第27話 精霊国の悩み

精霊国ジュピタンに到着した一行は世界樹の壮大さに驚愕し、ジュピタンの兵士にツッコまれたりしたが何事もなく入国できた。


しかしバルムス王が精霊国ジュピタンの王 《イリアス》に謁見を願うも断られてしまう。


「そこを何とか……頼む。この通りだ!」


「頭をあげてください。バルムス王。イリアス様は現在多忙を極め手が離せないのです。ですので…現在は謁見自体執り行っていないのです。」


「そこを何とか…」


バルムス王…こりゃ脳筋だわ。頼む。これしか言ってねぇ。もうちょっと別のアクションしてみろよ。僕は交渉などといった高度な技術は持っていないが子供ながらに責め立てる事は可能だろう。仕方がない。僕がやる。


「急に話に入って申し訳ありません。私、ライネルと申します。イリアス様が多忙を極める理由をお伺い出来ないでしょうか?もしもですが……私達が解決出来れば謁見は可能なのではないですか?」


「可能性は無くは無いと思いますが確実にお約束できるかどうか分かりません。私にはそんな権限は無いですから。」


「それでもいいのでお話して頂くことは可能ですか?」


「うーん……国に関する内部情報となるので本来は不味いのですが猫の手も借りたいのも確か……これは私の独り言として聞いてください。」


「はい。わかりました。」


「私たちの国ジュピタンは精霊が住まう自然豊かな国として有名なのはご存知と思います。しかしひと月前から……雨が一滴も振らなくなってしまったのです。今は何とか川の水を世界樹に注ぎ命を繋いでいますが……まもなく川も干上がり世界樹は枯れてしまうでしょう。イリアス様は世界樹を守るために精霊達に昼夜祈りを捧げ精霊王を召喚しようとしているのです。」


「ふむふむ……で…精霊王は呼べそうなのですか?」


「いえ……精霊達は話もでき、自我もありますがそれぞれ持って生まれた権能があるのです。精霊王に干渉を許された精霊がこの国にはおらず私達はお手上げ状態になってしまっているのが現状です……。」


それじゃあイリアスがどれだけ祈っても無駄じゃないか……でも無駄だからって国の宝をみすみすダメにする訳にはいかないよな……よし。《雨》か。僕なら出来るかもしれないな。


「わかりました。ではちょっと離れていてもらえますか?」


「え?は、はい。わかりました。これでいいですか?」


ライネルから凡そ10歩離れた位置へ兵士が移動した。


「はい。そこで大丈夫です。」


じゃやるか……いつも通りでも良いんだろうけど……厳かにやってみっか!


「天を統べる天神様よ…そのお力を我に授け給え……《豪雨》」


刹那…バケツの水をひっくり返したような大雨が精霊国ジュピタンを中心に降り注ぐ。ザーっと雨の音が響き渡ると世界樹はこの雨を待っていたかのように葉を広げる。


「な、な、なな、な…」


な。しか言ってないよ?まぁひと月ぶりの雨じゃ驚くよね。それも一瞬。ハハハ。我ながらぶっ壊れ性能の特技だわ。


ライネルが《豪雨》を辞めるまでのあいだ、ザーっと降る雨に精霊国の全員は足を止め天を仰いで喜んでいたのがとても印象的であった。


「僕、いい仕事するでしょ?」


──天気予報士として1歩歩き出した日でもあった。

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