんて飲もうとは思わねーが、だからと言って酒が飲めねー体質ではない。旨いとは感じねーが、軽いものちょっとは飲める。
前世でも、どうしても付き合いで飲まなくちゃならんときは、辛うじて飲めた梅酒を飲んでいた。
「……梅酒ならいけるか……」
梅自体は大好きだし、今生の体なら大丈夫だろう。飲んでも一杯だけだしな。
アルコール度数の低いのを選び、梅酒を一本、カゴに入れた。
「まあ、自己満足だがな」
誰に言いわけするでもなく、いっぱいになったカートを押してレジ前に向かった。
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