【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

第52話 組まないか

「聞いてたわ、よからぬことをたくらんでいるお二人さん」

　予想もしなかった声に思わず幸一は驚く。

「青葉……、聞いていたのか──」

　そこに現れたのは青葉だった、いつもの陽気な表情では無く半ばあきれたような表情で言葉を進めていく。

「何？　一応聞いておくけど首をかけるって言うのは私たちの世界で言う今の仕事を解雇されるっていう揶揄的な意味で言っているの？」

　すかした表情で幸一が言葉を返す。

「そんなわけないだろ、やっていることは下手をしたら国家に対する反逆だ。下手をしたら公開処刑でさらし首になってもおかしくないことをたろうとしているんだ。失敗した場合はそう言うことも当然あり得るってことだ」

　少し険しい顔つきで青葉は会話を続ける。

「そんな大事をやって成功したら名誉はルト君に、失敗したら責任は自分が取るってこと？」

「まあ、そう言うことにはなるな……」

　その言葉に青葉は思わずあきれ始める。

「まあ、あんたらしいと言えばあんたらしいわ。私は二人を応援するわ。そういう姿勢でいるうちはね」

「あ、ありがとう。そう言ってくれると心強いよ」

　青葉は星空を見上げながらさらに話を進める。

「まったく、飛んだお人よしさんね。本当にあきれる」

「褒め言葉だな」

　いたずらっぽい笑みを見せる幸一、彼にとっては青葉の言葉がそうとしか聞こえなかった。

「じゃあ、その時は総力戦になると思う。冒険者の手配、エンジェルリストの人物の把握。協力してくれよな？」

　青葉に穏やかな表情をして頼む。

　やることは山積み、エンジェルリストに載っている人物とすべて特定し、そのリストに載っている人達を一斉に検挙する冒険者を集める。

　当然一人で出来ることではない。ルトや青葉、イレーナ達の協力が必要になる。そしてその情報を漏らさせないために冒険者は信頼できる人達でなくてはならない。

　そんな大変な作業を頼み込む幸一、すると──。

「わかったわよ、私も協力するわ……。幸君、いい人すぎてみてられないもの──」

　ふっきれたような口調で青葉が話し始める。

　そしてそこから作戦は動きだし今へとつながっていった。

　次は国王の所へこの件の説明、そしてリストに載っていた人物達の逮捕の要請である。

　主犯である幸一を先頭に後ろには青葉とサラがいる。この一件がどう転ぶかわからないのでイレーナとルトはここにはいない。

　真剣な表情でまず青葉が国王にエンジェルリストと逮捕された人達がどのような事を行ってきたのかを話していく。

　奴隷として自分の快楽のために悪用していたこと、そしてその獲得するルートとしてマフィアたちを利用していたこと。

「まあ事後になってしまいましたが……、あえていいます。彼らを逮捕しました。このまま裁判まで行かせることへの」

　幸一の世界では警察しか逮捕権が無いようにこの世界でも軍直属の兵士しか本来逮捕権はない。しかし今回はその軍の要人までもが犯罪にかかわってしまっている。

　そのため冒険者たちに特例で彼らを逮捕させることへの許可、それを正式な逮捕として認め裁判まで行う事を国王に認めてほしいという事を頼んだ。

「彼らの犯罪、決して見過ごせないものでありここで解決しなければさらに拡大すると思われます。どんな手段を使っても彼らを裁くべきです」

「ずいぶん大胆な事をするね……、幸一君」

　予想もしなかった出来事にただ驚愕する国王。まさかこの国にこんなスキャンダルがあるとは、まさか彼がこんな大胆な策に出るとは──。

　そんな驚きの思考が彼の脳裏を支配する。

「それで、この事件なんですが、彼ら、ちゃんと裁きますよね──。まさかなん癖つけてなあなあで済ませようとか思ってませんよね」

　握りこぶしをしながら強気な表情で訴える幸一。その話しに驚きながら国王は話しを聞く。

　話しが終わると腕を組んで国王は悩み始める。

　彼らをどうするか、いなくなって国に支障は出ないのか──。

　そして五分ほど時間がたつ国王が重い口を開け始め答える。

「仕方ない、認めよう──。今回の騒動」

　その言葉にほっとした表情を持つ幸一。策が実った瞬間だった。

　そして頭を下げ始める。

「ありがとうございます、ご理解いただいて幸いです」

　そう幸一が言うと国王はさらに言葉を続ける。

「だがもうあまり勝手なことはしないでくれよ、私も相談に乗る、あせらなくていいんだ。今度からは私にもちゃんと話してくれ……」

「わかりました──」

　国王の頼りなさげな言葉に若干戸惑いを見せるものの幸一は首を縦に振る。そして国王に対しとある心配が脳裏をよぎる。

（この国王で、大丈夫なのだろうか──）

　しかし他に方法はない、彼に足りない部分は自分やイレーナ、ルトが補う。

　そう幸一は考え幸一達はこの場を後にする。

　部屋のドアを開けて廊下に出る。すると──。

「幸君、どうだった？？」

「僕も気になる、僕たちの意見は通ったの？」

　どんな結果になったか、気になって食い入るような表情で幸一に詰め寄る。

　幸一はその表情に少し驚いたがすぐに冷静になって言葉を返す。

「ああ、通ったよ。国王は納得してくれたよ」

「よ、よかった……」

　その喜びにイレーナがうっすらと涙目になる。

「それとルト、話があるんだけどいいかな？」

　幸一が話題を変えルトに話しかける。

「何？」

「組まないか？」