第383話 おやすみなさい

 せっかく保養地にきたので、今日はここに泊まることにした。


 キャンピングカーをサリネに渡したのでカイナもここに泊まるようだ。


「これが世に言うパジャマパーティーか」


 パジャマ姿のカイナを見て、ふっとそんなことを思った。


「なに、突然? と言うか、違うから! 止めてよ、そう言うの!」


 なにやらご立腹なカイナさん。なに怒ってんだ?


「でも、パジャマでパーティーってなにすんだ?」


 パジャマパーティーっては、よく耳にしたが、それがなんなのかはよー知らん。中身おっちゃんにはハイカラすぎる。


「男は知らなくていいよ。あれは、女の子同士がするもの。男は知らない方が平和だよ」


 そーなんだ。まあ、ガールズトークは聞くもんじゃねーしな。


「よし。こんなもんかな」


 昔とった杵柄と言うのか、それとも才能なのか、十畳くらいの部屋がイイ感じに仕上がった。


 低反発マットのベッドに質のイイ掛け布団。マクラもフカフカと、前世の技術の粋を集めたかのように豪奢である。


「お、気持ちイイな、これ」


 うちの結界ベッドもイイが、この低反発マットはさらに心地好かった。技術、スゲーな。


 キングサイズのベッドなので、ゴロゴロとベッドの上を転がって遊んでみた。


「子どもか!」


「子どもで~す!」


 更にゴロゴロを速度をあげて転がり、そして、ベッドから落ちてしまった。アハハ、超たのしぃーっ!


「うん、飽きた」


「飽きるの早っ!」


 ハイ、子どもですから。


 ベッドへと這い上がり、大の字で寝る。うん。気持ちイイ。


「もう寝る?」


「いや、まだ寝ない。カイナ、なんか話して」


 オレくらいのマクラを抱き締め、カイナにお話をねだった。


「……可愛く言ってもあざといものはあざといからね……」


 ちっ。スレた大人め。


「舌打ちしない。まあ、いいよ。なにか飲む?」


「温めた羊乳」


 オレの寝る前の習慣。なんだが、持ってくるの忘れてたわ。


「牛乳でいい? うちのところ牛乳なんだよね」


「なんでもイイよ。牛乳も好きだから」


 乳牛ではないが、うちの村にも牛はいるし、いくらか乳を出して物々交換してたりもする。何度か飲んだが、まあまあの味だったぜ。


 いつものようにどこからか出した温めた牛乳を出してくれた。


「……薄いな……」


 風呂のあとの冷えた一杯ならちょうどイイが、寝る前の温めた牛乳としては薄すぎる。


「そりゃ、あんなドロっとした羊乳を飲んでたらね。これでも濃いほうなんだよ」


 そーなんだ。飲み慣れて当たり前になってたよ。


 まあ、不味くはねーし、これはこれで乙なもの。最後の一滴までごちそうさまでした。


「じゃあ、話ぷりーず」


「ハイハイ。わかりました。って、なにを話そうか?」


「カイナがこの世界にきたときのことでも旅をしてたときの話でもなんでもイイよ。どれでも聞きたい」


「この聞きたがりめ」


 おう。オレは聞きたがりっ子だぜい。


「じゃあ、神に呼ばれたところから」


 と、カイナ物語が始まった。




 ──ノォォォォォォォン!




 なにか、どこかで血を吐くような叫びが聞こえたよーな気がしたが、まあ、気のせいだろう。


 はぁ~。今日はたくさんの話を聞けた。イイ夢見れそうだ。


 今日も無事、生きられたことに感謝を。んじゃ、イイ睡眠を。おやすみなさい。

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