第54話 私は和希の運命の人じゃないよ。
私と和希は電車に乗り込んだ。走らなくても充分間に合っていた。電車には数人乗っている。並んで長椅子の端に座った。
私の方から隣に座っている和希と手を繋いだ。もちろん恋人繋ぎだよ。
和希は私を見てコソッと『雲雀さん、いいんですか? 同じ位の歳の人がこっち見てますよ』と教えてくれた。
和希が言った人を私は知っている。私の通う学校の現生徒会長で二年生の男の子。ちなみに私は前生徒会長。
夏休み明けの九月に入れ替え選挙があった。任期は一年。
現生徒会長は私が生徒会長の時の書記。
私は和希に『気にしなくていいよ〜』と言った。生徒会長はその場を離れ私と和希と距離を取った。
◇◆◇
ガタンゴトンと音を立て少し揺れながら電車は動いている。夏休み最後と同じで和希と乗っている。でもあの時と違い今は恋人。
あの時も幸せな気持ちはあった。でも今はそれ以上に幸せを感じている。
顔が緩んでいるのが分かる。ゆるゆるだ。
和希と私の人生は交わらないと思っていた。平行線で別々の道を進んでいくと思っていた。
だけど今は同じ時間、同じ世界、同じ道を進もうとしている。夢みたいだよ。
『好き』って無責任に言える。だって私と和希は恋人。でもこの関係は永遠には続かない。私は和希の運命の人じゃないから。
だけど私はその運命にあらがう。負けない。負けるつもりはない。
何をどうすればいいのかなんて分からない。言える事は和希の事を世界で一番愛してる。愛している気持ちは誰にも負けない。
ふふ。私をこんな気持ちにさせるなんて、和希は罪な男の子だよ。
和希は私の事を世界で一番愛してる? 運命の人じゃないけど……ずっと愛してくれる?
愛してくれるように私頑張るからね。だからそばにいてね。私がおばあちゃんになってもずっとそばにいてね。
和希は私の光。どん底にいた私を救ってくれた。和希は頑張っていた。その姿に励まされていた。
私にも運命の人はいると思う。だけど私は和希がいい。和希以外は考えられない。
もし私の運命の人が現れたら和希はあらがってくれるかな? あらがってほしいな。
……はぁ〜。私ってダメだな。先のことをすぐ考えちゃう。今は今の幸せを楽しまなくちゃね。
「雲雀さん、もうすぐ駅に着きますよ」
「そうだね。なになに、もしかして緊張してる?」
「当たり前ですよ。緊張しない方がおかしいですよ」
ふふ。かわいいなぁ。大丈夫だよ。お父さんもお母さんも和希なら結婚してもいいって言ってくれてるからね。
でもそれは教えない。和希は『私を守れる男の子になる』って言ってくれた。
だから二人の仲を守ってもらおーっと。最初の試練だよ。頑張ってね。
駅に電車が到着。二人で降り改札口を通り外に出た。私は和希と手を繋いだ。
「あの、雲雀さん。地元ですよね? 手を繋いでいいんですか?」
「いいよ。気にしない気にしない。行こっ」
和希は気を遣ってくれてるのかな? それとも恥ずかしいのかな? う〜、かわいい。益々好きになっちゃうよぉ。
駅から私の家は歩いて行ける距離。恋人繋ぎで家まで歩いて帰った。
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