第128話 今後とユダの作戦
そして二人が真剣な表情で話しを聞いていると──。
フッ!!
「ひあっ!!」
作戦を話した後に吐息を幸一の耳の中に吹きかける。突然の出来事に思わず奇声を上げる幸一。イレーナはプンスカと怒り出す。
「ちょっと!! 何やってるの??」
「まあまて、冗談じゃ。緊張をほぐそうとしただけじゃ。それと話はそれだけではない。この襲撃が終わったらあなた達四人に一つの指令があるのじゃ」
「四人って私とサラにも?」
「ああそうじゃ。この襲撃が終わったら。表向きでは商人として変装をして入国してもらう。隣国のアストラ帝国にのう」
「アストラ帝国? それってサラちゃんの生まれたところだよね?」
青葉の素朴な質問にサラがうんと首を縦に振る。その通りでその場所の首都ビロシュベキ・グラードで彼女は生まれた。わけ合って彼女はその場所から追放されてしまい、この国に来る事になったわけだが。
なのでそのまま入ってもサラは強制送還させられる可能性が高い。青葉はそれについて突っ込むとユダがにやりと笑みを浮かべて言葉を返す。
「それは分かっておる。今回の任務は隣国アストラ国に魔王軍へ寝返った人間がいると言う情報が入って急きょ決行を決めたのじゃ。なにせ政府の重要人物じゃという話しじゃからのう」
「政府の要人……結構まずくない?」
「しかしここで問題がおる。幸一殿やイレーナ殿は今までかなり活躍していてまともに入国すれば目立ち過ぎていてなかなか活躍しにくいであろう。じゃから商人の夫婦役として変装して入国させるのじゃ。その中で闇市や闇商人と接触を図って魔王軍とつながりがありそうな人物をあぶり出してほしいのじゃ」
そしてユダは一回イレーナにちらりと視線を向けた後今度はサラの方向へ視線を移す。
「そしてサラ殿に幸一さんの妻役として同行させる。幸一、そちはまず彼女の夫役として不自然でない行いと素振りをたのむぞ」
「不自然でない行い。夜のスポーツとか?」
「うう……、青葉ちゃん、変にからかうのはやめて」
青葉のふいのからかいにサラは手をあわあわと振り困惑する。そしてそれ以上に不満の声を上げたのは当然……。
「え~~っ、何で?? サラちゃん?? 夫婦──」
イレーナは突然の言葉に思わず不満を垂れる。無理はない、先日幸一とのデートで勇気を出して自分の想いを伝えた。そして二人で幸せになると誓った。
そしてその次の日にこの有様である。いくら仕事だと分かっていても心の底では納得できるものではなかった。
顔を膨れさせ見るからに不満そうな表情になる。その表情を察して国王がこの理由について説明し出す。
まず彼女はアストラ国出身ということで政情や地理に詳しいこと、そんなサラを妻役にして幸一を行動させた方が行動しやすいだろうと言うこと。そしてもう一つが……。
「イレーナ、そちはそのご活躍と美しきさ故外国でもすでに有名になっている、たとえ変装をしたとしても目立ってしまうじゃろう。ここは隠密行動ができる青葉とともに表に出ない裏方役として活躍させる方向にした方がよいと思うのじゃ」
「うぅーー、わかった」
ユダの正論にイレーナは何も言い返せず仕方がなく矛を収める。頭ではわかっていても
心は納得できずかなり不満そうな顔つきをしていた。
そしてユダはイレーナに青葉から今から裏方役として何をすべきかや、役割、注意点などについて学ぶように指示をする。
「青葉殿、頼むのう──。イレーナ殿は強くて正義感は強いが時折感情的になって不用意な行動をしてしまう時がある。誰にも気づかれず裏方役として活躍してもらうために指導、よろしくのう」
「わかったわ、私がイレーナちゃんに教えればいいんでしょ」
そう言いつつ青葉はイレーナに視線を移しジト目で言葉を返す。
若干ピリピリとした雰囲気がこの場を包む。
それを察したサラが二人の間に入ってあわあわと手を振って二人の険悪な雰囲気を何とかしようとする。
「あ、あ、あ、あの……、これ仕事でやってるだけだからね。別に私幸君にそう言う感情を抱いているわけじゃないし、イレーナちゃんから泥棒しようとしているわけじゃないからね」
「ふ~~ん、どうだか」
青葉の挑発じみた物言い、サラを援護しようと幸一も会話に入る。
「そ、そうだよ。喧嘩はやめてくれ。イレーナ、これは作戦なんだ。みんなを救うための──、だから悪いけど今回は我慢してくれ。俺も出来る限りイレーナの気持ちに答えるよう努力するから」
必死の懇願にイレーナは渋々納得。不満そうな顔をしながらも反論をやめる。
「……わかった」
「それなら解決策はある。魔力の補充のため二人は定期的に手を握らなければならぬ。じゃから拠点の場所では四人で生活するようにするのじゃ。勿論目立つような事はするでないぞ? そこで親睦を深めるために定期的に幸一殿とイレーナで夜のスポーツを楽しむのじゃ」
「夜のスポーツ? ってちょっと何言ってるのユダちゃん!」
「まあまあ落ち着けばよい、冗談じゃ。頼むぞ、わしはまた調べ物があるからここまでじゃ。また会おうぞ」
イレーナはその言葉に顔を真っ赤に赤らめ怒りだす。
しかしユダはそれをサクッとかわす。そういうとユダはスッと消えてしまった。彼女のマイペースぶりに二人は軽くあきれる。
「まあいいや、とりあえずあいつを信じよう」
「まあ、それまで私がいたらだけどね……」
青葉が誰にも聞こえない声でぼそっとつぶやく。誰にも聞こえないような小さな声。何を意味しているのだろうか──。
そう呟きながら四人は再び寝付く。そしてユダの作戦のために動き始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます