第23話 真実の焔
翌日、幸一は時間通りにサラの部屋に到着。出発していった。
国王やその側近、マクブライド、ラミス達とも合流。
石畳で出来た道を馬車で進むこと一時間ほど。
「この街一番の大聖堂です」
大きい教会で、この街でも恐らくトップクラスの大きさだろう。高さは60メートル、幅は75メートルはある。
この街でも、政府のある宮殿に並ぶほど大きく、街のシンボルの一つにもなっている。外見はアヤ=ソフィアに似ていて、この世界でも有数の豪華な建造物であった。
幸一がその豪華さに見とれていると、サラが肩をつんつんと叩いて話しかける。
「名前はハリストス大聖堂です。聖堂の中ではこの国で一番大きい建造物です。入りますよ」
幸一達が馬車を下りる、そしてイレーナと幸一が先頭になって中へ。
国王と側近達、最後にマクブライドとラミスが入っていった。
(流石は大聖堂と言ったところかな?)
内部を見ながら幸一はその豪華絢爛さに驚く。
天使を描いた絵画に神秘的なモザイク模様、大理石で飾られた内部、上には豪華なシャンデリアや装飾品で飾られていてとても豪華さを感じる。
そんな内部に見とれていると、前方から誰かがあいさつ。
「ようこそ国王閣下、そして炎の唯一王様。わが大聖堂へおいでくださいました。勇者様は初めてのご対面ですね、私はヌルシアと申します、よろしくお願いいたします」
長い白髪とアゴヒゲ、ローブをして長い髭にピッチリ分けた髪の中年男性の祭司、ヌルシアがそこにいた。
彼があいさつをして頭を下げる。そして初対面である幸一に手を差し伸べた。
「こちらこそ八田幸一と申します、よろしくお願いいたします」
と言ってヌルシアが差し伸べた手を握り、握手をする。二人があいさつをするとサラが早速話の本題に入る。
「早速ですが真実の焔を見に来ました。準備などは今どうなっていますか?」
「大丈夫ですよ、国王様が今忙しいと昨日通達が来ていて準備の方は整いました、では早速地下へ」
国王や側近たちは魔王軍との戦いや政局争いで多忙を極めており、早速儀式の場所へ幸一達は向かっていった。
彼の誘導のもと螺旋状の階段を下って行く、五分程すると下に降りて最下層につきその先の扉を開ける。
「なんかあやしい儀式を行う部屋みたい──」
初めてここに来たイレーナが思わず囁く。
「お待たせいたしましたみなさん、それでは儀式を始めさせていただきます」
この地下の部屋の隅でそっと身を潜めていたヌルシアの部下の女性が、黒い木箱を抱えて祭司の方に進み出る。
コトッとその箱を机に置く。さらに机を部屋の中央に置き、良く見えるようにした。
話によるとこの真実の儀式を行うことで、この教会にある真実の焔が魔王軍が襲撃する時間と場所を特定してくれるらしい。
「では初めさせていただきます」
ヌルシアの言葉を合図に部屋が真っ暗になる。回りのランプがすべて消えたためである。
さらに祭司がその木箱に手をかざすと、木箱が光り始める。そして紫色の焔が出現し、木箱が燃え始めた。
「これが真実の焔です、ここから手紙が出るのでそれに記されています。次の魔王軍の襲撃先が……」
「そうなんだ……」
サラの説明にイレーナが言葉を返す。
ここにいるすべての人達が焔を目に痛いくらいにじっと凝視し、手紙を待つ。
「来た!!」
焔を見たサラが叫ぶ。他の人達が固唾を飲む。
終焉の焔が紫に激しく燃え始め、火花が散る。
そして焔の中から閃光が走りそこから黒い手紙がハラリと落ちた。
祭司が長い手を伸ばし、その手紙を拾い上げる。
「次の襲撃の場所は──」
そこに記された場所をじっと見た。両手で持った紙を眺めると沈黙を破り読み上げる。
「エスコリアル遺跡、二週間後です」
「エスコリアル?ああ!!あの遺跡ですか」
驚く国王、そこは最近になって発見された遺跡でまだ最深部は解明すらされて無い遺跡であった、彼はすぐに側近に指示を出す。
「わかりました、すぐに兵站の準備。それからギルドに冒険者たちの手配をしましょう」
「当然裏切り者の存在も考慮しなければなりませんね……」
サラが真剣な表情でつぶやく。この間の幸一に振りかかったセクハラ騒動、店の従業員が証言して何とか無罪になったものの彼らやサラ、イレーナの協力、さらには国王の一言が無ければ無実の罪の濡れ衣を着せられた可能性が十分にあった。
前回の襲撃の時も大型魔獣対決用に結成された部隊が謎の人物に襲撃され、戦う前に壊滅的な被害を受けた。幸一が代わりに大型魔獣との対決を引き受けてくれたからよかったものの、彼がこの世界に来ていなかったらこの街は廃墟になっていた可能性すらあったからだ。
「つまり次の襲撃は魔獣との戦いだけじゃなく、裏切り者の事も考慮しなきゃいけないってことだよね……」
イレーナの言葉に周囲がはっとする。
緊張感漂うこの雰囲気、ひょっとしたら身近に敵がいるかもしれないという事実が彼らを疑心暗鬼にさせることになる。
しかしだからといって魔王軍との戦いは続く。
次の襲撃への準備はここから始まったのであった──。
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