第51話、帰還、そして再会

 みにょーん。

 ぎゅっ。


 本日の魔道具作りが終わると同時に抱きついてきたブルー。

 甘えるようにすりすりと頬擦りしてきた。


「なかなか構ってやれなくて悪いな、ブルー」


 スライム特有の感触を楽しみながら撫でる。


 今日も今日とて魔道具制作。

 商業ギルドに登録してある温熱魔導クッションとドラゴン温卓と拡張収納箱の3つを中心に作っている。


 温熱魔導クッションは大量に毟り取ったファイヤーバードの羽根のおかげでかなりの数を作れたが、ドラゴン温卓は素材に限りがあるのでそう沢山は作れない。貴族向けということもあって数量限定にしておいた。

 拡張収納箱は1つにつきチャージバードの魔石を8つも使うので、どうしても数は作れない。ファイヤーバードみたく繁殖力が強く沸いて出てくるタイプならその限りではないのだが、必ずしも全ての魔物がそうではない。


 そうやって日課になりつつある作業に勤しんでいるとブルーと遊ぶ時間も自然と減り、作業を止めるとこうしてブルーが甘えてくるのだ。


 少し申し訳なく思う。

 せっかく懐いて一緒についてきてくれたのに構ってあげられなくてすまない、ブルー。

 魔道具作りも一段落ついたことだし、今日は一日ブルーと遊んでやるか。


「よしブルー、今日は目一杯遊ぼうな」


 そう言ったら、全身で嬉しい!と叫ぶようにぽよよんっぽよよんっと高く跳ねるブルー。伝えてくる感情がこんなに分かりやすく可愛らしい魔物もそうそういないだろう。


 普段はグレイルさんが遊び相手になってくれていたがそのグレイルさんも今はいない。それで余計に寂しいのかもしれない。


 ブルーと共に庭に移動して仲良くキャッチボール。

 家主であるグレイルさんから店と執務室と従業員の居住区以外は基本好きに使っていいよと言われてるので遠慮なく。


 そろそろ日が暮れるという頃に沢山遊べて満足したブルーと一息つく。


「そういえば明日だな。グレイルさんが帰ってくるの」


 思い出したように呟けば、グレイルさんに懐いているブルーは一瞬で疲れが吹き飛び、再びぽよんぽよん跳ね回った。


 そうなのだ。何事もなければ明日の午前中にはグレイルさんが行商から帰ってくる予定なのだ。


 レアポーク領までは普通に魔物がいる森を突っ切るので当然危険が伴う。しかし先日のオークの群れの件で魔物は大人しいし、そうそう危険な目には遭わないはず。

 領内でも危険はないに等しい。なにせ田舎だからな。出現する魔物も低級ばかり、領民も善良な人がほとんど。これで危険が迫る訳がない。

 万が一トラブルが起こっても数少ない兵士とうちの弟妹達がなんとかするだろうし。



 それらの予想は違わず、予定通り翌日にはグレイルさんが帰ってきた。


「グレイル様ぁぁぁ!!」


 グレイルさんが姿を表した瞬間、いの一番に突撃したレジータ。しかしアンリーシュに首根っこ掴まれて阻止される。


「やめなさいレジータ。グレイル様もご高齢なのだから」


「すまないね、アンリーシュ」


 少し申し訳なさそうに眉を下げつつアンリーシュに首根っこ掴まれたままじたばた暴れるレジータの頭を撫でるグレイルさん。

 レジータは暴れるのをぴたっと止め、ぱぁぁっと満面の笑顔。ピーンっと犬耳を伸ばし、尻尾をブンブン振っている。

 さすが犬の獣人。大好きなご主人様を前に忠犬化した。


「おかえりなさいグレイルさん。うちの家族は元気でしたか?」


 一通り従業員と再会の喜びを分かち合い、ブルーを撫でていたグレイルさんにタイミングを見計らって話しかける。

 すると何故かサッと視線を反らし、何かを誤魔化すように虎の尻尾をゆらゆらと忙しなく揺らした。


 あれ?なんでそんな遠い目をしてるんだろう。


「ああ……まぁ、元気すぎるくらい元気だったよ……でも、それは自分の目で確かめたらどうだい?」


「え、」


「にいにーーーっ!!」


 ドスッ!


 何かが俺に衝突した。

 そして衝撃で吹っ飛ばされた。


 コロコロコロと盛大に転がり、壁にぶつかりそうになったところで壁の方から風を噴出させてギリギリのとこで止まる。


 グレイルさんの家の中だから油断してた……というより、この見覚えのある懐かしい声は……


「……弟1号か?」


「うん!久しぶり、にいに!」


 数ヶ月ぶりに会えたからかとびっきりの笑顔を見せる弟1号。

 ここに天使がいる……!


「どうしてここに……」


「1号お兄ちゃん!先に行くなんてずるいっ」


「あたしだって我慢してたのに……!」


「後で制裁しないとね」


「え、ちょ、お前らまで!?」


 玄関から飛び込んできた黄色く丸い小雛集団にびっくりして狼狽える。

 弟1号に続いて俺のもとに突撃してきたのは妹1号と妹2号、それに弟2号だった。


 危うく壁とこんにちはするところを魔法でどうにか踏みとどまる。


 拗ねたように頬を膨らます妹1号、悔しげに歯をギリィっと噛み締める妹2号、ちょっと怖い笑顔を張り付けつつぎゅっと俺に抱き付く弟2号。

 皆可愛い。皆天使。ここは天国か?


 久々の可愛すぎる弟妹達との再会に語彙力が低下しつつ、なんでここにこの子達がいるんだ?と首を傾げつつ。


 とりあえず、全員の頭を撫でた。


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