第111話 材料調達
村長宅から出て広場に戻ると、女衆の熱気で夏のように暑くなっていた。
……このエネルギーをなにかに利用できたらイイんだがな……。
女の買い物には近付くなを前世で学んだオレとしてはあの中に入りたくねーが、サリバリやトアラに黙って帰るとあとでうるせーからな、一言言っておかねーとならんのよ。
「サリバリ、オレは帰るがどうする?」
「先に帰ってて」
服に夢中でこちらを見ないが、下手に付き合わされるよりは何倍もマシなので、さっさと退避する。
「トアラ、先帰るな」
もはや布しか見えてないらしく、オレの声にも反応しない。なんで、横にいるおばちゃんに伝言を頼んでさっさと逃げ出した。
ほんと、買い物時の女はコエーわ。
そのまま薪置き場に行こうとしたが、集落にきてオババに顔を見せねーのも薄情だと、薬所に向かった。
「オババ、生きてるか~?」
「生きとるよ」
奥の工房からニーブではなくオババの声が返ってきた。
疑問に思いながら工房に行くと、オババが一人で薬草を煎じていた。
「オババ一人か?」
「ああ。ニーブなら広場にいっとるよ」
いたんか。全然気がつかんかったよ。影薄っいな、ニーブ。いやまあ、濃いヤツ(女に多いな)がいっぱいいっからな、どうしても凡人は隠れっちまうんだがな……。
「お前も買い物かい?」
「んや、村長に話があってな。その帰りだ」
「そうかい。お前には苦労かけるのぉ」
そんなオババに苦笑する。さすが年の功。頭が下がるよ。
「今度、ジャックのおっちゃんのトコにいくが、なんか必要なもんあるか?」
バリアルの街は、交易の街。いろんなトコからいろんなもんが集まるのだ。
「それならコジの実とコノハ鳥の乾胆、ザンバラ草、碧草、白長花、あと、白樺の皮を頼むよ」
まあ、ド田舎の薬師が扱うようなもんじゃねー(高級な意味で)が、弟子が十人もいるオババならではだ。
「わかった。こっちから売るもんはあっか?」
薬師もいろいろ金が掛かんだよ。今言われたもんを買うには、な。
「じゃあ、回復薬を頼むよ」
いろいろ薬はあるが、やはり回復薬が一番金になるし、交易都市には隊商やら冒険者やらが集まるから回復薬の需要が多いんだよ。
「わかった。んじゃ、持ってくかんな」
勝手知ったる通った工房。どこになにがあるかは熟知している。
棚から回復薬が入った箱(結界を施してあるから腐りはしないのだ)を取り出し、近くにあった背負い籠に詰めていく。そのためのもんだから遠慮はいらぬです。
「んじゃ、またくんな」
「ああ、待っとるよ」
オババんとこを後にし、シバダたちに駄賃を渡して我が家へと帰った。
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