第39話、探されてた
ドラゴンを討伐した日から何日も過ぎ、アネスタにも少しずつ慣れてきた。
その間何をしていたかというと、もちろん素材集めである。
レアポーク領方面の森に潜む魔物を討伐したり、バードランス火山周辺の魔物を討伐したり、薬草なども採取していた。
必要な素材は魔物だけじゃないからな。
外出時、たまにセレーナに絡まれたりもしたが難なくかわした。
なんで俺の居場所分かるんだろう?教えてないのに、と思って聞いたら「猫の勘にゃ!」と自信満々に答えた。
勘だけで居所を当てるのもすごい。
毎回道を変えてるのにピンポイントで強襲してくるからな、あの猫……
幸いにもグレイルさんの家にいる間は襲ってこないから問題ないか。
アネスタに来てからというもの、ずっとグレイルさんの家に世話になってたりする俺である。
ずっと世話になるのも迷惑だろうと宿に泊まろうとしたのだが、他ならぬグレイルさんに引き留められたのだ。
家に泊める代わりに仕入れた魔道具の性能を上げてくれと頼まれたため現状そこに落ち着いた。
毎度少なくない報酬を渡されるが、その上で泊めてもらってブルーの遊び相手にもなってくれて、なんだかちょっと申し訳ないので魔道具を作ったら一番にグレイルさんにプレゼントしよう。
ファイヤーバードの羽が大量にあるので、これから来る冬に備えて魔導クッションにしようかな。
フォレストラウルフの毛皮をふわふわになるように手を入れて、中にファイヤーバードの羽を詰める。ファイヤーバードの羽はそのままだとすごく熱いのが特徴で、ただ中に詰めただけだと段々熱くなってきて使い物にならなくなる。
ここで魔力回路の出番だ。
魔石を動力源にして魔力回路を作り出し、半永久的に程よく温かくなるように調整する。
間違えてはならないのが魔石の種類。
ファイヤーバードの羽を使う場合、炎系の魔物の魔石を使うのはタブーだ。何故かって、炎系の魔物の素材と魔石を組み合わせたら相乗効果で燃えるからだ。
そういう魔道具を作るなら問題ないが、あくまで作るのはクッションだからな。燃えるクッションなんて使えないだろ。
幸いアネスタまでの道中で大量に狩ったオークの魔石があるのでそれを使えばちょうどいい具合に温度を保てる。
あまり強い魔物の魔石だと今度は温度が下がってただのクッションになってしまうからな。
オーク大量発生したときはどうせならワイバーンを大量に出せと憤ったが、魔石を沢山取れたから魔導クッションを作れるのだ。今では必要なことだったと思う。
魔道具は魔石に宿る魔力が動力源だ。つまり、魔石に宿る魔力が底をついたら魔道具としての機能は失われる。
魔石を取り替えれば何度でも使えるから問題にはならないけどな。
「こんにちはフィードさん。今日も森へ素材採取ですか」
黒豹獣人の門番が、俺が提示したステータスカードを確認しながら無表情に言う。
「こんにちは。今日はポイズンスネークの素材と沼の底に生息してる水草の採取が主ですね。前回はフォレストラウルフを中心に討伐してたので」
「本当に素材を採取するのがお好きなんですね」
「素材採取が、というより魔道具を作るのが好きなんです。この素材でこんな魔道具を作りたいなーって思うと楽しくて」
「くれぐれも怪我などしないようにお気をつけ下さい。天気が怪しいのでできるだけ雨が降る前に戻ってきて下さいね」
こうして世間話するくらいには黒豹獣人と親しくなった。
最初ステータスカード見せたときは称号見て固まっていたが、それでも態度を変えずに気さくに話しかけてくれた。
無表情だし、声は淡々としてるしで分かりづらいけど、割りとフレンドリーな人なのだ。
結構嬉しいもんだな。隣のトカゲ獣人やバードランス火山方面の門番だと物凄く丁寧に対応されるからな。
賢者の称号に反応してそうなってるのは明らかで、掌を返すようにそんな態度をされると少し困る。普通にしてほしいのに。
黒豹獣人の門番との世間話を終えて森へ向かい、今日もせっせと素材を採取。
ポイズンスネークの口から放たれる毒をかわして真っ二つにしては収納に入れ、視界に入った次なるポイズンスネークに軽く威嚇射撃して強制的に意識をこちらに向ける。そして再び毒攻撃を避けてはぶちのめす。この毒も使い道があるので確保。
沼の周辺にいるそれらを間引きしたあと、沼の水を風で巻き上げて水草を採取し、風魔法を切って元に戻す。
周辺にある植物も使えそうなものがあったらどんどん採取していき、黒豹獣人の忠告通り雨が降る前に帰還。
門が見えてきたところでぽつぽつ雨が降りだしたので急ぐ。
「……あれ?誰かいる」
何やらトカゲ獣人と誰かが話し合っている。
レアポーク領方面に行くのは冒険者かたまに行商人くらいなものだが、トカゲ獣人と話してる人は身なりがいい。
田舎領に行く行商人より身なりが良く、体格もがっしりしていて……というより、見覚えのある格好だな。
近くまで行くとその人物は気配を察して振り向いた。
「フィード!やっと見つけた……」
どこか安堵した様子で息を吐くその人は冒険者ギルドのマスターだった。
「どうしました?」
ギルマスの口振りからするに、俺を探していたっぽい。
はて?
俺は依頼を受けてないので冒険者ではない。懐は温かいので冒険者ギルドで魔物を売ったりもしていない。というかまず冒険者ギルドに行ってない。なので前みたいにギルド破壊して罰則をくらうなんてことももちろんない。
ギルマスが探しに来るような案件はないはずだが、いったいどうしたのか。
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