第181話 覚悟など、すでにしている
「まずい、何かやってくるわ!!」
「危ない!! 止める……です」
その行動にサリアとルチアは警戒し彼をめがけて強力な遠距離攻撃を打つ。
ビーム状の大きな魔力がキノトグリス襲い掛かるが──。
「させねぇよ!!」
アブホースが間にはいって障壁を展開。二人の攻撃は何とか障壁を突き破りアブホースに直撃、大ダメージを受け後ろの壁に直撃。しかしキノトグリスの術式を妨害することは出来なかった。
「何か……来る!」
イレーナが警戒して一端距離を取ろうとしたその時、キノトグリスからこの場をすべて破壊する様な衝撃波が飛んだ後、イレーナはその攻撃の衝撃を受け体を吹き飛ばされ、民家の壁に叩きつけられていた。
「うそっ」
ソトスが再びイレーナに急接近してくる。
イレーナはそれに対応しながら後退。
「強くなっている──」
今の攻撃で同じように吹き飛ばされたルーデルが叫んだ。
「今までの倍近くの強さはあるわ」
「だとしたら、まずい……です私達も、結構消耗していますから」
同じく攻撃を受けて吹き飛ばされたサリアとシスカがそう囁く。
「確かに貴様らは強力な力を得て強くなった。だがその割にはずいぶんと苦しそうな表情をしているな」
「フッ、無駄に勘が鋭い奴だ」
その言葉にソトスが機嫌が悪そうにつぶやく。
だがそれはイレーナ達も感じ取っていて明らかに彼らは額に汗を浮かべ、苦しそうな表情をしている。
「それが代償ってことでしょ」
イレーナとルーデルはすぐに見抜く。その通りでこの術式は対象者に強大な魔力を与える代わりにダメージが徐々に対象者をむしばむというリスクがあった。
「まあいい、俺たちの魔力が尽きる前に倒せば勝ち、それだけだ!!」
そしてアブホースが苦しそうに叫び、肉体に魔力を込める
その瞬間、すさまじい気配を感じる。
「俺の最後の攻撃。くらいやがれぇぇぇぇ!!」
高らかな叫び声を上げ、術式が発動される。
強烈な攻撃が来ることが誰の目にも予想がついた。
そしてサリアとシスカが前に出る。
「みんな、私が守る。後ろに下がって!!」
「させるかぁ!!」
ソトスがサリアに接近しその鎌を振りかざす。
これではセリアが障壁を展開する前にソトスに攻撃を受けてしまう。
「……くっ、仕方がない」
ルーデルが一気に急接近、ソトスに向かって駆け出す。
そしてイドラと二人の間に入り攻撃を防ぐ。そして、イドラを無理矢理障壁の外に追い出し、自分は中に入る。
わずかに出来たスキ、その瞬間にサリアが眼前に強力な盾を展開。
そしてシスカもそれにつられて前に出る。
その瞬間アブホースの攻撃がさく裂する。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
強化されただけあって先ほどとは一回りもふたまわりも大きい砲撃。
二人は全力で盾に魔力を込め、防ぎきろうとするが、ヒビが入り今にも崩壊しそうだ。
「お願い、耐えて──」
「絶対、守り切る──です」
何とかギリギリで耐える二人。そして少し時間が経ち爆発がやむ。
するとそこにはひざまずいて倒れこむ二人の姿。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
シスカの体から魔力がつき、がっくりと膝をつく。
サリアも両膝をつかせ倒れこむ。
今の障壁に持てる魔力を出し切ってしまいガス欠を起こしてしまったのだ。当然戦うことは出来ない。
「すいません、私はここまで……です」
「シスカちゃん、ありがとうね」
二人がこの場から撤退。
そして前に視線を移すと──。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
アブホースと肉体が消えていく。先ほどシスカとサリアの攻撃を受けていたため今の全開の攻撃とキノトグリスの術式から来るダメージに耐えられなかったためだ。
「けっ、防ぎきったか。だが、やるしかねぇ!!」
イドラとソトスもかなりダメージを追っているようで、息を荒げているのが見える。
後一撃で倒せそうだとイレーナは感じる。
確かにこっちもシスカとサリアを失ったが二人の頑張りは無駄ではなかったのだ。
そしてそれを見たルーデルとイレーナは相手に聞こえないよう小声で話す。
ひそひそ──。
「よし、わかった」
そして……。
タッ──!!
二人合わせてソトスへと向かっていく。彼の方が攻撃を受けていて弱っている。先に倒しておこうという作戦だった。
時空をつかさどる力、闇に立ち向かう勇気となりて、力なきものへ、希望となる力を!!
ユリシーズ・リミテット・スラッシャー
ズバァァァァァァァァァァァァァァ──!!
イドラがイレーナの背後から襲いかかったのだ。
気配に気付き慌ててイレーナが振り向く。
ソトスもまだ倒しきれていなかったようで再び立ち上がりイレーナに襲い掛かる。
前後から襲いかかる敵、宙に浮いたイレーナはどうすることも出来ない。
「くっ、仕方がない──」
それを見たルーデルがイレーナの方へ向かっていく。
イレーナに急接近し、彼女を突き飛ばす。するとそこに右からソトス、左からイドラが襲いかかってくる。
「覚悟しやがれぇぇぇぇぇ!!」
「覚悟など、すでにしている!!」
しかしルーデルは気にもとめない、すでに覚悟を決めている。自分の命を捨ててでも魔王軍達を殲滅するという覚悟が──。
「俺だけが、くたばるわけがない!! 道ずれにしてやる!!」
怒りの焔に包まれし力よ。逆境を踏みつぶし、降臨せよ!!
ブレイス・アベージ・エアレイド
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます