第172話 さてと、予想通りおかわり入りました。

前回のあらすじ:襲撃は来たけど、ワイバーンメインだった件について。



 とりあえず、ワイバーン他200体の群れの討伐が完了。被害についてだけど、王国の精鋭は数人が少し傷を負った程度で、うちの領民達には被害はなかったようだ。冒険者達についてだけど、死者こそ出なかったけど、こちらはかなりの被害となっている。彼らのほとんどは、町に戻って治療を受けている状態である。それほど被害を受けなかった冒険者も少しはいたけど、彼らも討伐完了ということで町へと引き返していた。


 で、被害がそれほどなかったということで、治療班の半分がこちらにやって来た。出番がなかったから今度こそ出番をということらしい。とはいっても、治療専門の領民達は町に残っており、こちらに来たのは治療もできるけど、戦闘がメインの者達である。それに伴って戦力の再配分ということで、カムドさんの指示の下、何人かがこちらにもやって来た。こちらにやって来たのは、セイラさんとマーブルとジェミニとライムだけである、というより、これでこちらが主力に変わったも同然の状態であった。


 こちらに来たマーブル達は私に飛びついてきたので、しっかりキャッチしてモフモフを堪能する。その中でもライムは特に退屈だったらしく、シスター帽をかぶったままこちらに飛びついて来た。可愛さアップ状態でのライムの飛びつきだったので、こちらもプヨ度アップの気持ちを込めておにぎりの刑にしてやった。どうやら出番が全くなかったようで甘え方もハンパなかった。


 ついでに町の様子を聞いてみると、このドサクサに紛れて帝国側で何か仕掛けてきたようだけど、それを察知したコカトリス達がその連中を次々に石化させていたようで、被害は全く出なかった模様。一応何かには使えそうなので破壊せずにそのまま放置してあるようだ。流石は我が領のペット兼用心棒である。後で気合を入れてブラッシングしますか。と思ったら、手の空いていた領民達がブラッシングをすでにしていた模様。


 ところで、マーブル達がこっちに来たということは、陛下を抑えられる人物が向こうに派遣されたということだろうが、一体誰なんだろうか? と考えていたら、ガブリエルが登場、どうやら第2陣の存在を確認したようでその報告に来たそうだ。ガブリエルからその陣容を聞いて、納得がいった。ワイバーン程度ならなめプでいけるので、陛下が自ら出撃して素材をダメにしないか心配だったけど、次に来るのは緑龍が主力の100体、中には巨大種も数体存在しているらしいので、流石に指揮に専念してくれるだろう。


 作戦的には60体を領民達が、30体を帝国の主力が、残りの10体を冒険者達で対応する感じらしい。要は、領民達と帝国の主力で対応仕きれない分がこっちに回っているようだ。ちなみに、マーブル達がこちらに来たのは、こちらに残っているのは救済の風の4人と他数名程度しか冒険者はおらず、彼らと私とアンジェリカさんとルカさんの3人、つまり10人前後しかいない状態というのがその理由だ。


 どちらにせよ、私達と戦姫のパーティを揃えて、どんな状況にも対応できるようにしたいようだ。というのも、まだこの程度では終わらない、というのがカムドさん達の判断らしい。私もそう思っている。理由は簡単だ。他のドラゴン族がグレイルに文句を付けたことが事の発端であり、仮にもエンシェントドラゴンに文句を言える存在が起こしているのだ。力もそれ相応にあるはずである。であるのにここまで手応えがないのはおかしいのだ。まあ、こちらとしては美味い肉を提供してさえくれれば、向こうの事情など正直どうだって構わないけどね。


「ミャア!」


「アイスさん、マーブル殿の言うには、ワタシ達に向かって来ているのは、緑龍7体にデカいのが3体だそうです!」


 マーブルがこちらに向かってくる存在に気付いて、その内容を伝えてくれたようだ。ジェミニはもちろん通訳としてである。ただ、端から見ていると、「ミャア」とか「キュウ」としか聞こえていないようだけど。


「マーブル、ジェミニ、ありがとう。」


「アイスさん、作戦を!」


「そうですね、では、作戦を伝えます。緑龍5体には、戦姫の3人で対応してもらいます。」


「「「了解!!」」」


「緑龍の残りの2体ですが、マーブルとジェミニは、それぞれ1体ずつ弱らせてください。くれぐれもトドメを刺してはいけません。よろしいですね?」


「ミャア!」「キュウ!」


 冒険者達は唖然となった状態でこちらを見ていた。指示を与えると、当然のように敬礼で戦姫ばかりか動物でしか見えないマーブル達ですら敬礼をしていたのだから。


「弱った緑龍達については、救済の風の4人が1体、その他の冒険者が1体、トドメを刺してもらいます。これでドラゴンの倒し方やダメージを与える方法を学んで下さい。もちろん、トドメを刺せたら、素材や肉はそちらの好きにして構いませんよ、できますね?」


 命令を受けた冒険者達は震えながら敬礼をしていた。自分たちがドラゴンを倒すという喜びと、自分たちでドラゴンが倒せるのかという恐怖、もちろん、そこまでお膳立てをしてもらうことについての冒険者としての矜持が傷つけられているというのもあるだろう。しかし、他の冒険者達とは違い、第2陣がこちらに来る可能性があることを理解した上で残っていた程には冒険者としての知識や本能もある実力が備わっているのだろう、ワイバーン達ですら強敵なのに、緑龍が相手では、間違いなく自分たちでは荷が重いことは理解していたようで、それでもアイスはそんな冒険者達にもドラゴンの素材を、いや、活躍の場を与えてくれたのだ。そういった様々な感情が入り交じった状態で震えていた。


 もちろん、アイス自身はそこまで考えていたわけではなく、ただのお裾分け感覚で提案したに過ぎない。どうだ? 自分で仕留めたドラゴンの肉は美味いだろう? 程度の感覚である。


「ちなみに、デカブツですが、これは私とマーブルとジェミニが担当します。まだ次が来そうなので、時短という意味合いもありますので、アンジェリカさん達はとりあえず緑龍で我慢して下さいね。」


「もちろん、わかっておりますわ。さっさと倒して次に備えましょう。」


「ということで、マーブルとジェミニは、緑龍をそれぞれ1体ずつ弱らせてからデカブツを1体ずつ倒してください。デカブツの方は仕留めて構いませんから。で、ライムは冒険者達の護衛、いや、護衛はいいか、治療の方を頼みます。解体ではないので、多少の抵抗などである程度ダメージは受けそうですからね。」


「ミャア!」「了解です!」「ピー!」


 はい、再び我が猫(こ)達の敬礼入りました!


 そうしている間にも、第2陣の方々が交戦距離まで近づいてきたので早速戦闘開始だ。


「では、戦闘開始!!」


 先頭にいた緑龍達は都合良く2体だった。こちらに襲いかかってきたが、マーブルが重力魔法で動きを鈍くしてから反撃した。マーブルもジェミニも、まず最初に空に逃げないようマーブルは爪で、ジェミニは牙で翼の部分を切り裂く。落ちたところをそれぞれ片方には傷を付けながら、もう片方には傷が付かないように体当たりや後ろ足でダメージを与えていく。良い感じで弱ったところで、控えていた冒険者達にタッチだ。


「マーブル、ジェミニ、ありがとう。では、トドメはお願いしますよ!」


「アイス様、了解だ! ここまでしてくれて倒せなかったんじゃあ、救済の風の名が泣くってもんだ! 俺たちはこいつを受け持つ、あんた達はそっちを頼む!」


「ああ! 任せとけ!」


「ああ、皆さん慌てないで。獲物は逃げないので。ドラゴンの倒し方をしっかりと理解しながら倒してくださいね。」


「「「了解!!」」」


 弱った緑龍に冒険者達が襲いかかった。とはいえ、無闇矢鱈と突っ込まずに様子を見ながら攻撃を加えているのは流石に高ランク冒険者なのだろう。あの感じで行けば、何とか倒せるだろうな。どちらにしろライムもいるから怪我をしても安心、ということで、私達はあのデカブツを仕留めますかね。緑龍5体程度なら、戦姫でもお釣りがくるでしょうし。


 改めてデカブツを確認。一応空は飛べているけど、体がデカい分、その動きは遅い。デカブツもこちらの存在を確認したようで、それぞれ1体ずつ襲ってきた。その目は狩る者の目である。私達に負けることなど微塵も思っていないような目である。力のあるドラゴンは、私ならともかく、マーブルやジェミニを見ると必ず慎重になるものだけど、こいつらは猫やウサギを見る感じのものでしかない、ということは、マーブル達の強さを全く理解できていない程度の存在である。まあ、逃げないのは有り難いので、お言葉に甘えて私達のご飯になってもらいましょうかね。もちろん、マーブルとジェミニは、目の前のデカブツに対して、沢山のお肉をくれる存在としてしか見ていないので、どうやって綺麗に捌こうかとしか考えていないだろう。


 私は先程緑龍を倒した矢を用意していた。先程の緑龍に対して放った矢は、思いっきり貫通してしまったので、今回はどうなるんだろうという実験も兼ねたものである。狙う場所は同じだけど、体がデカい分、当たりやすいとはいえ、デカい分距離が必要である。私は今までもこれからも、近距離、いや、遠くとも中距離での弓使いである。正直、距離的にギリギリといったところか? まあ、仮に当たらなければ、他にも方法はあるので心配はいらないか。


 先程の緑龍と同じように、眉間と喉を狙って放った。このデカブツは結構戦闘慣れしているようで、弓矢を見た途端馬鹿にしたような表情をしていたが、飛び方を見て驚いたのだろう、慌てて防御態勢になっていたようだけど、遅かったね。狙い通りに眉間と喉を貫いて声も上げることなくゆっくりと後方に倒れた。まあ、デカブツだけあって、倒れたときの衝撃は結構凄かった。すぐさま空間収納へとしまって周りの様子を観察することにした。マーブルとジェミニは、安定の首チョンパでそれぞれデカブツを仕留めていたところだ。


 緑龍の相手をしている戦姫は、セイラさんが中心となって仕留めていた。どうやら、治療班の仕事としてセイラさんの出番はなかったようで、アンジェリカさん達もトドメの役目を譲っているようだった。ルカさんもここぞとばかりに風耐性のドラゴンに敢えて風魔法で対処おり、その分高出力でガンガン魔法を放っていた。

それにはアンジェリカさんも呆れ気味で攻撃を防いだり、ダメージを与えたりして遊撃していた。


 冒険者達の方はというと、一進一退の感じではあったけど、ダメージを受けると、すかさずライムが治療していた。緑龍も一応自己回復を持っていたようで、傷がふさがったりして一瞬ヤバいと思ったけど、回復した分、ライムが体当たりで回復以上のダメージを与えているようで、一応安定と言えば安定しているのかな。絵面だけを見ると、弱い者いじめをしているようにしか見えなかったけど、この際それは言わないでおく。


 こっちはどうにかなりそうだったので、領民達はどうなっているかを確認すると、そちらはしっかりと統率された動きで見事に「狩り」をしていた。さらに向こう側では、時たまドシーン! という大きな音と地響きが聞こえてきたけど、こちらからは様子がわからないので、後で聞くことにしますか。また上空では、恐らくラヒラスが放ったであろうフィン、じゃなかった、フレキシブルアローが飛び交っていた、それも今までよりも激しい動きで、、、。ラヒラスも鬱憤が溜まってたんだろうな、、、。


 領民達もそうだけど、帝国兵側でも大丈夫そうだな。とか思いながら見ていると、1体だけ後方で待機しているドラゴン? を確認した。マーブル達もそれを確認したようでこちらに合流して、そのドラゴン? らしき存在のいるところへと向かおうとすると、ライムもこちらに来て飛びついて来たのでキャッチした。


「ライム? 向こうは大丈夫なの?」


「おねーちゃんたちが、まかせて、っていってたから、こっちにきたー。」


「了解、じゃあ、私達を手伝って。」


「わーい、がんばるぞー!!」


 ライムは嬉しそうにピョンピョン跳ねたけど、ライム、頼むから頭の上で跳ねないでくれ、結構衝撃凄いんだよね、、、。しかし、器用だよな、、、。そんなことを思いながら、一緒に向かうと、そのドラゴン? みたいな存在はやせ細っており、こちらに意識を向けることなく佇んでいた、と思ったら、下には魔方陣が現れていた。・・・なるほど、この魔方陣で陸上部隊を呼び寄せるんだな、ウンウン。折角なので、魔法が唱え終わるまで待つことにした。もちろんただ待っているだけでは芸がないので、モフプヨを堪能しつつ、ついでにブラッシングもしておく。


 マーブル達の毛づやを確認しつつ時間を潰していると、ようやく詠唱が終わったのか、魔方陣がさらに輝きを増したのを確認したので、何が出てくるのか楽しみでその様子をワクワクしながら見ていた。が、出てきたのは1体の巨大な龍、しかも何か禍々しい感じがしたので、鑑定をかけてみる。アマさん、出番だ。


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『ザッハーク』・・・暗黒龍とは珍しいのう。こやつは、エンシェントドラゴンと同格となる位の力は持っているぞい、でも、それだけじゃ。ちなみに食用には向かんから、間違ってもワシに供えるのは勘弁して欲しいのう、、、。

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 なんだ、食べられないのか、、、。つまらん。とりあえず、こういうときって、出現した途端大声で吠えるよね? 五月蠅いから顔の周りを氷で覆ってしまえ、ということで水術発動。ちなみに先程魔方陣を使って召喚していた方のドラゴンはそのまま力尽きたので、勿体ないので回収しておく。


「マーブル、ジェミニ、ライム。非常に残念なお知らせですが、このデカいの、食べられないそうです。」


 私がそう言うと、マーブル達は非常にがっかりした様子だった。


「そういうわけで、いても邪魔なのでさっさと倒すことにしましょう、ということで、久しぶりにレールガンで行きますか!」


「ミャア!」「レールガン? 了解です!!」「わかったー!」


 そういうことで、レールガン発動! マーブルが風魔法を発動して風の塊を作る。その塊に水術で氷の粒を作成して放り込む。ジェミニは土魔法で土の塊を作成、ライムがその土の塊を光魔法で覆う。みんないつもより強めに発動しております。準備が整ったところで、ジェミニがその塊を蹴り飛ばして発動するわけなんだけど、今回はマーブル達3人が同時にその塊を蹴り飛ばすようだ。普通はそんなことしたら勢いが殺されてしまい半減どころではないのだけど、流石に我が猫(こ)達である。いつもよりヤバそうな威力で塊は飛び、これまたいつもよりヤバそうな量の静電気を覆った場所に到着、ヤバい量の雷を纏った玉がザッハークの心臓部に命中したと思ったら、全体に影響が及んでそこにいたザッハークという存在は跡形もなく消え去ってしまい、レールガンも向きが上空に変わりそのまま消えていった、、、。


「・・・。ええと、ちょっと、張り切りすぎたね、、、。」


「ミャア、、、。」「・・・ですね、、、。」「・・・なくなった、、、。」


 今後使うときは、もう少し考えて発動させましょうかね、、、。


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冒険者A「お、おい、まだドラゴン来てるってよ!」

冒険者B「な、なんだと!? しまったなぁ、でも、もう町に戻っちまったし。」

冒険者C「ちなみに、どんなドラゴンが来るんだ!?」

冒険者A「緑龍メインだとよ、、、。」

冒険者B「・・・どっちにしても無理だな、、、。」

冒険者C「・・・そうだな、、、。」

冒険者A「しかし、ワイバーンですら雑魚扱いでしかない、ここの領民達って一体、、、。」

冒険者B、C「だよなぁ、、、。」

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