第31話、グレイルさん、実は凄い人?

「初めまして!貴方がフィードさんっすよね?」


 ギルドの外に出ると、犬の獣人が尻尾をブンブン振りながら人懐っこい笑みを浮かべて声をかけてきた。

 ギルドの前で待ち伏せしてたなら、グレイルさんの部下か?


「グレイル様を助けて下さってありがとうっす!俺、グレイル様の商会に勤めてるレジータっす!お迎えに上がりましたー!」


 やっぱりそうか。


「初めまして、フィードです」


「さぁさぁ挨拶もそこそこに行きますよ!グレイル様がお待ちかねっすから!」


 嫌悪感を持ってもいないし見下してもいない様子。

 グレイルは種族間の差別を良く思ってないようだし、部下も自然とそういう人が集まるのかな?


 レジータに急かされてグレイルの家に向かう。


 ブルーを預かってもらってるので早く行かないと。ブルーが寂しがるからな。

 差別意識がどういう形で影響するか分からなかったからグレイルに預けたのだ。

 被害が俺だけならまだしも、一緒にいるブルーにまで何かされたら嫌だし。



「…………デカい」


 案内された先は豪邸だった。


 どこの城だよと内心突っ込む。それぐらいデカい家だった。


「王都の屋敷に比べれば慎ましやかなもんっすよー」


「王都にも家を持ってるんですか?」


「そうっす!というより王都が拠点っすね!ここは別荘みたいなもんっす!ここでも商売してるっすから!」


 普段は王都で商売していて、ここでも店舗を構えてる訳か。


「……あれ?でもウルティア領に行商に行こうとしてましたけど」


「あー、多分それフィードさんの身内のためっす。あっちに行く行商人って大抵差別意識持ってるから、少しでも気分良く買い物できるようにって配慮っすね」


「何故そんなことを?商人としては大したメリットもないのに」


「ふふっ、グレイル様はとても優しい方なんっす!ウルティア領だけじゃないんすよー!あちこち辺境を渡り歩いて差別されてる種族を助けたり、時には拾って部下として雇ったり……その辺の己の利益だけを考える利己的な商人と同じにされちゃあ困るっす!」


 誇らしげに上司のことを語るレジータ。


 普通の商人ならいくつも店舗を構えたりしないし、差別されてる者に施しをしてやる余裕もないはずだ。

 かなりやり手の商人なんだな、グレイルさん。


「さぁさ、こっちっすよー!あ、赤い方の入り口は店舗になってるっす!もし良ければ明日にでも見ていって下さいっす!」


 さすがやり手商人の部下。営業も忘れない。


 店舗と自宅が繋がっており、その分大きな屋敷に見えているようだ。実際は3分の1が店舗とのこと。それでも十分デカい。


 2つ並んだ入り口のうち白い扉を開けるレジータに続く。


 中も豪奢な造りになっている。といっても、成金貴族の屋敷みたいな趣味の悪いものではなく、地味だとは到底思えないが豪華すぎる訳でもなく、全体的にバランスの良い装飾が施されていい味を出している。

 白を基調としているので清楚な雰囲気もあり、値段が張りそうな物を玄関に置かない辺り親しみやすさも演出してるのだろう。


 物珍しげに家の中をキョロキョロ見ていたらどこからか青い塊が体当たりしてきた。


「待たせてすまん、ブルー。いい子にしてたか?」


 肯定するようにぎゅうっと引っ付くブルー。よしよし、いい子にしてたな。


「うわー、スライムってこんなに懐くんっすね!初めて見たっす!」


「はっはっは、元気でいいことだ」


 ブルーと戯れている俺、やけに懐いているスライムにびっくりしてるレジータの元にグレイルが遅れてやってきた。


「すみません、ブルーの面倒見てもらっちゃって」


「いやいや、気にしなくていいよ」


 ほのぼのと柔和な笑みを浮かべるグレイル。こうして見るとやり手の商人というよりただの好好爺にしか見えない。


 その後レジータとは解散。部下も同じ屋敷内に住んでいるが、居住空間は別なので安心してくれとのこと。


 長旅で疲れただろうからと用意された客室に通され、飯も風呂も有り難く頂いた。

 やはりド田舎とは色々と勝手が違う。

 塩味、かつ、質素な料理が中心だったのだが、ここにきて初めて塩味以外の味付けの料理を口にした。飛び上がるほど旨かった。

 風呂も、実家では水で軽く汚れを落とすだけで済ませていたが、こちらでは石鹸とやらを使うらしい。毛がサラつやになって驚いた。


 あまり自覚していなかったがグレイルの言うとおり疲れていたのだろう。

 ブルーを抱き枕にし、その日は早々に眠りについた。


 ふかふかのベッドの誘惑には勝てませんでした。


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