第54話 わしの見込んだ男
「ありがとう、こっちももっと調べてみるよ」
二人が言葉を交わす、結局このことについてはまだ分からないことが多く今後もっと調べていく事となった。
次に話したのはルトとのことであった。
幸一は今日の出来事を伝える。ホーゼンフェルトのこと、孤児院とライトエンジェル達の事、そしてクーデターまがいの行為でこの事件の解決を行ったこと。
ユダがその話を聞くと沈黙する。静寂な空気がこの場を包む。
「ふっ、そうか──」
何とか周りが聞こえるくらいの小さな声でつぶやく、そして……。
「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ」
パンパンと手をたたきながらげらげらと大声を上げながらユダが大笑いする。
「やはり貴様はわしの見込んだ男じゃ。これでこそ貴様を急遽勇者として見込んだ甲斐があるというものじゃ」
「どういうことなの? この世界に召喚される人間って決まっていたんじゃないの?」
青葉が問いただす、彼女は魔法の素質があり天使達の中で元々召喚が決まっていたのだと自分の天使から聞いていたからである。
するとユダは幸一がこの世界に着た経緯を話す、本来別の人物を召喚させる予定だったはずが自分の命を投げ出してその赤の他人を救いそれが理由でこの世界に来た事を説明する
半ばあきれた表情で青葉とイレーナが突っ込む。
「ええっ? 幸君、ちょっとおかしいでしょ!!」
「う、うん私もそう思う」
サラは驚愕の表情をして苦笑いをする。
「幸君らしいって言うか……」
やれやれと苦笑いをしながら呆れた表情をする青葉。
「しょうがないだろ!! それしかなかったんだから」
顔を赤くして必死になり言葉を返す幸一。
「まあ、おかしい奴だからこそこの世界に来たのだしクーデターの様なマネをしたんじゃ。しかしここまでやってくれるとは」
ユダも首を傾けながら笑みを浮かべる。
「もうお前の好きにせい。わしは口を出さん」
「……、そうさせてもらうよ──」
自身を持った表情で幸一は答える。そしてさらに質問を続ける。
「この世界にはどれくらい俺のように召喚された奴がいるんだ?」
真剣な表情に変わる、幸一が気になっていたことだった。有政、青葉との出会いによって自分以外にもこの世界に召喚された人物がいることが分かった。
この青葉のようにこの世界に召喚されたのはどれくらいいるかが気になっての質問だった。
「天使は十三人、だからこの世界に召喚されたのも恐らくは十三人じゃろ──。少なくとも正規の手続きを踏んだのはな」
ユダは淡々と答える、そして今度はユダが幸一に気になっている事を質問する。
「そしてわしからもう一つ聞きたいことがあるんじゃが──」
ユダは幸一とイレーナを交互に見ながらにやけ顔になる、そして──。
「二人の中はどこまで進んだのかのう?」
「えっ?」
予想もしなかった質問にドキッと驚く幸一とイレーナ。
「キスぐらいはしているのかのう? 舌は? あっすでにその先のことまで進んでいるのかのう?」
ユダが幸一の腕をうりうりとしながら質問する。突然の質問に固まる幸一。サラもあわあわとし始める。
「デリカシー無さ過ぎ!!」
「裸は見られたくせにのう」
「その話はやめて!!」
顔を真っ赤にしてイレーナが反論する。そして三人のやりとりに見かねた青葉が変わって答えた。
「お言葉ですがユダさん、二人の中はそこまで進展してないですよ。今は認めあえる親友って感じです。少なくても幸君にとってはね」
イレーナの事を考えてお茶を濁すような感じで──。
「そうか……、それは残念じゃ。じゃあ今度わしが来る時にはキスぐらいは出来るようになるのじゃぞ」
ユダのはやし立てるような口調、キスと聞いた瞬間幸一は少しイレーナを意識してしまった。あの柔らかくてピンク色の唇。触れたらどうなるのかと──。
「幸君、今イレーナちゃんの唇ちらちら見てたでしょ?」
「え──? や、やべっ!!」
青葉の突然の一言に動揺する幸一、イレーナはその言葉に──。
「もう──、馬鹿っ!!」
顔を真っ赤にして言葉を返す。
「では、わしは去るとするかのう。進展するといいのうこの問題。 もちろん2人の中もな?」
ユダが蒸発するように消えてこの場を去る。そしてその天使に青葉が思わず苦笑いしながら一言。
「本当に、変わった天使さんね」
「それは私も感じた」
サラもついつい本音を漏らす。すると幸一が青葉に気になったことがあり質問する。
「あのさぁ、青葉? 青葉の天使もこんな感じなの?」
やれやれと言ったポーズをとりながら青葉は答える。
「私の天使は金曜日の夜に普通に来るわ、こんな奇襲まがいのことしないっつーの」
「やっぱりそうですよね」
サラの同調するような声。
「じゃあ、もう夜も遅いし私は部屋に帰るわ、おやすみ」
青葉がそう言って部屋に戻っていく。同時にサラも部屋に帰っていく。二人っきりになった幸一とイレーナは電気を消し就寝した。
「いろいろ疲れちゃったな、イレーナ」
隣同士のベットに横になった二人が言葉を交わす。イレーナはあくびをしながら言葉を返す。
「ふぁ~~あ、そうだね」
「ほら、魔力は満タンにしたいでしょ、だから……手」
ぎゅっ──。
その言葉に幸一はイレーナの手をつなぐ。握ったイレーナのその手は、いつもより暖かい気がした──。
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