第20話 浴衣姿の雲雀さん。
八月下旬。今日も快晴。もうすぐ夏休みが終わる。
ダイエットが完了して即、家に帰ろうと思っていたけど
確かに。と思い帰る時間を延ばしている。
痩せた以降も運動はしてる。通常の三倍に増やして。それでも余裕で消化してしまう。
そして今、
今夜はじいちゃんの家の近くの神社で夜七時から夏祭りがある。金魚すくいなどの屋台も多数でているらしい。
「お待たせ〜」
じいちゃんから誕生日プレゼントで貰った浴衣を着た雲雀さん登場。手には巾着袋。腕には俺がプレゼントした腕時計。薄く化粧もしている。
か、かわいい。美し過ぎる。
「どうかな。変じゃない?」
雲雀さんはゆっくりその場で回った。
いつもは美しい長い黒髪を下ろしているけど、今は後ろでまとめておだんごヘアーにしていた。
「え、えっと、に、似合っています」
俺の言葉を聞いて頬を膨らませる雲雀さん。怒ってる?
「もう、『可愛いよ、
……はい? え、えぇぇぇ! な、何言ってるの⁉︎ 浴衣姿の雲雀さんは絶世の美少女ですけど、いや、普段着の時もだけど、そんなの恥ずかしすぎて言えるわけないでしょ!
しかもイケボって。なんで⁉︎ どうして⁉︎ さらに敬称もなしっ⁉︎ はぁ⁉︎
『はやく、はやく』と雲雀さんが催促している。ぐぬぬ。みんなが見ている。言わないとダメな空気になっている。
推しのVチュー◯ーがイケボやっていたのを真似して部屋で一人こっそりやった事はあるけど……。
「わ、分かりました。では、いきます」
「わくわく」
雲雀さんの目が輝いている。
う、ゔゔん。喉を調整して——
「可愛いよ、
がはっ! 恥ずかし過ぎる。って、雲雀さん顔真っ赤になって黙った。秘書さんも! じいちゃん達は『お〜』て言って拍手している!
イヤァァァ! 逃げ出したいよぉぉぉぉ。
「ひ、雲雀さん、そろそろ行きましょうか」
「えっ、う、うん。えっと、行ってきます」
なぜ雲雀さんが照れているの? 言わせた本人がっ。
浴衣に合わせた履き物を玄関で履き、外に出た。まだ明るい。子連れやカップルなどそこそこの人数の人達が神社に向かっている。
「和希」
神社に向かっている人達を見ていたら、隣にいる雲雀さんに呼ばれた。
巾着袋片手に空いている方を俺に向ける。
「ん? どうしました?」
「手」
……手? 白くて美しい手が何? 雲雀さん顔が赤いよ?
視界に手を繋いだ浴衣カップルが通り過ぎた。
ま、まさか手を繋げって事ですか⁉︎ どどどど、どうしてっ。
待て待て待て。落ち着け。ここで『どうして手を繋ぐのですか?』なんて聞くのはダメだ。
よ、よし。ここは無言で——
雲雀さんの手を握った。心臓が爆発しそう。顔が熱い。きっと真っ赤っか。
「い、行きましょうか」
「うん……」
そして手を繋いでお祭りが開催されている神社に向かって歩き出した。
どうしたの雲雀さん。通り過ぎるカップル達にあてられた?
これは夏のスペシャルイベントの上位互換、ミラクルイベントじゃないか!
やっべーよ。周りで歩いている同じ歳くらいの男子達の嫉妬の視線が怖すぎるよ。
でも俺は手を離さないぞ。
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