心ゆらゆら揺らいで涙して

倉糯 珱萌

01話 負けず嫌いなのだ

琉宇るう、俺‥‥‥昼に同じクラスの小林さんに屋上で告白した」


 ホームルームを終え、我先にと教室から出た私の目の前に幼馴染みである枚方ひらかた けいが立ち塞がった。


 真っ赤な顔をして肩を大きく上下させながらはぁはぁと荒い息遣い。隣のクラスから移動して来ただけでこれだけの荒い息遣いなのであればかなり体力が低下しているのではないかと心配になってしまう。


「屋上は立ち入り禁止だからね。それで? 小林さんに告白してどうなったの」


 京はとにかく園児の頃から無類の女好きで、女性であれば誰彼構わず告白していた。立ち入り禁止の屋上で日々告白して、ほぼフラれるパターンであり、毎回涙目になりながら結果報告を私にしてくる。お決まりのパターンなので聞き返すのは面倒ではあるけど幼馴染みとして優しく接してあげるのが私の義務だと思っている。


「琉宇、ついに俺に彼女ができた」


「‥‥‥マジで?」


 嬉しそうに喋る京の声も話している内容も途中から耳にも心にも全然入ってこなかった。

 京は生涯一人で生きていくものだと思っていたから彼女ができるなんて驚きでしかなかった。それと同時に私は驚きだけじゃなく、焦りや不安も感じていた。

 

「いや~やっと俺にも春が来た。お前も春を感じてみたらどうだ? まだ高一だけど、あっという間に高三になるぞ」


 自慢とバカにするような雰囲気を体中から発して、にやにやしながら京が私に視線を向けてくる。今の今まで多くの女性に告白しては散っていった癖に彼女ができた途端にこの態度。どれだけ私が優しく接してやったか覚えているのか? 腹立たしい、だけど私は負けず嫌いなのだ。


「残念でした。彼女ができない京に遠慮して内緒にしてただけで、私には既に付き合ってる人が存在したりするんだな~これが」


 どうだと言わんばかりに私はドンと胸を叩いた。嘘をついたことへ少々胸が痛むのも事実だけど、何分負けず嫌いな性格が邪魔をしまして。


「マジでか? 悪かったな~。じゃあさ、来週の日曜日ダブルデートしようぜ」


 私が言った言葉に対してちょっと変だなとか嘘だとか疑いもしないものなのか京は。それにしても一瞬の沈黙もせずにいきなりダブルデートを提案とかある意味怖いものです。


 冷静になってはいたものの、少しずつ頭頂部から大量の汗が吹き出し始めた。同時に血が出るんじゃないか? 声が男みたいになってしまうんじゃないかと思えるほどに私は咳き込んだ。とにかく鬼咳き込んだ。


「ゲホゲホ、えっと」


 彼氏がいるとか嘘だよ~とか言えちゃえば、楽になれるんだよ。だけど私はとにかく負けず嫌いで、バカだった。


「ゴホゴホ、来週の日曜日ね。どこ行くか決めておいてね」


「分かった。顔をはそこそこ可愛いけど頭が悪いというか性格に難がある琉宇なんかを選ぶ彼氏か~、興味津々だぜ」


 何気に貶されているが、私の頭の中は架空人物の彼氏をどうしたらいいのかと考えるばかりで一杯だった。


 だけど、彼氏って……どうやったらできるんだろう。

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