第68話 滅茶苦茶にしてやる。

 あははっ、馬鹿なやつ。私の言葉に翻弄されてる。全部嘘なのに。


 私の目の前にいる男の子は慌てている。


 私の事を足楽あしがく彩子さいことフルネームで呼びやがって。許さないよ徳川和希。


 私の名前はクソ父がつけた。初恋の人の名前だとか。もっとよく考えろよ。『あしがくさい子』になっただろうが!


 それと高校生なのに婚約? 馬鹿じゃないの? 頭お花畑なの? キャハハうける。


 学校中の点在する有象無象の中で『テル君が雲雀さんをかけて雲雀さんのフィアンセと勝負するみたいよ』と呟いた。ザワザワしだして信じていた。そしてあっと言う間に噂になり広まった。


 所詮人間なんて馬鹿ばっかり。一人になったから動き易かった。きゃは。たのしーい。


 雲雀はクソ。あんな奴の何処がいいの? 目の前にいる和希もそうだけど、みんな阿呆。


 雲雀は腹黒くろくろ真っ黒女。可愛い容姿と普段の性格の良さに騙されているって何故気づかないの?


 たまに見せる悪魔のような顔と言葉遣いの悪さ。アレが本来の姿って何故理解しようとしない? みんな雲雀菌に汚染されてるよ。


 和希もダメ。壊れている。雲雀菌に侵されている。好きならなんでもよく見える。キャハハ。ばかばかばか。


 でもね。それでも幸せになろうとしている二人は気に食わない。壊してやる。滅茶苦茶にしてやる。


 私は雲雀が大嫌い。嫌いな理由なんて必要ない。嫌いだから嫌い。


 和希も嫌い。テルも嫌い。みんな嫌い。嫌い嫌い嫌い。


 ふふふ。みんな一緒に滅びの道に行きましょう。


 和希。私の靴下を口に入れてあげる。不本意だけど足楽彩子の名は伊達じゃないんだから。味わいなさい。

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