聞いてはいけない話

中学生のころの話です。



色々と怖い話を仕入れてきては、熱心に話してくれる友達がいまして。

会えば怪談を聞かされて、その話についてあーだこーだとやってました。

でも、大体がこっくりさんをやってどうのこうのとか、メリーさんだとか。

まあ、定番の話がほとんどでしたね。


特に力を入れて話してたのが、いわゆる「聞くと訪れる」ってやつで。


昔って呪いの話みたいなものも、いっぱいあったじゃないですか

そういうのも色々と話してくれました。

ありましたよね、紫の鏡?とかなんとか。

そういう系のです。


で、その中の、色々あった怪談の一つなんですけど。


内容はもうぜんぜん覚えてないんです、すいません。

おぼろげで申し訳ないんですが、大筋としてはまあ、不幸な目にあった女性がどこかにいて。

その不幸にまつわる話を聞いた後、一週間以内にその女性の霊が部屋の前に現れて、ドアをノックすると。

その時に、ある呪文を唱えないとその女性が入ってきて。

呪われるだか殺されるだかって、良くある話ですよ。

定番というか、たぶん皆さん知っている話じゃないかな。

でも当時は、正直な話、あ〜またそういうやつねと思っちゃいまして。

はいはい、みたいな。

っていうのも、それまでにこうした話を散々聞かされてたものですから。

なんにも起こらないじゃないですか、当たり前ですけど。

その都度教わる呪文みたいのだって、まず使ったことがないんですよ。

へぇ〜なんて言いながら、そのテの話に半分ぐらいは飽きてたんですよね。



で、その話を聞いてちょうど一週間くらい経つ頃に。



もう、ドア開けとこう、と。



いたずらですよね。

霊がいてアプローチしてくるとして、ドアを開けておいたらどうするのか、と。

ノックする所がないわけですから。

ボン、と突然現れたりするのかどうか、みたいなことを思ったんですね。

怖くはありませんでしたよ、いざという時の呪文を知ってますから。

さあどうするんだ?なんて思いながら、その日は宿題をやってたんですね。


それで、夜の11時くらいだったと思います。


何か物音が聞こえた、ような気がしたんです。


「?」とは思いましたけど、そんなにはっきりと聞こえたわけじゃないので、気のせいだと思って無視してました。


しばらくしたら、また何か物音が。


ウォークマンを聴きながらだったので。

曲のせいかな?くらいで片付けて、宿題の続きを始めたんですけど。

しばらくしたら今度は



ドンドンドン! って強めの叩く音が。



はっきりと聞こえたのでびっくりして。



なんだ今の音は?ってイヤホン外して耳を澄ましたんです。

何も聞こえない。

部屋にも廊下にも誰もいない。

それでもしばらく待ってみたら




ドンドンドンドンドン!




って拳で壁を叩くような音が響いてきたんです。




天井から。




蛍光灯のスイッチの紐が揺れているんですよ。




これは、まずい。

そう思って教わった呪文を唱えました。

なんとかさんなんとかさんだったか、なんちゃらかんちゃらって呪文だったか。

ちょっと今はもう覚えてないんですけど、それを当時必死に唱えたんですね。


そしたら、ドンドンドンドンド って。


唱え終わるのと同時にノックが途切れたんで。


もう怖くなって、慌てて下に降りて父親に音がしたかどうか聞いたんです。




案の定、音なんてしてないって言うんですね。




やべぇのホントに来たと思って、話聞いたのを後悔しましたね。

翌日、友達に聞いたんですよ、どうだった?って。

そしたら、ノックはなかったけど怖かったから唱えといたって言ってて。

何じゃそれって思ったんですけど。

まあ僕も、怖かったから唱えておいたから何も起こらなかったなんて、なんとなく嘘をついてしまいまして。

本当のことは言わないほうが良いような、なんか、そんな気がしたんですよね。

なんとなくですけど。

で、そいつには、あんまりこういう類の話はしない方がいいかもよ、って一応言っておきました。

人によっては、変に怖がっちゃたりするしさ、なんて誤魔化して。

そうかもなぁなんて言ってましたけど。


もちろん、本当の理由は違います。


もう、お分かりだと思いますけど。


友達の友達の親戚の話だとか。


よく聞くような噂話や、嘘かホントか分からないような話に




ホンモノ




が入り込むことがあるって、知ってしまったからです。




実話でも創作でも、気をつけた方が良い時あるなって、思うようになったからです。





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十一番目の怪談集 小丘真知 @co_oka_machi_01

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