第39話 さてと、次は第二陣ですか。

 とりあえず第一陣は撃破した。ゴブリン達の回収も完了、念のため魔物探知をしてみたが反応がなかったので、一旦フロストへと戻った。ウルヴ達は既に戻ってきていた。野ウサギ族の一部のご機嫌が宜しくないので聞いてみた。



「さっきの戦闘で何か問題とかあった?」



「あ、主、聞いてくださいよ。ゴブリンが400体しかいなかったので、我らの出番が全く無かったのですよ!! 折角気合入れたのに!!」



「な、なるほど。ただ、まだまだ魔物は来るし、これから強くなってくるので、君達の出番はしっかりとあるから安心して欲しい。」



「主の言葉を信じますからね!」



「うん、あとは野ウサギ族で話し合って出番をもらうのもいいかもね。」



「そうします。ところで、魔物達はまだ来ないのですか?」



「そうだね。早々に殲滅しちゃったし、予定だと、もう少し時間がかかるかな。あ、それと、ここで待機しているみんなが飲み物とか用意してくれているからもらってきたらどうかな?」



「そうですね。飲み物をもらって落ち着きます。次こそはガンガン倒すぞー!!」



 そう言って飲み物を用意している領民の所へ向かった。それにしても流石はヴォーパルバニーだな。こっちよりも早く倒してしまうとは。あ、ウルヴがいた、話を聞いてみることにしようか。



「とりあえずウルヴ、お疲れ様。ゴブリン達もそうだけど、野ウサギ族はどうだった?」



「先に結論から言いますと、我ら、いらなくね? というのが感想ですね。あれ、強すぎでしょ? いやね、一応先陣は切らせてもらいましたよ、ゴブリン程度ですから、私も木騎馬で突撃して敵を2つに割ったりしてゴブリン達を怯ませたのは事実ですけどね、その後に続いたウサギ達が通過するたびにゴブリンが死体となっていたんですよ。しかも、全員で突撃ではなくて、早いモン勝ちみたいな感じでゴブリン達を倒していくんですよ。ラヒラスも見事にあの魔導具でゴブリン達を倒しておりましたが、野ウサギ族はそんなもんじゃなかったです。ジェミニ殿がいるとはいえ、よくもまあ、あんな化け物連中を領民に加えられましたね。」



「まあ、彼らは領内でのペットとして希望しているから。こちらが誠実に対応している限りは向こうはペットとして生活しているから。まあ、ジェミニが私を親として頼ってくれてる、というのも大きいかな。それで野ウサギ族が私をここまで信頼してくれているんだと思う。」



「先程の戦いで悟りましたけど、正直勝てる気がしません。もちろんこれからもです。本当に彼らが同じ領民でよかったですよ。」



 私とウルヴが話していると、ラヒラスがこちらに気付いたのか、やってきた。



「ラヒラス、お疲れさん。先程の戦いはどうだった?」



「ウルヴからも聞いていると思うけど、野ウサギ族強すぎるよ。敵で無くてよかったとつくづく思ったよ。野ウサギ族では、ジェミニちゃんが一番強いと思うけど、他が弱いかといえばそんなことなかったしね。それはそうと、まさかこんなに早く第一陣を殲滅できるとは思わなかった。相手の陣容を見て、ウルヴが突撃してゴブリン達を2つに分けたのも大きかったね。」



「なるほど、ウルヴの指揮もよかった、ということでいいのかな?」



「うん、お世辞抜きにそう思ったよ。あれがなければ、いくら野ウサギ族が強いといっても、あんなに早くは殲滅できないと思う。」



 そんなことを話していると、レオが嬉しそうにこちらに駆けてきた。



「主よ、ウルヴ殿の指揮は見事だったぞ! ウルヴ殿が敵陣を真っ二つにしてくれたおかげでワシらも楽ができたのだ。そう伝えてくれよ!!」



「わかった、伝えるよ。それはそうと、次の第二陣では野ウサギ族の編成を変えてあげられないかな? 戦えなかったと文句を言ってきた子もいたからね。」



「ありゃ、久しぶりに暴れたから失念してしまったな。わかった、後で話し合って決めるよ。」



「それだったら、さっきの戦いでゴブリンをたくさん倒したウサギ達は、次では斥候をお願いできないかな。第二陣がどこまで進んできているか確認しておきたい。」



「わかった、一陣でゴブリンを倒した連中を斥候に出そう。」



「あ、『もちろん、倒してしまっても構わないんだよな?』という台詞は無しで。」



「な、何だと? そこまで読まれていたのか、、、。」



「いや、半分冗談だったけど、本気でしそうだったからね。斥候部隊は倒すのは無しで頼むよ。」



「仕方がないのう、主もそう言っているし、念を押しておこう。」



 そう言ってレオはここから去って行った。



「アイス様、何て言ってたの?」



 ラヒラス達が会話の内容を気にしていたので、話した内容を伝えた。



「何でわかるんだよ、、、。」



「アイス様、人間ですか?」



「失礼な、普通に人間だぞ、私は。知能の高い魔物限定だけど、わかるよ。ただ、野ウサギ族と会話はできるけど、一角ウサギとかは無理だからね。」



「そうなんだ、十分おかしいと思うけど。それにしても、レオ達もウルヴの行動を褒めていたみたいだね。彼らに認められるということは、指揮官としても一流であるか、その素質があるか、だよね。」



「そうだね、ということでウルヴ、このまま部隊の指揮を練習する意味でも、この調子で頼むよ。」



「有り難きお言葉。これからも精進します。」



「さてと、第二陣はいつ来るんだろうね。」



「野ウサギ族にはこれからも斥候を頼もうか、半数ずつに分けてさ。これからはフロスト領でもそういう担当が欲しいけど、今回については野ウサギ族に任せた方がいいと思う。」



「そうだな、あとでレオに伝えておこう。ところで、アインはどうした?」



「アインとは一応合流したけど、何かトリニトで用事ができたから後で来るとか言ってたけど。」



「そうか。戻ってきてから聞くとしようか。」



 しばらく休んでいると、野ウサギ族の1体がこちらにやってきた。



「主、ようやく大群が来ましたよ。今回はオークの大群ですよ! それぞれ150ずつ位ですね。」



「報告ありがとう、済まないけど、レオをここに呼んでくれないかな?」



「わかりました!」



 そう言って野ウサギ族の1体は去り、すぐにレオが来た。



「主、呼んだか?」



「うん、これから作戦を伝えるから。その前に、ラヒラス、魔物達はトリニトを攻撃しそう?」



「いや、魔物達はトリニトへ行かないように工夫したから、もうここから迎撃するだけで大丈夫。」



「そうか、助かるよ。では、改めて。まあ、作戦というか、こちらから迎撃して殲滅するだけで、あまり作戦という作戦でもないんだけど、これからはウルヴとラヒラス、それに野ウサギ族で一方を倒して。もう一方は私達で倒すから。」



「討伐担当の領民はどうするの?」



「第2陣でオークでしょ? 流石に今の段階では無理だから、私とマーブルとジェミニで迎え撃つ予定。ライムはその後で大仕事が控えているから、私達と一緒にはいるけど温存で。あ、野ウサギ族は半分ずつ交代で戦闘と斥候をやってほしい。こっちは大丈夫だから、そっちに専念してくれればいいよ。細かい作戦はそちらで話し合って決めてくれればいいから。あ、倒したら袋に入れるのを忘れないようにね。」



「わかった。それでいこう。」



 私達は2手に別れて、それぞれの迎撃地点に向かう。先程の迎撃地点に到着した。確認のために気配探知を行うと、約500メートル先にオークの気配を探知した。オーク達は森の出口付近にいるので、まだ姿は見えなかったがちょっと危なかった。



「さて、オークの集団がこちらに向かって来ております。野ウサギ族の報告では150位でしたが、それはあくまで向こうの数です。こちらの探知だと100位ですかね。残念ながら上位種はほとんどいませんね。集団の最上位がオークリーダーっぽいかな。とはいえ、オークといえば、豚肉です。しっかり倒して後で美味しく頂きましょう! 特に美味しくなるかどうかはライムにかかっています。そのためライムは体力の温存です。血抜きに関しては余裕があれば、ということで、とりあえず出来るだけキレイに倒してください。といっても、一番心配なのは私ですがね。」



「ミャッ!」



「頑張って美味しいお肉をたくさん手に入れるです!!」



「あるじも、みんなもがんばってー!!」



 3人のやる気も十分だ。後は待つばかりだ。



 オーク達の先頭集団が森から出てきた。すぐに私達の姿を確認すると、速度を上げてきた。私もアルスリを用意して準備をしながら指示を出す。



「ジェミニ隊員はオーク達の後方に回り込んでから攻撃を仕掛けてください。」



「了解です! オーク達は全部倒すです!」



「マーブル隊員は私の補助も兼ねて、正面から蹴散らしてください。」



「ミャア!」



 それぞれ敬礼で答えてくれる。いつもながら可愛いな。と、いつまでもホッコリとしているわけにもいかないので気持ちを切り替える。作戦を伝えている途中であろうと何であろうと、オークの集団はこちらをめがけて攻め寄せてきているので距離はどんどん縮まっていく。よし、アルスリの射程圏内に入った。それを確認したジェミニは凄いスピードで後ろに回り込んでいる。



「では、作戦開始!!」



 今回も氷の塊の大放出だ。とはいえ相手はオークなので頭部を狙って塊を発射していく。今回は一撃必殺を期してドリルを多用している。



 現在の職業はポーターなので、レベルは上がりやすいみたいで、それに比例するかのようにスキルの上がりもいい。その分使えるスキル数はもの凄く少ないですがね。とはいえ、水術が便利+万能すぎて他のスキルがあっても正直使い切れないだろう。



 一体一体丁寧に狙って仕留めていくと、威力や効率が上がっているのが実感でした。最初は全力で投げてようやく、といった感じで流石はオーク、タフだな、と思いながら、それでも一撃で倒せたのだからと、練習を兼ねて氷のドリルを頭部めがけてひたすら投げつけていた。



 結構集中していたせいか、気がついたらオーク達がいなくなっていた。1体も残さず回収できたので、後続の状況を確認しようと気配探知を行ったが、反応はなさそうだ。念のためマーブルにも頼んだが、向こうも気配無しという返事が来た(ジェミニの通訳後)ので、それまでは暇だ、ということで3人に解体と洗浄を頼むと、3人とも嬉しそうに引き受けてくれた。



 私が空間収納からオークを取り出しつつ、水術で血抜きをし、ジェミニが各部位毎にキレイに解体し、解体が終わった部位はライムがキレイにする。ライムがキレイにしたものから、空間収納へと放り込んで、別のオークを出して、、、という感じで上手くローテーションが組めていたので、かなり効率がよかった。では、マーブルは何をしていたかというと、魔物の探知をお願いしてある。マーブルの探知できる範囲はわかっている時点で少なくとも1キロ以上だ。



 こうしてマーブル達と一緒に作業をしているのは楽しい。ただ、今後、マーブル達だけと水入らずで何かできる機会は減ってくると思う。言うまでもなく領主としての仕事が山積みだからだ。



 というわけで、今のこの時を大事にしながら楽しんでいこうと思う。頼むから第三陣は時間をかけてゆっくり来て欲しいと切に願う。

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