湯気

私が小学生の時の話です。



私の祖母は信心深い人で、毎朝仏壇を拭いてお清めしてから、朝炊いたご飯をお供えして拝んでいました。

ある日私は、祖母のおつとめのお手伝いがしたいと伝えました。

すると祖母は

「じゃあ、Tちゃんにはお供えするご飯を持ってきてもらおうかしら」

と、言ってくれました。


日曜日の朝、眠い目をこすりながら私が台所に行くと、祖母はご飯を炊いて待っていてくれて、仏飯用の小さな器にご飯を丸くよそって渡してくれました。

ご飯の甘い香りと器を渡された責任感ですっかり目を覚ました私は、落とさないように、そろりそろりと仏壇がある祖母の部屋へ歩き出しました。



すると、ご飯から立ち上っていた湯気がふわーと、祖母の部屋の中へと吸い込まれていったんです。



湯気の後を追うようにして祖母の部屋に入ると、その湯気はまっすぐに仏壇の中へと流れていました。


「おばあちゃん来て! ほとけさまがごはん食べてる!」


と、私が祖母を呼ぶと、祖母は「まあ」という顔をした後、私を後ろから抱きかかえるように一緒にお供えして、拝んでくれました。




湯気は、お供えした後も乱れることなくまっすぐに、仏壇の中へと消えていました。



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