第153話 ゴンゾーとリョウ

「だぁー!しまったー!ですー!」


「相手の前で気を抜くな。馬鹿者が。」


ゲンジロウの叱咤しったが飛ぶ。


「おいおい…カンジさんが子供扱いかよ…」

「ニルさん強いな…」


静かだった門下生達は、驚きの声を漏らしている。


「も、申し訳ございません!」


「次で最後だ。三本勝負である以上、既に負けは決まっている。しかし、このままではあまりにも情けない。最後の一本を許してくれるならば、少しくらいニルに食らいついて見せろ。」


ニルは最後の一本を受けるという意味で頷く。


「…はい…」


カンジは、自分が努力してきた時間を無駄にしない為にも、ニルに一矢いっしむくいてやると、気合いを入れる。


「最後お願いします!!」


「宜しくお願いします。」


最後の一本は二人とも深く礼をしてから始まった。


二度の不甲斐ふがい無い姿を見せたカンジは鼻息を荒くして、集中力を高めていく。


ニルも剣術を学びたくて来ているからか、その様子を手を出さずに見ている。


「行きます!」


カンジが気合いを入れる。


それに応じてニルがグッと膝を落として構える。


ダンッ!


カンジが鋭く、そして小さく竹刀を振り下ろす。

先程よりコンパクトな動きになっていて、隙が少ない。


バシッ!


竹刀同士が打ち合う乾いた音。


力では圧倒的に不利なニルは、たくみに小振りの竹刀に角度を付け、攻撃を滑らせる。


「あのニルって女…やるな。」


リョウの目から見ても、ニルの動きは素晴らしいものらしく、一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくを見逃すまいと目を凝らしている。


「はぁぁ!」


バシッバシッ!


縦、横、斜め、切り上げ、突き…次々とコンパクトな動きのまま、竹刀を繰り出し続けるカンジ。

その様はゴンゾーがダンジョンの最後、ダークデーモンとの戦闘で見せた猛攻をスケールダウンさせたものに見える。


ゲンジロウから酒席で聞いた話では、ここの剣術は、所謂いわゆる剛剣ごうけんと呼ばれる類のものらしい。

剣技にも剛という言葉が入っている事からもそれが伺える。

実際、ゲンジロウとの一戦で、俺自身が一撃の重さを感じている。


まだまだ荒削りで、ゲンジロウやゴンゾーの一撃に比べると軽く、突破力に欠けるものの、素質を感じさせる剣筋をしている。


「まだまだぁ!」


バシッ!バシバシッ!


しかし、ニルの目はすこぶる良い。


カンジの攻撃を全て滑らせ、いなし、避けていく。


「さすがニル殿でござるな…カンジも腕を上げたようでごさるが、実戦経験の差が出ているでござる。」


冷静に分析しているゴンゾー。


ニルの実戦は、常に自分より力の強い者が相手となる。全ての攻撃を真正面から受ける事が出来ない彼女は、どこをどうやって受け流せば、最小の力で攻撃を流せるか熟知しているのだ。


カンジが荒く強い剣であるならば、ニルは水のように柔らかく流れる剣。

カンジの実力が、その流れを断ち切れる程のものであればカンジが有利となるが、その実力が無ければ……


「はぁ……はぁ……」


遂にカンジの腕が止まる。


疲れるのが早い…と思うかもしれないが、そんな事は無い。


竹刀を振る時、最も体が疲れを受ける行動は、何度も竹刀を打ち込む事ではなく、した時なのだ。


例えば、サンドバッグに向かって殴り掛かる時を考えると、数度サンドバッグを殴り付けるより、当たると思って振った拳が空振りした時の方が疲れる。

ニルに打ち込んだ全ての攻撃は流されてしまった。つまり空振りだ。


「カンジ!気合いを見せろ!」


「はぁ…はぁ…押忍!!うおぉぉぉ!」


ゲンジロウの言葉に、歯を食い縛ってニルへと竹刀を振る。


バシッ!!

「っ?!」


疲れた事で、カンジの体から余分な力が抜けたからか、より鋭くなった竹刀を、初めてニルが流し損ねる。


「まだ…まだぁ!」


カンジは疲れた体にムチを打って前に出る。


「はぁぁ!」


バシッ!バシッ!

「っ!!」


ニルの顔が少し険しくなる。先程までとは一味違う剣に、対応がほんの少しだけ遅れている。

と、その時、ニルが僅かに体勢を崩す。


「取ったぁ!!」


その隙を見たカンジが、決めの一撃を繰り出す。


バシッ!

「ぐっ!」


カンジの決めの竹刀は空を切り、その胴にニルの竹刀が横向きに当たる。


良いところまではいったのだが…最後の最後で、ニルが見せた隙に食い付いてしまった。


モロに入った胴打ちに、カンジが片膝を床に落とす。


「も、申し訳ございません!大丈夫ですか?!」


とはいえ、ニルも加減を間違えるくらいには追い詰めていたようだ。

強く打ち過ぎたとニルが直ぐに駆け寄り、手を差し伸べるが…


「カンジ!!」


「っ?!」


ゴンゾーの大声が道場内にビリビリと響き渡る。

その怒声に近い声に、カンジがビクリと肩を跳ねさせ、顔だけを上げる。


ゴンゾーが声を張り上げたが、そこにはゴンゾーとリョウの二人が立っていた。


「ここの門下生であるなら!情けない姿を晒すなでござる!!」


「その手を取ったら、俺がお前をボコボコにするぞ。」


厳しい…厳し過ぎる一言に感じるが…


「押忍!!」


カンジは唇が切れる程に歯を食いしばり、その場に立ち上がる。


勝者に手を差し伸べられて立つ…それは負ける事よりも更に屈辱くつじょく的な事だと、ゴンゾーも、リョウも知っているのだろう。

それこそ、消えない後悔として残る程に。


ニルとしては、単純に心配しただけで、そんなつもりは無かった。だが、俺の方を見た時、首を横に振ると、眉を八の字にしてその場で立ちすくんだ。


こういう武術の世界に触れるのは初めてだし、知らなくて当然の事だ。そんな叱られる前の子犬みたいな顔をしなくても良いぞ…ニルよ。


「……三本。勝者、ニル。」


パチパチパチッ!


「最後のは惜しかったなー!」

「俺でもあれは打ち込んだだろうなー…」

「二人共格好良かったです!」


門下生達はそれぞれに賞賛しょうさんの言葉を送る。


カンジはニルとの挨拶を終えるとドタドタとゴンゾーとリョウの前に走っていき、ガバッと頭を下げる。


「ゴンゾーさん!リョウさん!ありがとうございます!」


「…腕を上げたでござるな。」


「あ、ありがとうございます!」


敢えて先の事に触れないゴンゾー。しかし…


「あれくらいで膝を落としてどうする。今度俺が鍛えてやろう。」


「リョウさんがですかっ?!」


敢えて先の事に触れるリョウ。


鍛えると言われたカンジは、嬉しいような、嫌なような…どちらとも取り難い顔をしている。


「ご主人様…申し訳ございません…」


泣きそうな顔をしてとぼとぼと歩いてくるニル。手を差し伸べようとした事を言っているのだろう。


「そんなに気にするな。次から気を付けたら良い。」


「そうだぞ。膝を落としたカンジが悪い!ぐはははは!」


ゲンジロウはカンジに聞こえるように言った後、豪快に笑う。


「それより、剣術は見られたか?」


「……はい。ゴンゾー様の剣術と同じでしたが、やはり人によって違いが有ります。」


「それが個性だからな。どうだった?」


「私のスタイルとは違いますが…学ぶところは多々ありました。」


「そうか。得られるものがあったようで何よりだよ。」


門下生達がニルと話をしたそうにチラチラ見てきていたが、ゲンジロウが前に出て声を張る。


「次はゴンゾーとリョウ!始めるぞ!」


「「押忍!!」」


二人はゲンジロウの声に反応し、防具を着けた状態で中央へと出てくる。


門下生達はそれを見ると、一瞬で静まり返る。


「準備は大丈夫か?」


「いつでも大丈夫でござる。」


「こちらも大丈夫です。」


これ以上の言葉は不要だと、二人は竹刀を構える。


「よし。三本勝負。魔法は無し。良いな?」


「「押忍!」」


「それでは…」


ゲンジロウが合図を出す準備をする。


ゴンゾーもリョウも、真っ直ぐに相手の目を見て、竹刀を握る手に力を込める。


「……始め!!」


ダダンッ!


合図と同時に、ゴンゾーもリョウも、互いの中央へと向かって、一足で飛び込む。


「はぁぁぁ!」

「ぜぁぁぁ!」


ガンッ!!


二人の竹刀が正面でぶつかり合い、それでも勢いが止まらない二人は、互いの着ている面を勢い良くぶつけ合う。


カンジとニルの試合とは違い、互いが剛剣。しかも腕も良く、実力は同等。当然、こういう戦いになる。


「はぁぁぁ!!」

「ぜぁぁぁ!!」


ガシッ!バシッ!バシッ!


どちらも一歩も引かず、その場で竹刀を振り、激しく打ち合う。


バシッバシッバシッ!


竹刀同士がぶつかり合い、激しく音を出すが、有効打は取れない。


「はああぁ!」

「ぜああぁ!」


ガシッバシッ!


竹刀が割れるんじゃないかと思う程の剛剣。どちらも強い事が誰の目から見ても分かる。


「いけぇ!リョウさーん!」


「負けるなゴンゾーさーん!」


周囲からは試合同様に白熱する歓声。


「まだまだぁ!」


バシッバシッ!


「なんのぉ!」


バシッガシッ!


その歓声に負けない程の気迫と打ち合いの音。


見る限り、二人はほぼ互角。どちらが一本取ってもおかしくない。


バシンッ!


連撃が止まり、互いが一歩ずつ後ろへと下がる。


「行くでござる!」


「来い!!」


先に動いたのはゴンゾー。


剛上ごうじょう!!」


ガシッ!


ゴンゾーの斬り上げの剣技、剛上が放たれる。

当然同じ門下生であれば、その技は知っているし、竹刀の軌道の先に竹刀を起き、リョウが受け止める。

しかし、ゴンゾーの剛上は三年間のダンジョン生活で磨きに磨かれた技となっている。簡単には止められない。


「なっ?!」

バシンッ!!


受け止められというのに、そのまま無理矢理押し切るゴンゾー。

そのパワーに負けてしまったリョウの胴に、竹刀を押し退けて入る一撃。


「一本!ゴンゾー!」


「「「「おぉぉ……」」」」


ゲンジロウがすかさず一本の合図を出し、門下生達の間から感嘆の声が上がる。


「くそっ!馬鹿力は健在か!」


人目もはばからず悔しがるリョウ。


「三年間で磨いてきたでござるからな!」


「もう一本!!」


「良いだろう。」


ゲンジロウが、再度開始の合図を準備する。


「始め!!」


ダンッ!!


二人はまたしても中央で打ち合う形に入る。


「はぁぁぁ!」

「ぜぁぁぁ!」


バシッバシッガシッバシッ!


先程と同じ展開になるかと思いきや、今度はリョウがせる。


「ぜぁぁぁ!!剛連撃ごうれんげき!」


バシッバシッバシッ!

「ぐっ!ぐぬぬっ!」


リョウの持つ竹刀が流れるような三連撃を繰り出す。

最初は水平に、次は左下から右上に、最後は垂直に振り下ろす。

ゴンゾーはその三連撃自体は上手く防いだが、圧に負けて大きく腕が跳ね上がる。


「ぜぁぁぁ!」

バシンッ!


綺麗な胴抜きが決まる。


「一本!リョウ!」


「「「「おぉぉ……」」」」


こちらも綺麗な一本。門下生達からの声が耳に残る。


「ぐはははは!相変わらずお前達の試合は見ていて面白いなぁ!」


確かに、実力が拮抗きっこうしていて、見ているだけでかなり面白い。


「ゴンゾー。なかなかやるじゃないか。ダンジョン暮らしも無駄じゃなかったらしいな。」


「リョウこそ、三年間食って寝ていただけではなさそうでござるな。」


「言いやがる。次で決めて泣かせてやるよ。」


「それはこっちの台詞せりふでござる。」


「泣いても笑っても、次が最後だ。良いな?」


「「押忍!!」」


ゴンゾーとリョウは気合いを入れてから、竹刀を向け合う。


「それでは………始め!」


「はぁぁぁ!」

「ぜぁぁぁ!」


二人の気合いが混じり合う。


互いに今持つ力の確認は終わった。ここからはただただ真っ向勝負。


バシッ!ガシッ!


「はぁぁぁ!!」

「ぜぁぁぁ!!」


バシッバシバシッ!


激しく打ち合う二人。

門下生達も今日一番の熱気に包まれ、リョウとゴンゾーに対してのげきが飛び交う。


バシッ!ガシッバシッ!バシバシッ!


「ぜああぁぁ!!」


リョウが鋭い突きを放つ。


「ここでござる!」


その竹刀をぎこちないながら、受け流すゴンゾー。


恐らくニルの動きを少しだけ真似まねたのだろう。

剛剣において、受け流すという技術はあまり見られない。だからこそ、リョウにとってはきょをつかれた形となった。


ゴンゾーの思惑おもわくは見事に成功したと言えるだろう。


「くっ!」


何とかゴンゾーの攻撃を防ごうとするが…


「はぁぁぁ!」


バシンッ!!


綺麗に面打ちが決まり、いい音が鳴り響く。


「……………」


リョウは何が起きたか分からないような顔をした後、自分が負けた事を認識し、悔しそうな顔へと変わっていく。


「一本!ゴンゾー!」


「うおぉぉ!」

「なんだ今の?!何がどうなったんだ?!」


「勝者!ゴンゾー!」


ゲンジロウの声によって、勝者が決まる。


鬼士きしとしてのプライドが高い者ならば、ここで一悶着ひともんちゃくあるところだが…


「お互いに。礼。」


ゲンジロウの声で、二人は深く頭を下げ合う。


「次は負けないからな!」


「望むところでござる。」


二人は後腐れなく、それだけの会話で互いに離れていく。


確かに陰険なタイプではなく、正面切って嫌いだと言って、剣の腕で勝負する…という感じだ。好感が持てると言っていた理由がよくわかる。


「皆も、今回の試合で、二人の実力が確かなものだと分かったな。

これから先、ゴンゾーにはナガマの座を、バンナイの座をリョウが引き継ぐ事になるが、異論は無いな?」


ゲンジロウの言葉に、それぞれの門下生が頷く。


「よし。お前達も後に続けるよう、精進を続けるのだぞ。」


「「「「押忍!!!」」」」


こうしてゴンゾーとリョウは晴れて昇進を果たした。


その後、朝の練習を暫く見学した後、俺達は必要になりそうな物をいくつか貰って、ゲンジロウの屋敷を出る。


「ゴンゾー。しっかり頼んだぞ。」


「勿論でござる!」


ゲンジロウとレイカに見送られ、屋敷を出ると、漆黒石の確認より先に、今後俺達が泊まる場所へとゴンゾーが案内してくれる。


その宿はそれなりに大きくて、ラトの事を話したら、断るどころか是非にと言ってくれたらしい。

ゲンジロウの息のかかった者が宿主をしていて、ゲンジロウもあまり他言出来ないような内容の話をする時は、この場所を使うという事らしい。

なんか…偉い人っぽいな。いや、偉い人なんだけどさ。


「今日は、漆黒石の確認に行った後、宿に戻り、明日から調査に動こうと思っているでござるが…良かったでござるか?」


「全然構わないが…調べるとは言っても、どうやって調べたら良いんだ?

この島には知り合いも居なければどういう場所があるのかも分からないぞ。

それに、相手が相手だし、普通の調べ方では尻尾どころか影も掴めないだろう?」


「そこは安心して欲しいでござる。レイカさんから、色々と情報収集の為の伝手つてを聞いてきたでござる。

それだけで全て順調に進むとは思っていないでござるが、足掛かりにはなると思うでござるよ。」


「それは助かるな。ゴンゾーは常に同行出来るわけじゃないんだよな?」


「そうでござるな。さすがに常に一緒に居ては、物資の調達という言い訳も通用しないでござるからな。」


「そうか…分かった。何とかしてみるよ。」


「拙者は拙者で動いてみるでござる。何かあれば、師匠の所へ手紙でも送って欲しいでござる。

拙者も何か分かれば、宿に行くか手紙を出すでござる。」


「分かった。」


今日一日は漆黒石の事もあるから共に行動するが、明日からは別行動となる。流石にここには神聖騎士団の連中も来ていないだろうし、変装は必要無いだろう。


暫く大通りを歩き、南へと向かって歩くこと二十分程で目的の宿屋へと辿り着く。


見た目は、宿屋というだけあって、かなり大きな建物で、二階建。どれくらいの人数が収容出来るかは外から見ただけでは分からない。

家の木枠等は朱色に塗られていて、遠くから見てもかなり目立つ建物だ。


紫色の大きな暖簾のれんが店先に掛けてあり、その下を人が出入りしているのが見える。


「ここでござる。」


「想像よりずっと立派な宿屋だな…」


「ゲンジロウ師匠からしたら、大切な客人でござるからな。変な宿に泊めるわけにはいかないでござるよ。」


「これはこれは!」


宿屋の前で外観を眺めていると、中から深い緑色の羽織を着た恰幅かっぷくの良い男性がニコニコしながら現れる。

これぞ宿屋の店主!といった面持ちだ。


「シンヤ様、ニル様、そしてラト様でございますね!」


「よく分かったな?……ってラトが居るし分かるか。」


『僕目立つからねー。』


自分でも分かっていたらしい。


「ささ!どうぞどうぞ。」


店主が店の中へと手を向け、俺達を招き入れる。


中は朱色を基調とした派手な創りで、装飾品も豪華絢爛。一般の宿屋だけあって、客人も店員も多く、見える範囲に色々な人が行き来している。


にぎわってるな。」


「この辺りでは有名な宿屋でござるからな。」


「ありがとうございます。」


ニコニコの店主が頭を何度も下げる。人の良さそうな店主で良かった。ゲンジロウの知り合いと聞くと、どうしてもゴツいイメージを持ってしまう。


「師匠からの紹介でござる。ここで発生する代金は全て、師匠に請求して欲しいでござる。」


「へっ?!」


「はい。伺っております。」


「伺ってたの?!」


初耳だった。


普通に自分達で払って泊まると思っていたからかなり驚いた。

いやー…偉い人って凄いなー…


「こちらも、ラト様が泊まった宿となればはくが付きますし、お安くしておきます。」


あー…神の使い的な扱いだったっけ。それで是非泊まってくれと言っていたのか。


「この後用事があって、出るでござる。部屋だけ案内して欲しいでござる。」


「分かりました。では、こちらへ。ラト様はこの者の案内に。」


もう一人、店主の後ろに居る者が頭を下げる。ラトは外から裏手へと向かっていく。


俺達は店主に付いていく。店主が案内してくれた先は、他の客が進む方向とは真逆。客人は入って左へと進んでいくのに対し、俺達は右へと向かって行く。

左手とは違い、中が見えないように布で区切られていて、こちら側は入ってはいけないような雰囲気もあったし、従業員ばかり。てっきりバックヤード的な場所かと思っていたが、違ったらしい。

布を避けながら入ってみると、先程までとは打って変わって、黒を基調とした落ち着いた雰囲気のある造りで、小さな、壁掛けの提灯ちょうちんのような物が一定の間隔で設置されている。

高級感が凄い。

VIPルーム的なところに違いない。

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