第87話 さてと、おかわり来ました-。
前回のあらすじ:第一陣が来たので楽しく合体攻撃で殲滅してみました。
公国軍の操る魔物軍団の第一陣をあっさりと殲滅して、第二陣に備えてのんびりと待ち構えていた。言葉がおかしいかも知れないけど、気を張りっぱなしではよろしくないから、これでいいのだ。休養も大事なのだ。
公国軍の連中もここまで瞬殺されて慌てていたのか、魔物こそ召喚したが、襲ってくるのはまばらな状態でそれほど統率も取れていない感じだった。まばらだと攻撃が面倒なので、こちらは初期位置からほぼ動かずに待ち構えることによって、魔物達の統率をある程度回復してもらおうというのがこちらの考えである。
第二陣はコボルトを先頭にオーク、それとウルフ系っぽい気配を感じた。何でウルフ系が最後尾なんだろうか、、、。いや、ある程度混乱したところに機動部隊をたたき込んで恐慌を狙うとか、そういうのはアリだと思うよ。けどさ、どう考えてもこれって悪手だよね、、、。まあ、こちらは殲滅するだけだからいいけどね。ん? なるほど。そういうことか。ウルフ系が最後尾なのは、こいつらアンデッドだ。ということはネクロマンサーがいるんだね。
第二陣の全容がわかったので、こちらも攻撃開始といきますかね。とはいえ、今回は3種類ということで、3人での合体攻撃といきましょうか。まずはコボルトの集団からだね。
「マーブル隊員、ジェミニ隊員、準備はよろしいですか?」
「ミャア!」
「アイスさん、いつでも!!」
「よし、アークサンダー!!」
コボルト達の周りに張った結界は、結界内の水分を極限まで減らした状態にした。次にジェミニが土魔法でたくさん土の塊を作り出して、後ろ足で次々に蹴り上げる。上空から多くの石つぶてが振ってくるような感じだ。大量の石つぶてが良い感じの高さまで落ちてきたところで、マーブルが風魔法を結界内にたたき込む。
マーブルの風魔法が結界内で暴れ回ると、結界内で発生していた静電気がくっつきだして大量の電気が発生する。その上、ジェミニが蹴り込んだ石つぶてが結界内で静電気を帯びた状態の上、発生して電気により粉砕され電気が結界内全体に及ぶ。コボルト達は例外なく黒焦げの雷様の状態になって、やがて消滅した。
続いてオークの集団が近づいてきた。
「では、次はセイラ隊員、ルカ隊員です。準備はよろし?」
「準備良し!!」
「・・・いつでも。」
「では、スチームフィールド!!」
オーク達には氷の粒があちこちにある結界を張った。セイラさんが矢をつがえると、ルカさんがその鏃に火の属性を付与する。セイラさんは矢筒をもっておらず、魔力で生成しているらしいので、矢はほぼ無制限に放てるそうだ。うらやましい、って私も水術で矢を生成しているから同じか。ちなみに、セイラさんもルカさんも装備している武具はこの世界では最高峰の性能を持っている。何で知っているかと言えば、手に入れたときに一緒にいたから(前作「とある中年男性の転生冒険記」の終わりの方をご参照下さい)だ。
セイラさんが矢を放つと、矢はもの凄い炎となって結界内に飛びこむ。炎はオークには反応せずに結界内にある氷に反応してもの凄い蒸気が結界内に発生した。先程は蒸気を使って圧力で押しつぶした感じだったが、今回は純粋に蒸気で蒸し焼きにすることが目的だった。
ただ、残念だったことが一つ。オーク達はテイムではなく召喚されたものだったため、美味しそうにボイルされた状態を見たときはテンションが上がったが、すぐに消えてしまったことだ。チッ、使えない連中だな。召喚じゃなくてテイムしてこいよ!!
次にやってきたのは、ウルフの集団、ちなみにアンデッド、、、。いや、いいんだけどさ、別にね。これだけは言っておきたいけど、昼間に連れてくるんじゃねえよ! 攻めて夜使うとか、やり方あるだろ!!
ちなみに公国軍側でも、本来は昼間は召喚師や魔物使い、夜はネクロマンサーが担当して昼夜関係なく攻める予定だったらしいが、実働部隊の盗賊達があっさり殲滅されたショックで攻撃に参加してしまったそうな。これは後で聞いた話だ。
「あのウルフはアンデッドです。ということで、ライム隊員、オニキス隊員、わかっていますね?」
「よーし、ボクのでばんだー!!」
「ピー!!」
「ゆっくり溶けていってね、ホーリージェラート!!」
今回は少し工夫を凝らしてみた。というのは、ライムとオニキスは基本的には攻撃に参加せず、護衛がメインだ。折角の攻撃メンバーとしての出番なので、普通の合体攻撃ではなく、変わった殲滅方法で楽しんでもらおうと思ったためだ。ちなみに、ジェラートとは、あのジェラートである。そう、半分溶けたような感じのアイス、あれを再現してみようと思ったのだ。もちろん、食べられませんので、、、。
手順はこうです。
1.ウルフ達をある程度冷やします。そのため、結界内は冷気が行き渡るようにある程度の風も与えます。一応、水術だけでも風は発生させることはできます。マーブルの風魔法みたいな使い方はできないけどね。
2.オニキスに酸弾を吐いてもらいます。結界内に入った酸弾は薄く広がり結界内に広く行き渡ります。もちろん、結界内のウルフたちに全体が行き渡るようにします。酸の行き渡ったウルフたちは次第に溶けていきますが、冷やすことによってそれを押さえます。
3.しっかりと酸が行き渡り、凍らない程度に冷えたウルフ達に対して、ライムの光魔法を浴びせます。ライムの光魔法がウルフ達全体に染み渡ったら、これで完成です。
こうやって完成したウルフのジェラートですが、このままではずっとこの状態ですので、結界を外すことを忘れてはいけません。
ハイ、すいません、調子に乗ってしまいました。ウルフ達はというと、少しずつ溶けて消えていきました。セイラさんとルカさんは呆れたような感じでしたが、マーブルとジェミニははもちろん、ライムやオニキスも喜んでくれたので、結果良かったと思います。
こんな感じで、こちらにやってきた敵を倒してはいたけど、正直うんざりしていた。というのも、手応えがなさ過ぎるのだ。もうちっと頑張って欲しいところだ。
そんな感じで敵を心で応援したことに応えてくれたのか、ドラゴンが1体とワイバーン15体がこちらにやってきていた。内心では大物きたーーーー! と思っていたけど、冷静さを装ってみんなに伝える。
「みなさん、ようやく大物が来ました。ということで、私は弓の慣熟訓練も兼ねてあの大蜥蜴を仕留めますので、みんなであの空飛ぶお肉を倒してください。あ、アンジェリカさんはもう少し待機で。恐らくこの後にも大物が出てきそうなので。」
全員が敬礼で応え、戦闘準備完了。先程までは水術しか使っていなかったので、両手に何も持っていない状態であったが、先程も言った通りに、弓の慣熟訓練も兼ねていたので、オニジョロウをしっかりと右手に持って大蜥蜴に備えた。今更ですが、私は左利きで、弓も左手で引くタイプです。忘れても構いません。
ドラゴンとワイバーンは一緒にこちらにやってきてはいるが、一つの集団ではないようで、別々に行動してきた。ドラゴンはマーブルとジェミニの気配を感じ取って最初は警戒していたようだが、マーブル達がドラゴンに目もくれずにワイバーンに目を向けているのを見て、弓を持って突っ立っている私の方に来ていた。恐らくマーブル達と戦う前の準備運動として私を狙ってきたのだろうと思われる。舐められたものだね。まあ、こちらにとってもその方が都合が良いから、それはそれでよし。どうせならラクに倒したいからね。
まだ距離はあるので、ドラゴンがこっちにやってくる前にマーブル達の合体攻撃を拝見しますかね。
ワイバーンの集団がある程度固まっていたところで、マーブルの闇魔法が炸裂した。ワイバーン達がマーブルの闇魔法である程度の高さまで強制的に押されたところを、ジェミニが土魔法で作った石つぶてを後ろ足で蹴って、それをワイバーンにぶつけていく。15体それぞれ翼に命中し、ワイバーンの飛行能力がなくなってしまい地上へと墜落する。追い打ちでセイラさんが次々に矢を放ち、もう片方の翼まで破壊され、ワイバーン達はまな板の鯉状態になった。
ルカさんは大がかりな魔法を使うようで、珍しく長い詠唱をしていたが、それを見た一部のワイバーンはそれを阻止せんと咆哮をぶつけようとしたが、ライムが光魔法でワイバーンの視力を奪い、咆哮を阻止する。そんな状態になっても、流石はワイバーンであり、じたばたさせて大がかりな砂煙を発生させてどうにかしてもルカさんの詠唱を潰そうとしたが、オニキスとライムがそこら辺に水を吐きだして砂煙すら阻止した。
ようやく長い詠唱が終わったルカさんはワイバーンの方へ目をやると、ワイバーン達の下に大きな魔方陣が浮かび上がっていた。魔方陣が光り出すと、ワイバーンそれぞれに火柱が立ち、ワイバーン達は苦しむ暇もなく炭のようなものに変わっていく。その炭は少ししてから消えてしまった。あとは、私がドラゴンを倒すだけとなった。
ワイバーンが全滅したことに全く関心を示すこともなく、ドラゴンは一直線に私の方へと向かって来て、ある程度の距離の所で着地をした。その姿は強者らしい佇まいだったが、私にとっては所詮は通常種程度の認識でしかなかった。試しに鑑定しても、「なんとかドラゴン」とか、アマさんの鑑定結果も何故か投げやりだったのはどうかと思った。体は大きいので、的には丁度いいかなとも思ったのは内緒だ。
「あやつに頼まれて来たのはいいが、その頼みがこの程度の人間を殺すこととはな。」
きれいな発音で人語を話すのには感心した。でも、それだけだ。
「おお、ここまでキレイに人語が話せるトカゲさんは初めて見ましたな。」
私のトカゲ発言にイラッとしたようだ。
「人間風情が我をトカゲ呼ばわりか、我も舐められたものだな。」
そういえば、こいつ、頼まれて来た、と言っていたな。と、いうことは召喚ではなく、こいつはテイム系、ということは、だ、私がすべきことはただ1つ、、、。
「まあ、どう捉えるかは好きにすれば良いさ。で、ここへは何をしに? まさか私と話しに来たわけではないでしょうに。」
そう、ドラゴンといえば、お肉だ! 私はどうにかして彼が逃げることなく、どうにかして私達の食材となってもらうためにプライドをくすぐり、逃げ出さずに戦うように頑張っているのだ。
「もちろん、話しに来たわけではない。お前達下等な存在である人間共を蹂躙しに来たのだよ。それを同じ人間に頼まれて行動するのは少しシャクではあるが。」
「蹂躙? 私達のお肉になる程度の存在が私達を蹂躙? 寝言は寝て言うもんだけどね。」
「ほう? トカゲ呼ばわりどころか、我を肉とな? 面白い! では、身の程を教えてやろう!!」
そう言うと、肉は自慢の尻尾を振りかざしてこちらを攻撃するが、この程度の攻撃で私を倒そうと考えるとは甘い。後方に下がってしまうと、矢が当たらないので、思いっきり近づく。普通は矢を当てるために後方に下がるのだけど、生憎私は近距離での射撃に目覚めてしまったので、その考えは全く無い。遠距離ならアルスリがあるのだ。必要なのはバンカーに変わる近距離での貫通力。そのための威力重視の和弓なのである。
「ほう、避けたか、って、な、何だと!」
弓を持っているから後方に下がると思ったのだろう、しかし私は近距離射撃がしたいのだ。ということで、無防備になった背中に翼が見えたので、まずはその翼から潰させてもらう。試しということで、氷の矢を3本作り出して弦を引く。引きすぎると顔に当たって自爆してしまうので、引きすぎない程度に。ええ、何度か顔に当たりましたよ、それが何か?
流石は和弓、しかも強化済み。近距離でもしっかりとした貫通力を出し、思った通りの場所を貫いていたので、おまけで矢を爆破させると、狙い通りに右側の翼を破壊した。
「グ、グァーーーー!!」
肉はそう叫んで硬直したので、左側の翼も同じようにしてやった。肉はさらに叫んで、こんどは顔を上げたので、今度は矢を太くして顔と首の付け根を狙って放つ。矢は太くした甲斐あって見事に刺さったのでついでに爆発させると、肉は何かうめき声をしたかと思ったら、倒れてしまい、そのまま動かなくなった。和弓、凄ぇ、いや、オニジョロウが凄いのか。いくら和弓でもここまでの貫通力は出ないはず。それを可能にしたのがアラクネの個体種ヴィエネッタが作ってくれた弦のおかげだ。今度会ったときに、お礼としてこいつのお肉の一部を進呈しようか。
ワイバーン達を殲滅したメンバーがこちらにやってきた。マーブル達は代わる代わる飛びつき、私を褒めてくれた。うん、いいモフモフだ、幸せ。ちなみにやってきたセイラさんとルカさんは驚いた表情だった。
「アイスさん、何あの弓の威力、、、。」
「ああ、この弓は和弓といって、飛距離や威力が普通の弓よりもあるんですよね。でも少し使い方というか狙い方が特殊なので。」
「そうなんだ。それよりも驚いたのが、弓なのに何で近距離? しかも、あの威力異常だよ?」
「ああ、そのことですか。正直遠くを狙うのが苦手なので、近距離で使うことにしまして。ほら、セイラさんもご存じのように、私は近距離が得意じゃないですか。でも、今はバンカーがないから、それに代わる貫通力を持った攻撃手段として弓を選んだわけですよ。まあ、正直、ここまでの威力になるとは思ってもいませんでしたが。」
「いや、いろいろと突っ込みたいことはあるけど、そこはアイスさんだからね、、、。」
「うん、アイスさんなら仕方がない、、、。」
何か変な意味で納得されてしまった。って、何でマーブル達も頷いているの?
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