第133話 機密情報

 

「どうやら、バレなかったみたいね」


「ああ」


 宮殿の備品だけあって高価な作りで濃厚な感覚の外見をしていて机を動かせないように印象づけている。


 確かに機密情報があらぬところから漏れる事はある。当然そうすれば警戒はする。部屋の中に誰か隠れていないか探したりするかもしれない。しかし仮に人が隠れているとわかっても彼らにとって机は机でありそれ以外の何物でもない。


 当然思考の外。そして音の録音機能があり貝のような形をしたメモワール・ダイヤルを何個か所持。グロリアが会話を初めて何か有力な情報を口にしたら記録を開始する作戦だ。


 そして幸一が作戦が始まり気を引き締めようとする。しかし……。


「わ~~い。幸君と一緒、やった~~」


「そういう言い方はやめて」


 青葉が小さな声で幸一を茶化す、少しはっちゃけ身体をツンツンと触れる。青葉はこういった作戦は慣れている。そこまで気を引き締める必要はないのだ。



 意外とばれないというのが幸一も理解できた。またあらかじめ彼女の予定表を入手していたので外で予定がある時にトイレや食糧を入手できるのでそれに関してはそこまで問題ではない。



 しかし意外なことで問題があった。





 つんつん──。



「ちょっと青葉、身体に触れ過ぎだよ」


「ん~~? ちょっと二の腕が触れただけじゃん。もしかしてやましい事でも想像してるの??」


 青葉の純白でぷにぷにとした二の腕が幸一の腕にぴったりとくっつく。狭い椅子の中という中、ある程度体が触れるのは仕方がないが青葉はそれをいいことにまるで誘惑するかのように必要以上に身体に触れてくるのであった。

 おまけに彼女の髪からシャンプーの香りが幸一の鼻腔を刺激。何とかその誘惑を断ち切っていくが青葉の誘惑に理性が氷のように解けていくのを感じる。


 幸一としては当然誘惑に負けるわけにはいかない。ましてや絶対に間違いを起こすわけにはいかない。何とか理性を総動員して耐える。


「まあ、あいつがいない時間は大体わかっているんだしその時間だったら多少はいやらしい事をしてもいいわよ。キスぐらいならやってみる?」


「や、やらないよ……」


 ギュッ──。


「ちょ、ちょっと──」


 ウィンクをしながら青葉がノリノリでしゃべるとさらに幸一に体を寄せる。もともと青葉は露出度が高い服を着ていてそれが彼女の色気を引きたてていて思わず顔を赤らめる。

 幸一はイレーナに先日告白され交際をすることになったばかりだ。間違ってもここでそれを裏切るようなことはしたくない。


「イレーナちゃんには言わないから大丈夫!! バレなきゃ犯罪じゃないってこと技があるじゃない。そう言う事よ!」


「そんなことわざないって。本当にやめて」


「もう、幸君のいけず~~」



 しかし幸一には違和感があった。

 どこか演技が入っているような気がする。何か嫌なことがあってそれをごまかすために過剰にテンションを上げているような……。



 幸一がそんな心配をしていると──。



 キィィィィィ──。


 ドアが開く音が二人の耳に入る。



 二人ともさっきまでのいちゃいちゃムードは消えさる。ダイヤルを動かし録画モードにする。


 二人以上の足音が聞こえた事や話の内容から誰かと階段をしているのだろう。


「ええ、ここの役人さんは馬鹿ばかり。秘密情報は筒抜け、少し私が利益を与えたりそれなりの地位を約束するだけよ」


「想像力が足りませんな」


「そうそう。ちょっと私が利益をちらつかせているだけでみんなホイホイ情報をくれるわ。相手がどんな集団に所属しているかわからないのにね」


「ははは、まさか機密情報を売った先が魔王軍とつながりがあるなんて知ったら奴ら驚くでしょうな」


 ピクッ──。


 その言葉に耳を澄ませて聞いていた幸一と青葉の表情が凍りつく。やはりこいつが魔王軍への裏切り者。しかしそれでもこいつが何をしようとしているのかを聞き逃さないため懸命に耳を澄ます。


「それで、これからはどうするんですか? もうすぐで大規模な襲撃がありますよね。そこでも策とかはあるんですか」


「まあ、そうね……。普通の冒険者はほっておくとして。兵士の中に裏切り者を作るのはどうかしら。そいつに国王に向かって発砲させるの。パニックになり後方は確実に混乱するわ」


「それと、後は勇者さんね。彼は行く先々で魔獣たちを討ちとりいろいろな問題も解決していると聞いたわ。何か対策しないと彼一人で作戦が台無しにされかねないわ」



「幸君モッテモテ~~」


「ちょ、ちょっと声を立てないで。ばれちゃうよ!」


 青葉はその言葉を聞くと肘でうりうりとつついてひそひそ声ではやし立てる。


「それに関しても考えはあるわ。ここでは話しずらいけどね……。ゴニョゴニョ」


 グロリアはひそひそ声で耳打ちしながら小さい声でその策を話す。残念ながらその小さな声では青葉と幸一には聞こえなかった。やはり侍女が変わった時点でグロリアはどこかで警戒しているのだろう。



 そして2人の会話が終わる。具体的な内容に関しては結局聞く事は出来なかった。


「では、あなたのご命運を祈ります。ミスグロリア」


「ええ。次は勝利の宴ね」


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