第138話 第九十七階層

キィィーーーーン……


左耳に甲高かんだかい音が鳴り響き、聖魂魔法が発動する。


今回力を貸してくれたのは、ドリュアスという精霊だ。


普段は木の中に溶け込んでいて見ることは出来ないが、何度か姿を見せてくれた事がある。

その姿は小さな緑色の光で、形はよく分からない。

木と親和性の高い精霊で、木の無い所には絶対に住み着かないらしい。


そんなドリュアスの魔法は、芽吹めぶき


俺の立っている所から、ベヒモスに向けて、床面に小さな双葉の木の芽や、草花が大量に現れる。それらは次々と現れ、一瞬にしてベヒモスの周囲を埋め尽くしてしまう。

当然ベヒモスは何事かと床面に向かって腕を振り下ろす。


ズガガガガガッ!


表面が緑色になった石材が粉々に砕け散り、壁に飛んでいく。しかし、抉られた石材の表面から、また同じように植物達が次々と現れる。


「グォォ!」

ボウッ!


ベヒモスの口元が赤く光り、炎が漏れ出てくる。


「グォォォォ!」

ゴウッ!!


炎が吐き出され、床面に伸びてきていた緑が瞬時に灰となり燃え尽きていく。


パチパチと音を立てて燃えた植物を一瞥いちべつしたベヒモスが、俺に視線を向ける。


「グォォ……」


次はお前が相手かと足を踏み出そうとした時、やっと気が付いたらしい。


ベヒモスの足に、床から伸びてきていた植物達が絡み付き、動きを制限していることに。

燃やしたはずの床面にも、既に先程以上の植物達がひしめき合っている。


「グォォ!」


ブチブチブチブチ!


鬱陶うっとうしいと言いたげに、手足を動かして、絡み付いた緑を引きちぎるベヒモス。その強大な力であれば、木や草花が少し絡み付いた程度ならば簡単に束縛を解く事が出来るだろう。

しかし、また直ぐに床面から手足を這い上がってくる植物。どれだけ引きちぎろうが、燃やそうが、この魔法が発動した時点で、植物がこの部屋から消え去る事は絶対に無い。

植物の生成と、超速成長。これが芽吹という魔法の一つの特徴である。


しかし、今のところ、ベヒモスを拘束するだけの魔法に見える。しかし、この芽吹という魔法の本質は、束縛することでは無い。

束縛するだけならば、樹縛縫じゅばくほうという上級木魔法もある。

それに、束縛するだけでは倒す事は出来ない。


では、この魔法の本質はどこにあるのか……


「グォォォォォォォォ!!」


突然ベヒモスが、出会ってから初めて、苦痛の叫び声をあげる。


ラトが頑張って耐えてくれていた間に作られた、小さな傷。その傷の中に草花の根や茎が侵入しようとしているのだ。


「グォォ!」

ブチブチブチブチ!


ベヒモスが自分の体の表面を這う植物を引きちぎるが、どれだけ引きちぎっても、また直ぐに植物達が絡み付いてくる。


「グォォォォ!!」

ボウッ!


引きちぎるだけでは意味が無いと分かったのか、口から炎を吐くベヒモス。炎はベヒモスの体表を這っている植物達を全て燃やし尽くす。


「グォォォォォォ!」


しかし、またしてもベヒモスは苦痛の声をあげる。


先程植物達が侵入しようとしていた小さな傷口から、草花が生えてきている。一度侵入を許せば、燃やされても、体内に残った草花の一部から再生し、成長する。

グリーンマンの特性によく似ているが、あれは対象の魔力を利用する為の性質であり、それが本質。つまり、対象を殺す事を目的としていない。

しかし、この芽吹という魔法は、相手を殺傷するための魔法。根本が全く異なる魔法だ。


「グォォ…グォォォォォォォォ!」


炎を口に溜め込んで、放ったベヒモス。


ベヒモスが狙ったのは…俺だった。


実に賢い。


確かにこの芽吹という魔法から抜け出す為には、術者である俺を殺せば良い。それは普通の魔法でも、聖魂魔法でも変わらない。


だがしかし……


俺の周囲にあった植物達が一斉に集まり、壁となる。


ゴウッ!!

パチパチパチッ!


目の前で破裂した炎の塊が、壁となった植物達を燃やす。

音を立てて火の粉となった植物の一部が周囲に雪のように降り注ぐ。

だが、その炎が俺を捉える事は無かった。


既にベヒモスの手足を大量の植物が絡め取り、あの強大な力を抑え込み始めている。

ちりも積もれば山となる。


植物一つ一つの力などベヒモスにとっては取るに足らない小さな力だ。

しかし、それが数千、数万という数になったらどうだろうか。増え続ける植物の力が集まる事で、ベヒモスの力をいつか必ず上回る時が来る。


絶対的な力を持つベヒモスを、単体では最弱とも言える植物が抑え込むのだ。


「グォォォォ!」

ゴウッ!


何度も何度も、ベヒモスは植物達を燃やすが、灰にされる度、それまで以上のスピードで成長する植物に、ベヒモスが打てる手はもう残されていない。


そして、ラトの攻撃でいくつも付けられた傷口から侵入した植物は、ベヒモスの体内を移動し、全身に行き渡る。


皮下ひかから筋肉の間へ、そして血管の中から体の隅々へ…そうして行き渡った植物達は、完全にベヒモスの動きを抑制してしまう。


「グォォォォ……」


ピクリとも動けなくなったベヒモスが、最後の唸り声をあげる。


その直後、植物達が、この魔法の最後を飾る。


内側も、外側も、全身に行き渡った植物達の中からヒョロヒョロっとした茎と、その先端に鈴生すずなりに真っ白で小さな花が芽吹く。


見た目は白いラベンダー…とでも言えば分かりやすいだろうか。


ベヒモスの鈍い眼光が光る顔だけが、その白い花々の奥に見えている。


全身を覆った植物より頭二つ分長く成長した白いラベンダー達。その花が全て綺麗に満開になると、心臓に近い位置の花から、サーッと一瞬にして色が変わっていく。白色から赤黒い色へと。


ベヒモスの体内に有る血液。そのほとんどを吸い上げたのだ。


いくら強大なモンスターとはいえ、血液を抜かれてしまえば、命を繋ぐ事は出来ない。

赤黒い色へと変わった花々の奥に見える瞳から、光が消えていく。


「この匂い…」


ニルがつぶやいたのは全ての花が赤黒く染まった数秒後の事だった。


微かに漂ってきたのは、まるで林檎りんごのような甘酸っぱい香り。


「良い香りでござるが…」


『さ、さすがの僕でもこれを食べようとは思わないよ…』


食事に貪欲どんよくなラトでも、香りよりも今見た光景の恐ろしさの方が勝ったらしい。


外の逃げられる場所であればいざ知らず、こんな密室で使われれば、ラトでも逃げ切るのは難しい魔法だろう。


『今のは木の人の魔法…だよね?』


ベルトニレイと繋がっているラトにはドリュアスの事が分かるらしい。


「そうだ。ドリュアスという精霊だ。」


『こ、怖いね…』


「いや。怖くないぞ。他の皆もそうだが、誰かを傷付ける事を一番嫌う連中なんだ。

それを俺が勝手にしているんだ。」


言い方は悪いかもしれないが、最終的にはそういう事だ。


聖魂達は許せる程度の悪戯いたずらはするが、他者を傷付ける事は絶対にしない。ベルトニレイだけは他の皆を守るという役目があるため、特別だが…


「ドリュアスさんは大人しくて、恥ずかしがり屋さんなんです。」


ニルが俺の話している内容を聞いてドリュアスの説明をしてくれる。


「ご主人様は、悪用と仰られましたが、力を貸そうと決めたのは聖魂達自身です。ご主人様の行いを、聖魂達はとしたのです。

あまりご自分をおとしめないで下さい。」


ニルが俺の一言に強く反発する。


無邪気な者達の力を、他者を傷付ける事を嫌う者達の力を使う事に抵抗があるのは事実だ。当然命の危険があれば手段を選ぶつもりは無いが、極力使いたくはない。

その考えをニルが読み取って叱咤しったしてくれたのだ。


「……ありがとう。ニル。」


「いえ。」


『シンヤが言っていたように、相手が凄く強くなってきたね。』


「残り四階層あるのに、この強さか…」


先に進むのがいよいよ怖くなってきた。


ズズズッ……


扉を開くと安全地帯。既に昼時は大きく過ぎている。


「長めに休憩を取ろう。体力も魔力もしっかり回復するんだ。」


少しでも危険な要素は排斥はいせきしたい。


もはや昼食とも呼べない昼食を摂り、仮眠。二時間の休憩の後、次の扉を開く。


ズズズッ……


第九十七階層。


部屋の構造は、一辺が約六十メートルの三角形。

開いた扉は、三角形の辺の部分の中心にあり、奥に続く扉は真っ直ぐ正面、三角形の頂点部にある。


「グゴゴゴゴ…」


喉の中にある玉を転がしているような独特な唸り声が聞こえてくる。


各頂点部に寝そべっている八メートルのイグアナのような生き物が発した唸り声だ。


全身が土色のモンスターで、刺々とげとげしい背鰭せびれと、斧のような形をした尻尾。

手足の先には鋭い爪があり、口からは上下に伸びる長い牙。瞳は黄色。


名は土龍どりゅう


ワイバーンとほぼ同格のモンスターで、こいつもドラゴンの一種だ。


翼の無いドラゴンは珍しく、ドラゴンの一種だと気が付かずに攻撃してしまうモンスターとしても有名だ。


このモンスターの特徴はとにかく硬い外皮がいひ。防御力特化のモンスターだ。魔法もほとんど効かない。


部屋の各頂点部に居ると言ったから分かるだろうが…そんなモンスターが三体……これは結構ヤバいかもしれない。


「土龍が三体でござるか…」


ゴンゾーもかなり警戒している。


見た目はケイブリザードに近いが、その強さは比較するのも烏滸おこがましい程。月とスッポンだ。


上級階層までは単独で一体を相手に撃破してきたが、Sランクのモンスター相手にそれをやれば、狩られるのは俺達の方になる。

聖魂魔法は二回まで。使えば二十四時間のクールタイムが待っている。

聖魂魔法に頼りたくなる気持ちはあるが、倒せる相手は聖魂魔法に頼らずに倒すべきだ。聖魂魔法は危機的な状況での切り札。早々に切り札を使い切る事は出来ない。


「全員で一体を仕留めるぞ!」


俺は右手に走り出す。


ここはまず一体を全力で叩く。数を減らしたい。


「ご主人様!目を!」


後ろからニルの声。


ビュッ!


土龍の目の前に飛んで行ったのは黄色い玉。閃光玉だ。


顔を背け、腕で目をかばうと、まぶたの向こう側から強い光を感じる。


「グゴゴゴゴ!」


入って直ぐに判断した為、奇襲きしゅうに近い攻撃になっているはずだ。


光が消えたところで目を開けて土龍を見ると、首を横に向けて叫んでいる。視界は奪えたようだ。


「はぁぁっ!」


真水刀を持ち上げて、土龍の首元に振り下ろす。


ガギンッ!!


「っ!!」


表皮が硬すぎて刃が通らない。手がしびれるような感覚が残るのみ。

浅いが傷は付けられたし、完全に無効化されるわけではなさそうだが、一度の斬撃では土龍にダメージは与えられないらしい。


「シンヤ殿!!」


後ろからゴンゾーの声。


俺は横に退いて、道を開ける。


「せいっ!!」


ガギンッ!!


ゴンゾーは俺の付けた傷の上から刀を振り下ろすが、それでもまだ表皮が突破できない。硬すぎる。


「グゴゴゴゴ!!」

バキィィン!


「っ?!」

ガギンッ!


視界が戻ったのか、土龍の尻尾がゴンゾーに向かって振り払われ、咄嗟に刀で受け止めたゴンゾーの体ごと吹き飛ばす。


攻撃に速さは無いが、パワーはある。ホーリーシールドは一撃で全て吹き飛んだ。


ドガッ!

「ぐっ!」


ほぼ水平に飛んで行ったゴンゾーが、地面に背中を打って短い声を出す。


怪我は無さそうだし、心配は要らないだろうが、たった一撃でゴンゾーを十メートルは吹き飛ばした。


バチバチッ!!


ラトがその後の土龍に走り込み、傷の入った首元に噛み付く…が。


ガギギギギギッ!


『か、硬い!』


ラトは無理だと判断して直ぐに土龍から離れる。


「やぁっ!!」


俺とゴンゾー、そしてラトが傷付けた位置に、素早くニルが駆け寄って、蒼花火を突き立てる。


ガキュッ!!


突き立てた蒼花火の刃先が蒼色に光り、僅かに土龍の表皮を貫き、血を流させる。


「グゴゴゴゴ!」


「っ!!」

バキィィン!


ガリガリッ!!


ニルが黒花の盾で土龍の尻尾を受け止め、嫌な音が響く。これだけ硬い相手ともなると、ニルの防護魔法は完全に意味を成していない。ホーリーシールドももはや飾りのようなものだ。


「うぅっ!」


斜め上空に打ち上げられたニル。直撃はまぬがれたが、衝撃は吸収しきれなかったらしく、痛そうな声を出している。


「ニル殿!!」


戻ってきていたゴンゾーが飛び上がり、ニルの体をキャッチする。


ドンッ!

「ぶへぇ!」


ゴンゾーを下敷きにして着地したニル。ゴンゾーは背中を強打して痛がっているが、ニルは軽いし、大した事は無いだろう。


「覚悟は良いだろうな…」


全員でギリギリこじ開けた傷口。この僅かな一点に向かって刀を相手から見て真っ直ぐ、刃を垂直に構え、右肘ひじを引いて左手を軽く添え、突きの構えを取る。


剣技、貫鉄尖かんてつせん


この剣技は突きを放つ剣技だが、突きといっても色々とある。


刃を下に向けるか上に向けるか、それとも水平に向けるか。細かく何度も突くか、一撃でズドンと突くか。片手で突くか両手で突くか…とにかく色々と突き技一つでも多種多様な技がある。

この貫鉄尖は、片手で放つ技だ。刃の向きは縦でも横でもあまり関係はない。この技で重要なのは体の使い方だ。

一撃で相手を仕留めるタイプの技で、外したりした時は隙が大きい分、貫通力は他の剣技の比では無い。


ダンッ!


後ろに引いていた右足で地面を蹴り、土龍までの数メートルを一瞬にして詰める。

土龍が俺の動きに意識を向けた時には、既に真水刀の刃先が傷口に触れていた。


バギャッ!!


小さな傷口。その一点に切っ先が触れると同時に右腕を全力で前に突き出し、足先からの力を、腕の先までなめらかに伝達する。この伝達が上手くいかないと、本来の貫通力が損なわれてしまう。

霹靂へきれき泡沫うたかた等の剣技が使えなければ、この滑らかな力の伝達は不可能と言える。


真水刀の切っ先は土龍の首元の表皮を突き破り、喉を横断し、反対側の表皮の手前で止まる。


「グ…ゴッ…」


首に刺さった真水刀のせいで首をこちらへ向ける事が出来ず、目だけで俺の事を見てくる。


ズブッ…


刀を抜くと、土龍は首から大量の血を出しながら、それでも俺の方を向き、尻尾を振る。


ズガンッ!


ワイバーンの時もそうだったが、ドラゴンという生き物はとてつもなく生命力が高い。首に穴が空いているのに、俺を殺すに足る程の一撃を放てるのだから…

しかし、それを受けてやる程俺も馬鹿ではない。


数歩下がって尻尾を避けると、尻尾は地面にのみ当たる。


首元からは変わらず大量の血が流れ続けていて、フラフラとして足元が覚束おぼつか無い様子だ。


「シンヤ殿!次が来るでござるよ!」


他の二体が俺達の居る方向へと走ってきている。一体相手でも苦労したのに、二体同時となると少し時間が掛かりそうだ。

直ぐに魔法陣を描き出し、二体の土龍に備える。


ドシャッ……


目の前で傷を受けた土龍が力を失って、やっと倒れる。まだ息はあるみたいだが、数分ももたないだろう。


「グゴゴゴゴ!」


同胞どうほうを殺されて怒り心頭しんとうなのか、残りの二体は目の前に魔法陣を描きながら走っている。


左の個体は火魔法、右の個体は土魔法を放つつもりらしい。


火魔法は獄炎球の、土魔法は荊棘けいきょくの魔法陣。


荊棘で床から棘を生成し、逃げ場を限定した所に獄炎球、それも避けられたら本体が攻撃…という流れだろう。


「そうはいくか!」


俺は備えていた魔法を発動させる。


上級闇魔法、闇沼やみぬま

名前の通りの魔法で、闇の沼を作り出す魔法だ。あらゆる物を底なし沼のように飲み込んでしまう魔法で、とても強力な魔法だ。しかし、難点もある。それは効果範囲と効果時間。


効果範囲は、直径約三メートルと狭く、効果時間は十秒。長いように感じるかもしれないが、他の範囲魔法は一度地形変化が起きるとそのまま残り続けるため、効果時間が決まっているだけで短いと言えるのだ。


そんな効果範囲の狭い闇沼を発動しても、上手く避けられてしまうため、少し前に設置する。


ズゾゾゾッ!


床面が一気に黒く染まりあがり、逆に土龍達の動きを制限させる。


ズガガガガガガッ!


地面から突き出した石の棘。既に全員バラけていて荊棘に当たる事は無かった。


ゴウッ!!


その直後、放出される獄炎球。


「拙者狙いでござるかぁ?!」


ゴンゾーは全力で回避行動を取っているが、少し間に合わない。


「援護します!」


ニルがゴンゾーと、飛んでくる獄炎球の間に、アクアプリズンを生成する。やりたい事は分かる。少しでも獄炎球の勢いと火力を削ぐつもりなのだ。

獄炎球は上級魔法であり、アクアプリズンは中級魔法。さすがに止める事は出来ない。


ジュゥゥゥ!


生成したアクアプリズンはほんの二秒程で蒸発して消えてしまうが、その僅か二秒の邪魔だけで、猶予ゆうよが生まれた。


ゴパンッ!


炎が弾け飛び、火の粉が周囲に舞う。


「助かったでござる!!」


ほんの僅かな差かもしれないが、その僅かな差が、ゴンゾーの命を救った。

そして、闇沼の配置によって、土龍達の足は止まり、追撃は免れた。一先ずの危機は去ったが、相手の強さが変わったわけではない。一体減った事で戦いやすくはなったが、それでも残り二体。


「右の一体を先に狙うぞ!」


「分かりました!」

「承知したでござる!」

『任せてー!』


左の土龍を足止めする何かを用意したいところではあるが、Sランクのドラゴン系モンスターを足止めしようとするとそれなりの強度がある魔法でなければならない。そんな魔法陣を描いている時間は無さそうだ。

二手に別れて対処する方が良さそうか…?


「一撃でダメならば何度でも打ち込んでやるでござる!」


ガギンッ!ガギンッ!


ゴンゾーは右手の土龍の首元に向かって何度も刀を振り下ろし、尻尾が来る前に逃げる…を二度繰り返したところで、左の土龍が魔法陣を描く。


『このっ!魔法なんて使わせないよ!』


ガリガリッ!


ラトが左の土龍の首元に噛み付き、魔法を封じようとするが…


『ダメ!避けて!』


そんなのお構い無しに魔法を無理矢理遂行すいこうする。


魔法陣が赤く光り、フレイムキャノンが放たれる。


「避けろー!」


ボボボボッ!


「ぐぅっ!」


放たれた炎球が俺の右の太腿ふとももかすめて飛んでいく。

上級火魔法ともなると、かなり高温で、掠っただけで耐え難い熱さを感じる。


動けなくなることはない程の傷だが、熱い…というか痛い。

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