第380話 カレー超うめー!
「第一回、世界貿易ギルド会議の始まり始まり~!」
ドンドンパフパフー! なんてお囃子があるわけもなく、三人から冷めた目を向けられた。
場を和やかにするためにやったのだが、どうやら不評のよーだ。失敗失敗。
「つーことで、ギルド長、誰にする?」
次の策など用意してねーので、単刀直入に進めることにした。
「いや、いきなりなんだよ。食事じゃなかったのかよ?」
シーサイドテラスに用意された、なにも乗ってないテーブルにつくあんちゃんが声をあげた。
「いや、そうしようと思ったんだがな、チャンターさんとアダガさんの好みを聞くのを忘れてることに気がついたんだわ。まあ、チャンターさんは、この国の料理でも大丈夫だろうが、食えないのがあったらワリーしな。アダガさんは、なにがイイんだかワリーんだか想像もできんわ」
さすがに魔族の食事情までは伝わってきてねー。いったいなに食ってんだ?
「あー、確かに種族民族によって食えるものや食えないものがあるな。うちでも牛は食わないな。農作の神の乗り物として神聖視されてるからな」
「へー。そんなのがあんだ。うちの国じゃ、そんなのねーな。食えるものは食う、って感じかな」
あんちゃんの言う通り、忌避されてるものはねーし、魔物でも食う民族だろう、この辺のヤツらはよ。
「まあ、飛竜だろうと海竜だろうと、食えるようにするのはこいつんちだけだがな」
食えるものに差別はしねー主義なだけだ。
「そんで、アダガさんとこの食事情を教えてくんねーか? 例えば薄味が好きだとか濃い味のものしか食えねーとかよ」
「そうですね。魔族と言ってもいろいろ種族がありますから、これと言う味はありませんね。カイナ様が用意してくださる料理はだいたい食べれます。ですが、我々の種族は辛いものが好きな種族と見られてますかね? それほどとは思わないのですがね?」
まあ、香辛料が採れるところらしいから、インドとかタイとか、そんな気候のところなんだろう。
「辛いもの、か~」
オレも辛いものは好きな方だから、辛味にそれほど抵抗はねーが、サプルやトータが好きじゃねーので滅多には食卓には上がらない。なもんで、アダガさんの舌に合うものはないのだ。
「──そんなこともあろうかと、カレー作ってきたよ~」
と、エプロン姿のカイナが忽然と現れた。なにやら右手にどう鍋を。左手には炊飯器を持って。
「いきなりだな、おい」
ビックリはしたものの、この保養地──いや、世界貿易ギルドセンターにも結界は張ってあるのでくるのは感知できた。が、一瞬で破られてしまったので、心の準備をする暇もなかったわ。
あんちゃんとチャンターさんは、さすがにびっくらこいてるが、アダガさんは慣れているのか、困ったお方だと苦笑していた。
「にしても、カイナ、料理できたんだ」
「言ったろう。元宿屋の主で裏方やってたって。料理だってお手のものさ」
確かに、匂いだけで旨そうなカレーだとわかるぜ。
「んじゃ、肉でイイか」
カレーだけってのも食卓に華がねーしな。
「外はパリパリ。中はジューシーの飛竜の唐揚げだ。あと、野菜も食えよ」
と、夏野菜をつけ足した。
「辛い人がダメな人用に甘いのもあるから」
「あ、おれ、甘いのをもらうよ。辛いの、ちょっと苦手なんで」
チャンターさんは甘いもので、他は辛いものを注文し、手際よくご飯を盛ってカレーをかけて行く。
……カイナんちは、ご飯の上にかける派か……。
うちは、脇盛り派だが、そんなに絶対主義者じゃねーので、ありがたく受け取った。
全員にカレーが配られ、カイナも席に着いた。
「んじゃ、カイナに感謝して、いただきます!」
皆がこちらを向いたので、つい、音頭をとってしまったが、皆に否はなかったようで、『いただきます』と応えた。
「お、旨いじゃん」
「うん、旨いな、このカレーってものは」
「カレーもそうだが、このバモットも旨いな。バムチャー産以上だぜ」
「やはり、カイナ様のカレーは最高ですね」
「お褒めにあずかりありがとうございます」
なんて冗談に応える暇なくカレーをかっ食らう。カレーうめー!
「──あ、ギルド長、誰にする?」
「アバールで良いだろう。おれは、国に帰らないとならんし」
「わたしも香辛料を運ばないとならないので、アバールにやってもらえると助かります」
「んじゃ、初代世界貿易ギルド長は、あんちゃんに決定な」
「い、いや、おれにギルド長とか無理だわ!」
「アバールに賛成な人、挙手!」
賛成と、全員のスプーンが上がった。
「ハイ、初代世界貿易ギルド長は、アバールに決定! では、カレー、お代わりです!」
「あ、おれも!」
「わたしもお願いします」
カレー超うめー!
あと、あんちゃんの異論、どーでもイイ。
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