お客さん
小学二年生のころ、私が家でお留守番をしていたときでした。
お母さんがお買い物に行って少ししたら、玄関のチャイムがなりました。
「ごめんくださ〜い」
近所に住んでいるNおじちゃんだ、そう思って玄関先に向かいました。
「どうも〜いつもお世話になってます〜」と、ドアの向こうから声がしたので
「Nおじちゃん?」と聞いてみると
「そうそう、Nおじちゃんだよ。お母さんいるかな?」って聞こえたんです。
でも、ドア越しに少し声を聞いたらNおじちゃんじゃなくて、 Fちゃんのお父さんかな? って思ったんです。
電話で何度か間違えたこともあったし、また間違えたかもって。
そう思ったら、Fちゃんのお父さんのような気がすごくしてきたので
「あ、ごめんなさい。Fちゃんのお父さんですか?」って聞き直したら
「ああ、そうそう。Fちゃんのお父さんです。今日はおじょうちゃん一人かな?」
って言うんです。
この時点でおかしいんですけど当時の私は気付かなくて。
それより、私のことをかわいがってくれているFちゃんのお父さんが、私をおじょうちゃんなんて呼ばないのにおかしいな、くらいにしか思いませんでした。
名前でKちゃんって呼びますので。
私をからかっておじょうちゃんと呼ぶのはいとこのNお兄ちゃんだから、また聞き直したんです。
「あれ? Nお兄ちゃんなの?」
「あ〜ばれちゃったかぁ。そうNお兄ちゃん だよ。今日はだれもいないの?」
コロコロ変わるんです、おかしいですよね。
それに声が変なんです。
壊れたCDみたいに声が歪む、というか。
救急車のサイレンが遠ざかっていく時みたい、というか。
「おっかしいなぁ、なんで分かったんだろう。そうだよ ユウコお姉ちゃんだよ。一緒にあそぼぅ。お母さんは一緒 じゃない の?」
ユウコお姉ちゃんなんていません。
男の、NおじちゃんのようなFちゃんのお父さんのような、Nお兄ちゃんのような声のままでお姉ちゃんって名乗ってる。
私は怖くなってきて声も出せず、玄関先でドアを見つめて立っていると
「そうだぁよ 私が たずねてきたんです から」
「おじょうちゃんあやすの 僕はとっても じ ょうずだよ」
「もう8さいに なった かな」
「8さいになったので とってもうれしいです なっとくしました からあけて」
「ほらご らん おい しいおにく も おくすり もあるしあけてよ」
「ぼく になまえをつけてばっかり こんどは わたしのば んだね あけて」
「わたしに ぼくも やさしく やるか ら よ あ あけて」
「そろそ ろ あ け ろ ね?」
「ああああっははははははははあははははあははははあはははあはははあはははーっはははははははははハハハハハッーーあははああははは!あけろぅ!あけててあけてあけてあけろおよおおおあああはははははははははは!」
ものすごい数の手がドアを叩き、たくさんの笑い声が響きました。
私は恐怖のあまり、立ち尽くして泣いていました。
その時
カチャ
鍵が開いて、ドアノブがカタッと回ったんです。
とっさに私は「だめーーー!」とドアノブを引っ張りました。
怖いものが入ってきてしまう。
私は必死の思いでドアノブを引っ張りました。
「ちょっちょっちょっとちょっと!何やってんの!?」
お買い物を終えて帰ってきたお母さんでした。
安心してさらに泣き出す私に困惑しながらお母さんは、どうしたの?と聞いてくれたので、今あった話をすると
「ドアの前?誰もいなかったわよ?」と笑っていました。
笑い声を聞いている最中に入ってきたのに、お母さんには何も見えなかったし聞こえなかったそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます