第73話 一番の奇想天外はオレ
「……まったく、ファンタジーは奇想天外に溢れてんな……」
まあ、一番の奇想天外はオレだろうけどよ。
強者の余裕か、たんなる脳筋なだけなのかはわからんが、こちらが立ち直るまでニヤニヤしてオレを眺めていた。
「……べ、ベー……」
驚愕するバジルのおっちゃんらに安心させるために不敵に笑って見せた。
「大丈夫だよ。魔術防御してっからな」
いや、なにもしてないんだが、五トンのものを持っても平気な体ってのは丈夫にできてる。
打撃なら五トンのパンチを受けても痛みはない。だが、受けた感覚はちゃんとある。ほんと、この体、超不思議だぜ。
まあ、そんなことはどうでもイイ。魔力感知できなかったってことは、力自慢のオーガってことか。
オーガも人型種なので魔力は、一応、ある(少ないが)。だからなんとか魔力を感知できるのに、こいつからは一切魔力を感じねー。っつっても、見えたら関係なくなるがな。
「バジルのおっちゃん。ここはオレに任せて逃げな」
あ、なんか死亡フラグみたい。
「……だ、だが……」
「おっちゃんらがいても役には立たねーよ。それより冒険者ギルドに報告してくれ。それと、さっき言ったC級の冒険者パーティーがいるはずだから応援よろしくと伝えてくれや」
「ハハ! カッコイイことほざくガキじゃねーか。イイぜ、逃がしてやるよ」
こいつ、脳筋バカで決定だな。
「お、そりゃワリーな。助かるぜ」
ほんと、敵がバカでなによりだ。
「ほら、おっちゃんら、いきなって。いたって邪魔にしかならねーんだからよ」
まずおっちゃんらでは殺されるのがオチだし、守りながらこいつを相手するなんてメンドーだ。オレはただの村人なんだ、戦闘センスはレベル三くらいしかねーだよ。まあ、殺戮センスならレベル五十三くらいはあるがな。
渋々だが、おっちゃんらが立ち去ってくれた。
「あんまり期待はしてねーが、なにしにきたか聞いてもイイかい?」
「お前を見にきたんだよ」
「オレを? 人間のガキがそんなに珍しいのかい?」
オレからしたらテメーのほうが珍妙に見えるわ。
「ああ。ただの人間のガキがリックスを倒すんだ、見なくちゃ損だろう」
なんつうか、脳筋バカのクセに流暢に人の言葉をしゃべるな。これも進化の為せる業か?
「これも期待はしてねーが、テメーの頭はどこにいる?」
その質問にこめかみがピクリと動いた。
言葉だけじゃなく、表情も無駄に進化してやがるぜ。
「……お前、どこまで知っている………」
余裕かましていた美丈夫なオーガの表情が一気に険しくなる。ほんと、バカで助かるよ。
ズボンの左ポケットに仕舞っていた片割れの結界を取りし、口に近づける。
「開けゴマ」
これの片割れの結界が発動。オレが持つ結界と空間連結した。
「聞いてるかい、イケメンなゴブリンの親分。そのうちそっちにお邪魔するから茶と菓子を用意して待ってな。それと、そのイケメンなゴブリンの首に付いてるやつな、下手に触ると大変なことが起こるから注意しろ。んじゃな」
言って空間連結を切った。
「ってとこまでかな?」
たぶん、激怒している美丈夫なオーガにニッコリ笑ってやった。
「……き、貴様……っ!」
「アハハ! いっちょまえに怒んのかい。怒れるように進化するより己の無知を恥じ入ることができるように進化しやがれ。だからテメーらは魔物にしかなれねーんだよ」
愚かなりにもちょっとずつ成長できる人間様に勝てると思うな。美丈夫なオーガさんよ!
「殺すっ!」
大地を凹ませながら突進してきた。
はん! そんな突進、一角猪で見飽きてんだよ。
美丈夫なオーガの大振りのパンチを片手で受け止める。うん。普通の人間ならミンチだな。
「イイパンチだ。世界を狙えるぜ」
なんのだよ? との突っ込みはノーサンキュー。たんにネタをやりたかっただけだ。
「……バ、バケモノが……」
「ああ。そうさ。バケモノさ。そんなバケモノに向かってきたんだ、タダで帰れるとは思うなよ」
バケモノ上等。ゲス野郎よりはマシだ。
「あ、そうだ。もう一つ聞きたかったんだ。オーガでも悪夢は見んのかい?」
ゲス野郎の目を見ながらニヤリと笑う。
魔力がねーのは少々厄介だが、肉弾戦でくるなら問題ナッシング。血のションベン流さしてやるよ。
「………」
美丈夫なオーガの顔色が青くなる。赤なのに。ぷぷっ。
「さて。ここからはR18のお時間だが、なに、心配すんな。殺しはしねーよ。ただ次回、残酷な描写になるので気の弱い人はご注意だ」
誰に言ってんの? との突っ込みはノーサンキュー。いろいろあんだよ、この世には。
「さあ、始めるか。我が鉄〇28号よ……」
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