第352話 旅立ち
──陰謀か!?
なんて言うイベントが二度も用意されてるわけもなく、すんなり我が家へと帰ってきた。
帰って来たのだが、なんか邪魔なもんが庭にあるんだが?
「タケルか?」
あ、いや、タケルのジェット機ではねーか。アレ、水の上に降りられる垂直離着機、とかなんとか言ってたし、カラーリング青だし。
「エリナのか?」
あんまりジェット機にもロマンを感じねーので種類なんてわかんねーが、色の判別くらいは出来る……と信じたい。
「まったく、迷惑な」
ファニー号を飛び出すために山部落全体に結界を張り、音や物、風などを遮断する仕掛けをしてるので近所迷惑にはなってねーとは思うが、我が家に迷惑でしかたがねーな。
「と言うか、ジェット機にくっついてるメルヘンはなんなんだ?」
まるで亀虫がごとくジェット機にくっついてる数……名のメルヘンさん。なにしてんの?
超気になったので尋ねようとしたら、反対側に誰かいることに気がついた。
どちらさん? と、回って見ると、ねーちゃんたちだった。
「ねーちゃんたち、なにしてんだ?」
帰ってくるの早いな。今日はもう終わりか?
「いや、帰ってきたら見慣れないものがいっぱいあったから……」
「君んちはいったいなんなの?」
「朝なかったのに夕方には家が出来てたり、こんな変なのあったり、どんな摩訶不思議な村なのさ?」
「いくらベーでもやりすぎよ」
なんかオレが原因になってるが、オレ、関係ねーよ。いや、ドワーフのおっちゃんの家は創ったけど、他のオレじゃねーじゃん。
とかなんとか言ったところで理解してくれる訳もないんで、肩を竦めて見せた。
「勝手に言ってくれ」
今日はねーちゃんたち付き合う元気もねーんでな。もうオレが原因でイイよ。メンドクセーわ。
そのまま行こうとしたら騎士系ねーちゃんに呼び止められた。なんなん?
「わたしたち、明日出ることにしたわ」
出る? ──あ、ああ、はいはい。冒険に出るっことね。なんのことかと思ったよ。
すっかり忘れてたが、ねーちゃんたち冒険者で渡りだったっけな。長いことうちにいたからうちの子になってたわ。
「ってことは護衛の仕事でもあったのかい?」
「ええ。マームルさんに護衛の依頼を受けてね、カムラにいくことにしたの」
マーブル? チョコレートがどうし……あ、ああ! マームルじいさんね。ハイハイ。まったくなんで突然チョコレートが出てくるんだと思ったわ──ってのはマームルじいさんには秘密ね☆
「そうか。仕事見つかって良かったな。なんか準備あるなら夕食後にきな。ねーちゃんたちには世話になったから餞別代わりに物資をやるぞ」
いろいろ迷惑掛けたし、サプルやトータが世話になった。オレもアリテラからは貴重なものをもらったり、おもしろい話をたくさん聞かせてもらった。命の湯の代金以上にもらったしな。
「ありがとう。なら遠慮なくいただくわ」
「うん。収納鞄があるし、料理はたくさんもらって行きたいしね」
「そうね。今度いつこれるかわからないしね」
アハハ。さすが冒険者。遠慮がねー。
「おう。入るだけ持ってけ。棚が減って助かるわ」
まだまだ我が家の保存庫には食糧が詰まっている。収納鞄四つくらいではびくともしねーわ。
「んじゃ、今日はゆっくり風呂入って、旨いもん食いな」
「いや、ここ最近、毎日それだよ」
「フフ。そうね。もう当たり前になり過ぎて明日からの旅が不安になるわね」
「まあ、出たら出たでなんとかなるのが冒険者。我ながらたくましいもんよね」
確かに。このくらいで堕落するようなら冒険者失格。長生き出来んだろうて。やっぱ、ねーちゃんたちは実力派の冒険者なんだな。
「まあ、その日を生きるのが冒険者。ほら、酒だ。今日生きた自分たちに乾杯しな」
収納鞄から酒樽(小)を四つ出してねーちゃんたちに渡した。
「ありがとう。これも遠慮なくいただくわ」
「おう。んじゃな」
「──あ、ベー!」
行こうとしたらアリテラが叫んだ。どーしたん?
「あ、ううん。なんでもない……」
なんでもない顔ではないが、それをわからぬほどアホではない。
「夜、最後の話を聞かせてくれるか?」
その問いにアリテラは笑顔を見せ頷いた。
「任せて! とっておきの話を聞かせてあげるわ」
おうと返事して家へと向かった。
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