第40話 さてと、残りは消化試合ですかね。

 さて、第一陣と第二陣は全て平らげた。あといくつ襲ってくるかはわからないけど、向こう側の心配が無くなった時点で残りは消化試合のようなもの。あとは何が来るのかわからないけど、とりあえず食料になる魔物であることを切に願うばかりである。



 休憩という名のモフモフタイムを堪能していたが、マーブルが何かを捉えていた、というより第三陣が来ましたか。こちらで気配探知をかけてもまだ反応はないのでそのままかけ続けていると、ようやくこちらの探知にかかった。動きから考えると四つ足の集団だ。結構大きいな、地響きがかすかに感じる。ん? この気配はワイルドボアか? 1頭だけデカいのがいるな。あとは、マーダーディールか、、、。



「マーブル隊員、ジェミニ隊員、相手は四つ足の集団です。具体的にはワイルドボアとマーダーディールの集団です。数は100前後かな、私が先制で投擲しますので、その後2人は突撃してください。もちろん、大事な魔物ですので、できるだけ傷を付けないようにお願いします。」



「ミャッ!」



「了解です!!」



「あ、ライム隊員は私が倒し損ねた魔物のとどめを行ってください。刺さった部分に体当たりをすればいいです。」



「わーい、がんばるぞー!!」



 マーブルとジェミニは敬礼で応え、久方ぶりの戦闘での出番になるライムは○橋名人ばりの早さでその場を跳ねて答えた。私もこれで10年戦える!!



 アルスリを準備して魔物を待ち構えていると、四つ足の集団がもの凄い勢いで突っ込んでくる。まあ、突っ込んでくるのはかまわないのだけど、あれでよくスタミナが保つなと感心する。でも所詮的でしかないけどね。良い速度で突進してきているので、少し射程圏内より遠いところから氷の塊をぶっ放していった。弾はドリル弾で投擲中。



「ミャアー!!」



「いくです!!」



「いくぞー!!」



 私が集団めがけてドリル弾を投げつけたことで、3人は突撃をしていった。私が投げたドリル弾は狙い通りにワイルドボアとマーダーディールの眉間に突き刺さっていく。ワイルドボアは問題なく倒せているが、マーダーディールの方は一部倒しきれない者もいたが、ライムが追い打ちで刺さりの浅いドリル弾に突進しては深く突き刺していた。マーブルは今回は風魔法で、ジェミニは歯の刃で次々に仕留めていった。



 第三陣も結構アッサリ終わった。とはいえ、スリングショットによる投擲では倒しきれない魔物も出てきた。早く和弓タイプの弓がつくれる職人に登場してもらいたいものだ。少し時間ができたので、第三陣の魔物を私が血抜きして、ジェミニがキレイに解体して、ライムが内臓などをキレイにして、解体の済んだものから空間収納へと入れていった。ちなみにこちらの収穫だが、ワイルドボアが58体、1体はビッグボアだそうだ。マーダーディールは38体だった。100体超えなかったか、、、。



 第三陣分の解体が終わってマッタリとしていたとき、1人領民がやってきた。話を聞いたところ、アインがこちらに戻ってきたので、そのまま向こうと合流したそうだ。伝えてきた領民にご苦労様と伝えて戻ってもらう。そういえば、こちら側では斥候や伝令役がいなかったな、、、。今更感満載だが、仕方ない。そんなことを考えていると、野ウサギ族の1体がこちらにやってきた。この子は向こうで斥候をやっているらしく、とりあえず第五陣までは確認したらしい。向こうでも第三陣はあっさりと殲滅したそうだ。



 ちなみに第四陣はオーガやトロールといった大型の魔物だそうで、数は合計で100体くらいだそうだ。第五陣は地龍と呼ばれる大物らしい。数は10体くらいだそうだ。こちらに報告してくれた野ウサギ族を労い、シロツメクサの束を渡すと、嬉しそうに袋にしまって戻っていった。



 時間的に昼食を空間収納から出してマーブル達と一緒に食べた。フロストで待機している領民が作って用意してくれたスープやステーキなどだ。流石に腹一杯食べ過ぎてしまうと、まだ続きがあり、お腹によくないので、これで一応満足しておく。いや、味はもちろんおいしかったですよ。



 食事を摂ってしばらくマッタリしていると、気配探知で第四陣が近づいているのに気付いた。第五陣が地龍ということは、恐らくこれかこの次が最後だろうと予想して第四陣を殲滅したら、こちらから出向くことにした。



「第四陣がこちらに近づいてきています。私達はこの第四陣を殲滅したら、こちらから進んで第五陣を蹴散らしに向かいますので、そのつもりでいてください。ちなみに、第四陣はオーガとトロールらしいです。オーガはともかく、トロールについては食べられるかどうかわかりません、何せ戦ったことないですからねぇ。」



「ミャア!」



「了解です! オーガということは、ジャーキーをたくさん作るですよ!! ・・・トロールはワタシも食べたこと無いのでわからないです。」



「ジャーキー、ボクもすきー!」



 そういえば、オーガジャーキーは、まだねぐらに結構残っていたな。領民達にはあれを食べてもらうか。あれは残念ながらフロスト領では作る施設作ってなかったからな。オーガ肉はこちらでもらってねぐらで作るとしましょうかね。そんなことを考えていると、オーガとトロールの群れがこちらに近づいてくる。私達の姿を見つけると、腹ごなしの餌と感じたのか速度を上げてきた。オーガクラスになると、マーブル達の強さがわかりそうなものだが、一度としてそれに気付く者がいなかった。まあ、逃げられるよりは大分マシだからいいけどね。



 アルスリを準備して氷の塊を用意する。もちろんドリル弾である。アイスさん(35)だった前世では、バンカーショットで氷の塊を跳ばしたときに爆破させていたのを思い出したので、今回はそれを試してみようと思った。ようやく射程圏内に入ったので戦闘開始かな。



「マーブル隊員とジェミニ隊員は、私がアルスリでぶっ放したら迎撃してください。ライム隊員は第四陣の後処理を頼みますね。」



「ミャア!」



「了解です!」



「わかった、きれいにするー!!」



 3人は敬礼のポーズ(ライムは縦伸びが敬礼のポーズです。)をとり、了解の意思表示をする。



「では、攻撃開始!!」



 そう言って、氷の塊を次々にオーガやトロールの集団に放っていく。ドリル状の氷の塊が眉間や首の辺りに次々に刺さり、ある程度の深さに達したときに爆発するようにしておいた。面白いように倒れていく巨人達だが、やはりもう少し貫通力が欲しいとは思った。アインほどの腕力があればアルスリで十分なのだろうが、あのレベルに達するのは不可能だ。早く弓の作れる職人に会いたい。



 マーブルやジェミニも負けじとサクサク倒していく。ぶっちゃけ、マーブル達にとっては、オーガもゴブリンも大して差は無いので、数が多い分ゴブリン達の方が厄介という認識だから当然かな。向こうは野ウサギ族がいるので、同じ認識かもしれないけど、アインやラヒラスやウルヴはしっかりと倒せているのだろうか。あまり心配はしていないけどね。



 こちらでは問題なく第四陣も殲滅し、いつも通り私が血抜き、ジェミニが解体、ライムが肉や素材の掃除に加えて、飛び散った部分もキレイにしてくれた。今回はそれに加えてオーガの内臓の部分など不要な部分をマーブルが一カ所にまとめて火魔法で焼いてキレイにしてくれた。ああ、そうそう、トロールを鑑定してみると、オーガとほぼ同じような用途だそうで、違いはオーガはほぼ筋肉であるのに対し、トロールは種類にもよるけれどオーガ肉に脂肪が加わった程度らしい。味についてはオーガと大差ないそうなので、ジャーキーにできなければ、焼却処分かな。とはいえ、ジャーキーが美味くできてしまうと勿体ないので、一応確保しておくことにした。



 第四陣の処理まで完了したので、第五陣以降を殲滅するべく予定を伝える。



「みなさん、第四陣の処理お疲れ様でした。野ウサギ族の報告ですと、次は地龍とのことですから、後は大物しかおりませんので、こちらから出向こうと思いますが、大丈夫ですか?」



「ミャー!」



「大丈夫です!」



「ボクも大丈夫-!」



「それはよかった。では、これより残りの肉を回収するべく打って出ます!」



「ミャッ!」



「了解です!!」



「わかったー!」



 3人はそう返事して、それぞれいつもの場所に乗ってきた。うん、いつもながらいいモフモフだ。こちらのテンションも上がる。3人が乗ったのを確認してから出発した。気配探知を行うと早速巨大な存在が確認された。結構近かったのね、、、。そりゃ、第四陣も慌ててこっちに来るわ。



 それはそうと、数は3体か、、、。1人につき1体ずつで大丈夫かな、いや、マーブルやジェミニについては問題ないが、不安材料は私か。今回は格闘術も駆使していきますかね。よし、それでいきますか。



「折角乗ってもらったところ悪いのですが、第五陣が近くに迫っています。相手は地龍で数は3体です。1人1体ずつでいきましょう。ライムは私の袋で待機です。」



「ミャア!」



「了解です!」



「わかったー!」



 そのまま進んでいると、地龍が視界に入る。大きさは平屋建てくらいあるかな。地龍が視界に入ると、マーブルとジェミニは私から降りて戦闘準備に入る。地龍も私達の存在を確認したらしく一斉に咆哮をする。



「グアアアアアアア!!」



 普通なら怯んだりするところだが、そんなものは私達には通用しない。



「向こうもこちらを確認しましたね、では、マーブル隊員は左のやつを、ジェミニ隊員は右のやつをお願いします。私は正面のやつを片付けます。」



「ミャッ!」



「了解です! 久しぶりの大型のお肉です、気合が入ります!!」



「ボクもバッチリキレイにするよー!!」



 マーブル達は地龍ですら美味しいお肉という認識でしかないか。前世ならともかく、今の私でいけるかどうかは少し不安があるけど、大丈夫だろう。アルスリを用意してドリル弾をセット。準備完了だ。



「では、戦闘開始!!」



 私がドリル弾を発射して頭部を狙う。地龍はそれに構わず平然とこちらに突っ込んで来た。恐らく魔法障壁か何かで無効化できると思ったのだろう。残念、それは物理だ。合計で20発くらい放ったが、どれも防げずにしっかりと刺さり驚いたようだが、これで隙ができた。とはいえ、刺さりが甘い部分もあったが、そこそこ良い間合いまで近づいていたので、そのまま突っ込んで刺さりが甘い部分に打撃を加えて深く突き刺していく。



 前足で打ち払おうと攻撃してきたので、蹴りを加えながら後方に下がった。そこそこ効いたらしく、咆哮を上げながら大きく口を開いた。龍お得意のブレス攻撃を仕掛けるのだろう。本来なら、その口めがけて氷の塊を放り込んで爆破するのが一番手っ取り早いと考えていたが、肉などの素材がそれ以上に欲しかったので、今回は頭部にドリル弾をぶち込んだのだ。どちらにしろ口を開けているときは無防備なので、刺さっているドリル弾を爆破させていった。所詮水蒸気なので、火薬ほどの威力はないとはいえ、氷が刺さっている部分はしっかりと凍っている上、20発も爆発しているのだ。それに加えて無防備の状態というのもあり、かなりの衝撃があったのだろう。頭部が完全に破壊された状態で後ろに数回転してそのまま動かなくなった。



 マーブルはというと、終始圧倒していた。というより地龍程度では相手になっていなかった。マーブルは地龍との相性がいいのか、風魔法で丁寧に鱗をはいで丸裸にするくらい余裕があったようだ。その犠牲となっていた地龍だが、何か鱗の無いは虫類みたいな感じになっていた。鱗をむしられて全身が内出血で真っ赤になっており、地龍というよりは火龍? といった状態になっていた。私が倒したのを確認すると、とどめと言わんばかりに風の刃で地龍の首をはねて終了。



 ジェミニはどうかというと、何か頭突き合戦さながら体当たりの応酬をしていたが、なぜか地龍の方が押されており、地龍の額の部分がぱっくり割れていた。当のジェミニは全くの無傷であった。ジェミニと頭突き合戦をしていた地龍は脳震盪でふらついていた。ジェミニも私が地龍を仕留めたのを確認すると、こちらもとどめを刺すべくあっさりと地龍の首をはねて討伐完了。



 地龍3体とも私の空間収納に放り込んで第五陣の殲滅は完了した。実は空間収納についてそろそろ限界かなと思っていたところ、レベルアップにより容量が大きくなったらしく、問題なく収納できた。地龍は初めてだったので鑑定してみると、そこは腐っても龍族、肉は極上とのことだったので、マーブル達にそれを伝えると嬉しそうにその場を走り回っていた。また、地龍も鱗や肉はおろか、内臓や骨、血なんかも高値で取引されるとのことだそう。これは楽しみであるな。



 第五陣の処理が完了したので、第六陣がいるかどうか確認するため森の中に突入した。森の中に突入したということは、私の方向音痴が遺憾なく発揮しそうだったが、それはなかった。というのも、今回のスタンピードで大量の魔物達が進撃してきた上、巨大な地龍が進んでいたので、森の中、というよりは木の向こう側にある道を進んだ、という方が正しい状況だった。ただ、距離が結構ありそうだったので、水術全開で最高速で道を進んだ。最高速で進むと方向転換とかで意外と神経を使うので、気配探知はマーブルに頼んでいた。



 そのマーブルから「シャーッ!」と威嚇の合図があった。マーブルが威嚇するということは強敵(「とも」とは呼ばない)がいるということだ。とりあえず少し速度を落として敵に備えつつ向かって行くと、大きな存在を探知した。しかし、なにやら様子がおかしい。何かその場で暴れ回っているような感じだ。警戒しながら進んでいくと、何やらもの凄い腐臭を感じた。これ染みつくとなかなか取れない厄介な臭いなので、慌てて水術で幕を張って臭いがこちらにつかないように防御する。マーブルも風魔法でこちらに来ないように防いでくれているようだ。



 かなり近づいたが、巨大な臭い気配はこちらに気付いているかどうかわからないが、その場を動かずに暴れ回っている。巨大な臭い物体を確認できる距離まで近づくと、魔方陣が描かれており、その上にその存在を確認することができた。久しぶりにアマさん、頼みましたよ。



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『ドラゴンゾンビ』・・・ありゃ、これはひどいのう。この種の魔物は魔方陣で召喚されるタイプのものじゃが、召喚する連中が未熟だったり、魔力が不足しておると、こうしてゾンビとして不完全な状態で召喚されるのじゃ。で、この魔方陣じゃが、両方に該当するの。ここまでひどいものは珍しいのう。不完全状態じゃから、精々手に入るのが魔石くらいじゃのう。他の素材は毒にすらならんぞい。このドラゴンの名誉のためにもお主の手で仕留めてやってくれんかの。


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 マジか、、、。こいつを召喚してスタンピードを起こそうとした、いや、実際起きたのか。しかし、こんな状態で呼ばれてしまってはかわいそうだな。アマさんも言っていた通り、しっかりと仕留めましょうかね。



「さて、みなさん。これはドラゴンゾンビですが、魔方陣が未熟且つ魔力不足で本来なら普通のドラゴンとして召喚されるはずがこうなってしまったかわいそうな存在だそうです。武士の情けというわけではありませんが、ひと思いに仕留めてあげたいと思います。そこで、まず私がこのドラゴンを水術で完全に凍らせますので、その後、マーブル隊員はこの魔方陣を破壊してください。そのあと私が凍らせたドラゴンを粉砕しますので、その後マーブル隊員はこの魔方陣の範囲を火と風魔法で浄化してください。ジェミニ隊員はこの辺りに潜んでいるだろう連中の始末をお願いします。彼らは元凶の一味ですから遠慮はいりません。」



「ミャッ!」



「了解したです!」



 指示を出した後、ドラゴンをしっかりと細胞レベルで凍らせる。凍ったのを確認した後、マーブルが魔方陣を破壊したのを確認して、飛び散らないように先にマーブルに風魔法で囲んでもらってから、凍ったドラゴンを爆破する。爆破を確認したらマーブルが火魔法で完全に召喚されたドラゴンの存在を消し去った。



 ジェミニも任務を完了したらしく、こちらに戻ってきた。



「アイスさんの言ったとおり、ここを監視している連中がいたので、全て仕留めたです!」



「ありがとう、ご苦労様。マーブルもありがとうね。最後は少々後味の悪い感じになったけど、とりあえずフロスト領への脅威は無くなった。ということで、これにて任務完了です。フロストの町、いや、我が家に帰るとしましょう!!」



「ミャー!!」



「はいです!!」



「おうちにかえろー!!」



 これで最悪の状態で呼ばれたドラゴンも少しは浮かばれたかな。とりあえずあの3家にはいろんな意味でお礼をたっぷりとしないとね。その前に戦利品を持ち帰ってみんなで喜びを分かち合うとしましょうか。

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