第374話 ジェネレーションギャップ
メロンソーダ、ウメー!
って、なんか思わず注文して飲んだけど、時代設定やら世界設定がメチャクチャだよな。オレ、なに世界にいんだよ。
「べつにお前が文化を広めたらイイんじゃんかよ」
前世の世界からいろんなもの出せんだから、なにもこんなド田舎から文化を買う必要もねーんじゃね? つーか、もう前世の文化に染められてんじゃん。
ここで働いてるヤツら、もう完全にホテルの従業員だよ。見た目的にはあれだけどよ。
「ん~。そう思っていろいろやってみたんだけどさ、オレ、ここにきたのが十六でさ、趣味はサバゲーだけだったから、そんなに文化に詳しくないんだよね。このホテルもなんとなくだしさ」
「オレだって、そんな趣味が多い方じゃなかったぞ。どっちかと言ったら仕事以外引きこもりだったしな」
休みの日は、万年炬燵にこもってメシも食わず一日中テレビを見ていた。特に職人特集が好きだったな。その知識が今に役に立ってんだから、人生ってのはよくできてるよ。
「いや、ベーの周り文化の宝庫だよ。しかも、自重してないし」
「そうか? 概観をそこなわねーようにはしてたんだがな」
「うん。陰では自重してないけどね」
カイナの突っ込み、マジ容赦ねー。
「まあ、急激な文化革命は歪みを生むしね……」
なんかやらかしたのだろう、オレから視線を外した。
「まあ、なんでもイイさ。で、アダガさんよ。これから会合があるんだが、時間は大丈夫かい?」
自分で言ったように好奇心の塊のようで、すっごく目を輝かせてオレたちの会話を聞いていた。この人も結構、飛び抜けた性格してんよな……。
「もちろん。どこまでも着いていきますとも!」
この人、本当に大丈夫なんだろうなと、カイナに目で問うと、なんかムカつくくらいのイイ笑顔をしやがった。
「……お前、なんか吹き込んだだろう……?」
しかも、とんでもないことを。
「大丈夫大丈夫。ベーなら受け入れられる領域だから」
なんだよ、領域って。不安しか出てこねーセリフだな!
「そんな顔しないでよ。アダガは、オモチャ好きで、とくにベーゴマとかメンコとか、古い遊びが好きなんだよ」
「……お前、オレをどんだけ古い年代で見てんだよ。ベーゴマもメンコも……やったことはあるが、ファ〇コン世代だよ!」
「……すみません。おれ、プ〇ステⅢ世代なんでファミ〇ンとメンコの差がよくわかんないです」
「なに、そのジェネレーションギャップ!」
この世界もよくわからん進化をしてるが、前世の進化も負けてねーな。クロマニヨン人もびっくりだよ!
「アハハ。冗談だよ。さすがにファ〇コンくらい知ってるよ。まあ、見たことはないけどさ」
……こ、この平成生まれのジェネレーション魔王が……!
「ったく。お前の冗談、タチワリーぞ」
お前、絶対にドSだろう。エグり方が容赦ねーよ。
「そう? でも、ベーの反応、なんか好き」
「お前、シメたろか?」
「アハハ! それこそ冗談だよ! あ、おれ、用事あったんだ。んじゃ、アダガをよろしくぅ~」
と、またも電光石火で逃げていくジェネレーション魔王。絶対にシメたる。
「すみません。カイナ様、ああ言うお方なのもので」
どうとは言わねーその性格。よくオレを大概だねと言えるな。お前の方が大概じゃねーかよ!
「……はぁ~。まあ、イイさ。アダガさんは、オモチャ屋をやりてーっことなのか?」
「オモチャ屋と言いますか、人の遊びに興味があるのです。ベーゴマやメンコもそうですが、チェスとかも大好きです。まあ、下手の横好きですが」
「チェス、か。そー言や、前に作ったっけな」
以前、チェスやら将棋やらを作ったが、ド田舎には高度な遊びらしく、誰もハマらなかった。リバーシでもだ。
やる相手が少ねーから封印してたが、どれも収納鞄には入ってる。
「なら、ちょっと遊ぶか? オレもそんなに上手くはねーが、チェスは好きなんだよ」
大老がいたときは一日中やってたくらいだ。
「いいですね。チェスをやる者が少なくてやりたかったんです!」
ならと、自慢のチェスを収納鞄から取り出した。
「……クリスタルとは豪華ですね……」
「まーな。オレの自信作だ」
いろんなので作ったが、やはりこれが一番オレの手にしっくりくるんだよな。
「気に入らねーなら木製のもあるが、変えるか?」
別にしっくりくるかしっくりこないかだけで、強さにはまったく関係ねー。
「いえ、これでお願いします」
「おし。では、勝負だ!」
久しぶりの一局に、オレの右手が燃え出した。
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